小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) Memory38 『星が生まれゆく間に』 前回のあらすじ――チナさんのご家族に、とても温かい食事をごちそうになった。でもあの子にしてあのご両親あり。 優しく、とても温かい空間だった。チナさんがとても真っすぐなのも頷ける環境だった。 それに弟のユウマさん、でしたね。あの子もガンプラに興味があるらしく、わたくしに質問攻めでしたし。 とりあえず狙撃は楽しいという事だけ……それはそうと、食事中みなさんから聞いた話をネットで検索。 この近辺……臨海公園近くにあるクレープ屋さん。味も去る事ながら、ある逸話があるとか。 限定メニューであるミックスベリーを食べたカップルは……本来ならこんな事、イギリス貴族として一蹴すべきでしょう。 でも予想外の再会で、わたくしの胸は高鳴り続けていた。実際その、寝付く前に必ず……一人で頑張ったり。 は、はしたないのは分かっている。でもあの人の事を考えると、とても高ぶってしまって。 それで……心地よさに身を任せた後は、必ず寂しくなる。だって、自分で自分を慰めるなんて、惨めで。 あの人に……太陽のように温かい手で触れられたらと、淫らに考えてしまう。 ……ちょっとだけ、勇気を出してみよう。大会前だから、今だからと気合いを入れなおす。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 前回のあらすじ――シュテルが燃え上がりました。美奈子達へのガンプラ教授もちょくちょくやりつつ、もう夏休みだよ。 それで僕ももうすぐ二十二歳。でもシティーハンター的にはここから、永遠の二十歳と言うべきか。 そして今年は……今年の誕生日は、トラブルとかありませんように。JS事件とかマリアージュとか、毎回ひどい目に遭ったからなぁ。 そこも含めてみんなが戦々恐々としている中、ダーグを作業室に呼ぶ。シュテルの優勝で盛り上がった直後だし、まぁ……一応ね。 「やすっち、なんだよ。大事な話って」 「……ダーグ、ごめん。実はガンプラ塾とPPSE社絡みで、とても大事な事を黙ってた」 「……中身は」 「これ」 鍵を開き、中で眠っていた白金のガンプラを取り出し見せる。印象的なのは逆V字型のウイング。 武装は左腕のシールドと、【ロングビームダガー】……ようはビームサーベルの基部が二本。 右手で抱えるように保持する黒塗りのロングキャノンは、【ビームバスターライフル】。 更にバックパックは分離し、ビルドストライクやザクアメイジングのようなブースターとして戦闘可能。 その可動範囲や強度も人間のそれに極めて近く、標準的な装備に留められながらも高性能を発揮する。 ダーグは白銀の中に押し込められた情熱と完成度を察し、冷や汗を流し始める。 「やすっち、これは」 「……カテドラルガンダム、二代目メイジンの遺産だよ」 去年の十一月――パーツハンターと呼ばれる奴が起こした、ちょっとした事件がある。その中で僕が手にした、『メイジンの座』……それがこれだ。 魔法少女リリカルなのはVivid・Remix とある魔導師と彼女の鮮烈な日常 Memory38 『星が生まれゆく間に』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「二代目メイジンの、遺産だとぉ! それってぶっ倒れて、引退状態なおっさんだよな!」 「……去年の十一月、ソメヤ・ショウキってやつがガンプラ塾の元塾生を次々襲撃した。 バトルを挑んで、勝ったらそいつのガンプラを奪う。受けないようなら暴力を持って、力ずくで奪う。 完全な犯罪者だけど、ファイターとしての腕は超一流……下手をすれば、僕やタツヤより強い」 「ただ彼は、ガンプラへの愛が決定的に欠けていました。それゆえに人機一体を行う事ができず、結果お兄様に敗北した」 「相当ボコボコにされたから、猛省しておとなしく服役してるんだが……問題はその後だ。 ヤスフミと戦う直前、二代目メイジンと接触しててよ。その流れから事情聴取したら」 「恭文がソメヤ・ショウキを倒したと確認した上で、二代目メイジンはこれを渡してきたんだ。しかも……アイツは私達の事も見えていた」 まぁざっとした話だけど、ダーグは一応納得。未だ消えない、カテドラルガンダムの完成度に威圧されながらも。 「やすっち、まず……どうして黙ってた。知っている人間は」 こう聞くわけだよ。ただ責めているわけでもなんでもなくて、純粋に疑問らしい。 ただガンプラをもらっただけなら、『ごめん』と言うほどのレベルじゃないだろうしね。 「うちではティアナしか知らない。ソメヤ・ショウキとやり合う時、付き合ってくれて……その流れでね。 あと黙っていた理由は……ダーグ、タツヤはガンプラ塾トーナメントで、メイジン候補になったって話したよね。そこが問題なんだ」 「実は三代目メイジン候補、タツヤ以外にも相当数存在してるんだよ。 ただ塾とは関係なく、PPSE社が腕利きのビルドファイターに声をかけた上でな」 「じゃあガンプラ塾は」 「そのガンプラ塾が駄目だったから。……PPSE社はガンプラ塾を通し、二代目メイジンの『コピー』を作ろうとした。 でも僕が関わったエキシビションマッチなどで、その目論見は破綻。結果メイジン候補となったのは、二代目の思想とは相入れないタツヤだ」 「……だからPPSE社は、自分が飼い慣らせそうな奴らをスカウト。また別口でメイジン候補にしていたと」 「実際タツヤを倒そうと、何人かがこれまでバトルを挑んできてたから」 なのでタツヤが三代目になっているなら、そういう輩(やから)と改めてバトル、一蹴した上で……じゃないといけないわけで。 まぁそこは心配していないけど、予想以上にこんがらがったメイジンの後継者事情……それにダーグもうんざりという顔をする。 「じゃああれかよ、もしかしたら三代目として出てくる奴は、ユウキ・タツヤじゃない可能性も」 「実はある……けど、その辺りは大丈夫だよ。約束したもの」 世界大会でやり合おうってさ。アランも交えた約束だ、簡単に破られるとも思っていない。思っては、いないんだけど。 ≪そこで絡むのがこの子ですよ。カテドラル(cathedral)は大聖堂、同時に語源のカテドラが意味するのは『座』。つまり≫ 「メイジンの、座。しかも二代目は病気で引退確定……おいおい、やすっち!」 「あの時ね、どうしてカテドラルガンダムを僕にくれたのか、本当に理解できなかった」 そう答えつつ、状態が良好なのもしっかり確認。作業室のテーブルに載せると、ついニコニコしちゃう。 「やっぱ凄い完成度だよなぁ」 「今となれば、この輝きも分かります。メイジンは文字通り魂を削っていた」 「だからこそ、この作品をただ会社の犬になるような……そんな奴には、渡したくなかったんだろうな」 今なら、分かる。ヒカリが結論づけた通り、それがたまらなく嫌だったんじゃないかな。カテドラルにはそういう価値もあるから。 「これがメイジンの座であるなら、持つにふさわしいのは三代目。今で言うなら恭文、お前ではなくタツヤだ。 二代目メイジン最後の作品を受け継ぎ、華々しくデビュー……実に素晴らしい図式となる」 「だが二代目はそれをよしとしなかった。しかし病気の事があるなら、長く現場に立っていられないとは予測可能。 自分がいるうちならともかく、倒れた後に好き勝手される危険もあった。だから……と。 しかし、なんでユウキ・タツヤじゃないんだ。結局やすっちはトーナメントで負けたわけだし」 「そのタツヤもバトルを保留されていたからね。それなのに渡しちゃ意味がない……ってところかな。まぁ、本人に聞くのが一番だけど」 「とにかく事情は分かった」 「ごめん」 「別にいいさ」 もう一度謝ると、ダーグは軽く肩を叩いてくる。……問題なし、ですか。 「やすっち自身も、最近気づいたって感じなんだろ?」 「うん」 「だが世界大会……PPSE社がなにか仕掛けてくる可能性もあるな」 「譲渡された時の様子はアルトに録画してもらっているし、盗んだーなんて言われる心配はないよ。 ……ただ、こちらをちょろちょろ調べてはいるようなんだよね。忍者資格絡みで、知り合いのエージェントさんが連絡してきた」 「向こうも勘づいたってわけかぁ」 「多分、ソメヤ・ショウキとのバトルログだと思う。メイジン、そこで一度使っているっぽいんだ」 「接触したってところだな。……で、世界大会で使う予定は」 その言葉に苦笑。だってそれなら、使わない方が面倒もないだろうに……でも、ダーグの目はそんな事情も込みで輝いていた。 このガンプラが戦ったら、一体どんな事になるか。どんな凄いバトルになるのかって、ワクワクしている目だ。 もちろん面倒をあえて起こして、PPSE社の上層部を引きつけるという手もある。ダーグもそこは視野に入れている。 なのにそういう事も関係なく、楽しみって顔をするもんだからなんにも言えなくなってしまう。 ……左手でカテドラルガンダムを撫でると、そのボディと瞳が強く煌めいた。 それだけで込められた意思が、怨念に等しい強い願いが伝わってくる。 でもそれだけじゃない……その意味を探して数か月、未だに答えは見えないけど。 そろそろ、ちゃんと向き合っていくべきなのかも。カテドラルガンダムの存在は、僕のガンプラ作りにも影響を与えているわけで。 この完成度、この思いの詰め込み……これだけで敗北を認めるに余りある。でも同時に、これを超えるものが作りたい。 僕も真剣にガンプラと向かい合って、これを超える……楽しいガンプラが作りたい。 うん、これはやっぱり巨大な壁であり目標なんだ。だから今、使う事も視野に入れている。 「クロスボーンGRやAGE-1リペアII、『蒼い魔導師』もいるけど……でも」 「でも俺には、コイツが戦いたがっているように見えるぞ」 ≪もう仕舞われているのは嫌だーって、軽く恨んでいるようにも見えますね≫ ≪なのなの≫ 「やっぱりかぁ。……なら、一緒に暴れてみんなを驚かせちゃおうか。カテドラル」 お前はただ飾られるためだけに作られたんじゃない。自分が一番強いと、そう叫ぶために作られた。 だったら証明しよう。二代目メイジンはもう戦えないから、役者不足だろうけど僕が付き合う。 誰かに託すっていうのもあり得ないし……それで大丈夫かな、カテドラルガンダム。 迷いがない自分を再確認しつつ、決意する。ファイターとしても、ビルダーとしても、この子を使うに恥ずかしくない自分になろう。 時間はないけど、もっと鍛えなおしていかなきゃ。よし、やるぞー。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ここまでのあらすじ――セイも世界大会用ガンプラが完成しそうです。これでチナも多少は落ち着くでしょ。 ホッとするけど、止まっている暇はない。今週末には、響とリカルドの生バトルがあるし。 「……でもあなた、プロデューサーができるなんて。正直意外ですわ」 「実は僕が一番驚いてる。大した事はしてないんだけどねぇ、適当にやってるだけで」 「適度に当たっているのですね」 「それが本来の意味だったな、もぐもぐ」 「お姉様、今日はなにを食べてるんですか」 「クレープだ」 「これから食べようってのにかよ!」 以前、リカルドやレイジと一緒に話した、あの海沿いの通り……波音を聴きながらも、セシリアと歩きながら近況報告中。 セシリアもあれから大学へ入り、ガンプラを続けながら経済学やら経営学やらを学んでいるらしい。 セシリアの実家……オルコット家はそれなりに大きいからなぁ。お母さんやお父さんはまだ健在だけど、後を継ぐ準備ってわけだよ。 「でも勉強で忙しいだろうに、よくストフリをあれだけ作り込めたものだよ」 「当然ですわ、ガンプラ塾の青い涙ですもの。……そうそう、ユウキ・タツヤさんの件ですけど、今はPPSE社なのですよね」 「うん。世界大会……三代目メイジンとして登場予定だ。二代目は病気でそのままダウンって感じみたい」 「面会謝絶だしなぁ、オレ達も見舞いとか行けないんだよ」 「大会が終わるまでは無理でしょうね。……わたくしも、準備だけはしておきませんと」 そう言い切り、セシリアは足を止める。夏の爽やかな風にウェーブ髪をなびかせ、心地よさそうにほほ笑む。 こうして見ると立派な淑女。ガンプラなんて作っているとは思えないんだけど……でもセシリアの目は、確かに大会を見ていた。 「察するにチナにおせっかいを焼いたの、その件絡み? ツツかれたんでしょ」 「かなり。それで……ごめんなさい、ガンプラ塾トーナメントの事や、あなたが蒼い幽霊(ゴーストボーイ)だと言う事もバラしてしまいました」 「別にいいよ。チナはともかく、セイにはガンプラ塾やタツヤの事、ちらっと話してるしね」 そんな事を話しつつ、セシリアと一緒にまた歩き出す。軽く街を散策し、ウィンドウショッピングにも興じる。 そうこうしている間に夕方――荷物を脇に起き、ベンチに座って二人で夕焼けを見る。これは、思いっきりデートでは。 段々と嫌な予感がしながらも、スポーツドリンクで乾杯。暮れゆく夕日と地平線を眺めながら、ストロベリーのクレープをかじる。 なおセシリアはブルーベリーのクレープ。何度かここのクレープ屋では食べたけど、やっぱりいい味だ。 「……うん、このブルーベリーは当たりですわね。酸味が程よい感じです」 「こっちのストロベリーも最高だよ。まぁ」 「……だが、量が……しょうがないのだが」 「お姉様には辛いですか」 「お前、クレープって大食いするもんじゃないと思うぞ」 「ヒカリは寂しそうだけど」 「ダイエットになってちょうどいいのでは?」 全くだね。だから腹の音を聴かされても、僕は一切気にしない。セシリアも気にしない。 「でもセシリア、やっぱりおごってもらうのは……自分の分はちゃんと払うよ」 「いいんです。これも再会のお祝いですもの、おとなしく受け取ってください。……それで、恭文さん」 「うん」 「あなたにお子様や奥様がいるのも、存じています。ですがその、わたくしは」 え、どうしていきなりアイリ達とフェイトの話? 小首を傾げていると、セシリアは両腕で胸を寄せてもじもじ。 思いっきり谷間が見えるので、そっぽを向いてしまう。さすがに、見てしまうのはまずい。 「……って、どうして顔をそむけてますの!」 「いや、その……首の運動」 「意味が分かりませんわ! というか……見たいんでしたら、見て構いませんのよ?」 ぎょっとし、慌てて前を見る。するとセシリアはやや恥ずかしながら、前のめりになっていた。 そのために余計、胸の谷間が強調される。シルクのようなきめ細やかな肌、それが盛り上がり双乳として形作られている。 こ、これはもしかしなくてもー! というか僕、どうして気付かなかったのか! だってセシリアの瞳はずっと、僕を見ているんだから。 「わたくしは、あなたに……女として魅力を感じてもらえるのは、とても嬉しいですから」 「セシリア、あの」 「というか……あの方達みんな、お嫁さんなのですよね」 誰の事を言っているかすぐに分かり、思わずベンチからずり落ちる。 なんで……なんでセシリアにまで広まっているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 「違うよ! というかどうして!? どっからその情報が広まったの!」 「風のうわさですわ」 「怖すぎるんですけど、その風……!」 「と、とにかく次はミックスベリーがある時にきますわよ! それで一緒に食べてください!」 「ミックスベリー?」 ”……ヤスフミ” そこでショウタロスがちょいちょいとツツいてくる。しかもテレパシーって。 ”どうもあそこのクレープ屋、幻のミックスベリーってのを出してるらしい” ”あぁ、それがセシリアの言っていた……あれ?” クレープは翠屋でお手伝いしていた時、ちょくちょく作っていた。だからね、注文してからも軽く手際とか、調理器具なんかを確認してたんだよ。 つい目に入ったんだけど……まぁ幻だから当然だけど、ミックスベリーなら作るのは楽じゃ。 ”あとそれだけじゃない。ヒカリ情報だが、ここでミックスベリーを食べたカップルは幸せになれるそうだ” ”はぁ!? え、じゃあそれって” ”恋のおまじないですね。これはもう……お兄様、よかったですね。私を捨て置いて幸せになるといいでしょう” ”この状況で恨み節はやめてよ! でも……ミックスベリー” 幻、カップル……でも材料は『ここにある』わけで。……なのでもしかしたらと、一つ答えを出した。 ”ショウタロス、ありがと” ”おう。だがどうするんだよ、これ” ”まぁ、気持ちは嬉しいしね” ちょっと迷いもある。でも……セシリアがとても必死なので、僕も応えていこう。なのでまずは。 「セシリア、あーん」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 恭文さんがクレープを差し出し、あーん……それは当然食べかけで。でも恭文さんは気にした様子もなく笑顔。 「い、いきなりどうしましたの!」 「いいからいいから。あーん」 「あ……あーん?」 「そうそう」 ……左手でそっと髪をかき上げ、ストロベリークレープにかぶりつく。まず触れるのは柔らかくあっさりとした生地。 そこに包まれた生クリームの濃厚さとストロベリーの甘酸っぱさ……そのバランスが絶妙で、ついほっこりする。 でもそれだけじゃなくて、ドキドキも強くなっていく。だってこれは……間接キス、ですもの。 「じゃあ僕も、一口もらっちゃおうかな」 「あ……は、はい」 恭文さんもわたくしのブルーベリーにかぶりつき、とっても幸せそうにする。……わたくしの唇が、歯が、舌が触れた生地をかみ締める。 そうして幸せそうに笑うので、胸の高鳴りが最高潮。きっと今の熱さは、夏のせいじゃない。 「あの、これは一体どういう」 「あの店にミックスベリーはないよ」 そこで全てを見透かされたように言われて、ドキッとしてしまう。ま、まさかあの噂を……! 「十五歳くらいまで、知り合いの喫茶店でバイトをしていてさ。 クレープもよく作っていたから分かる。ミックスベリーのソース自体がなかった」 「そ、そうですの。まぁ限定メニューですし」 「それもないね。現に僕達、メニューなんてなくてもミックスベリーを食べられたもの」 それはどういう事かと聞きかけたところで、恭文さんはわたくし達のクレープを指差す。 ストロベリーと、ブルーベリーを。ストロベリーと、ブルーベリー……あぁ! 「ストロベリーと、ブルーベリー!」 「そういう事」 「なんですの、それー!」 つまりその、限定メニューなどは最初からなかった! ただ一緒に……一緒にクレープを、分け合って食べれば。 それくらい、仲睦まじくいられれば……そうして考えて、さっきの行動が更なる衝撃を呼ぶ。 つ、つまり恭文さんは本当に全部分かっていながら、説明前に実践して……それは、つまり。 「……ありがとう、ございます」 「ううん」 それ以上は、なにも言えなかった。話すべき事はたくさんあったはずなのに。伝えなくてはいけない事も、たくさんあったはずなのに。 でも……それはやっぱり、ちゃんとした場を経た上で。まずはわたくしの存在を、青い涙の強さを刻み込まなくては。 決意も込め、でも甘い感情をめいっぱい受け止めつつ、恭文さんとミックスベリーを堪能した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ シュテルが優勝してから二日後……カテドラルガンダムを使うタイミングについていろいろ考える。 出た途端向こうから接触してくるだろうし、更に言えば理由付けもできる。向こうの考えるところは、こんな感じかな。 僕がカテドラルガンダムを盗んだか……又は、元々カテドラルガンダムは次期メイジン用にPPSEが制作依頼したもの。 それをメイジンが『勝手に』譲渡したもので、こちらも困っている。だから返却してほしい……とか。 向こうが馬鹿なら前者、馬鹿じゃないなら後者ってコースだと思う。どっちにしても家には置いておけないね。 まさか盗むとは思わないけど、扱いには十分注意しておかないと。とにかくどう来てもかわす事は可能なので、問題は条件付け。 そこで工場見学とか……そういう話に持っていけば、いいけどなぁ。ただ問題が一つある。カテドラルガンダムは言った通り、メイジンの座。 これをPPSE社側が手にする事で、タツヤ達の立場が危なくなりかねない。思想的にも相反してるからねぇ、あの二人は。 そこもどうまとめるか……考えつつも、今日は765プロの方へ。夏休みって事で、アイドル事務所もそれなりに忙しい。 そしてみんな、夏休みの宿題に苦しむ……大学生メンバーもいるけど、それでも課題は消えないわけで。 一応八月までに終わらせるよう……とは言ったけど、課題によっては無理なものもあるからなぁ。 今苦しんでいるのは、そんな無理なものがちょっと多いメンバーなわけで。あずささんはその三人を、ちょっと懐かしそうに見守っていた。 「うぅー、難しいよー! 兄ちゃん、教えてー!」 「お助けをー!」 「だが断る。つーか中学生に答えを求めるな」 「「兄ちゃん、年齢的には大学生じゃん!」」 「う、うぅ……うぅ」 あぁ、やよいも困ってるなぁ。なんでも小論文をまとめている最中らしい。……うん、やよいも大学生だよ。 本当なら入るつもりはなかったらしいけどね。家の経済状態は相変わらずだし、その分働いてなんとかーって感じ。 ただ僕が行くように勧めた。ほら……フェイトやなのは、はやてがアレだからさ。やっぱり勉強は大事なのよ。 「それはそうと小鳥さん、さっきの話ですけど」 「あら、やよいちゃんも助けないのね」 「自分でやらなきゃ意味がありませんから。……本当ですか、リカルドへの密着取材、生すか内で決まったって」 「えぇ。だから響ちゃんと生すかスタッフ数名も、静岡に常駐よ。せっかくのチャンスですもの。 公式発表は次の生すか内、響ちゃんとのバトルが終わって、エンディングでーって感じね」 「まぁそうだよな。一年に一回……しかもリカルドが実力者とはいえ、必ず世界大会に出られるとは限らないしよぉ」 「来年、カルロス・カイザーのような番狂わせが起こるとも限りません。やはり一期一会ですか」 ショウタロスも納得し、シオンは楽しげに髪をかき上げる。そして。 「ふふふ……静岡と言えばお茶だとか、アニメが見にくいとか言う奴も多い。しかし、それは違う! 静岡は今やB級グルメの宝庫! 世界大会会場近くには大型ショッピングモールもあり、出店も多数! 制覇しなければなるまい!」 「胸が高鳴りますね、ヒカリ」 ヒカリは貴音と一緒に、暑苦しく燃え上がっていた。……貴音、世界大会にも行くつもりかい。スケジュールはどうするのさ。 「まずはB-1グランプリに置いて二〇〇六、二〇〇七年と連続優勝! 去年も特別賞に輝いた地域おこしの成功例――富士宮やきそば! 専用麺に油かす、更に削り粉が織りなすハーモニー! 特に削り粉は最近ラーメン界でもはやりの魚粉と言えるからな! 仕上げにふりかけるこれと、油かすの味わいはまさにダブルスープ! この時点で普通の焼きそばとは一線を画する!」 「夏ですが静岡おでんにも期待してしまいます。あの真っ黒な煮汁は、見ているだけで冒険心をくすぐられます。 他にもすその水餃子、浜松餃子、袋井たまごふわふわ、みしまコロッケ……忘れてはいけない遠州焼き!」 「麺系なら富士つけナポリタンも捨て難いし、志田系ラーメンもある! しかし私が一番注目しているのは……もつカレーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 『この場では説明できないくらい、静岡には美味しいものがたくさんって事だね。詳しくはヤフってみよう!』 「……おのれら、世界大会に行くのか、食い倒れ旅行に行くのか、よく分からないよ」 よし、放置しておこう。あと財布の紐(ひも)はきっちり締めておかないと。ヒカリには前科があるし。 以前、フェイトのクレジットカードでお菓子を大量買いした事があって。でも、あれはフェイトも悪いよなぁ。 暗証番号を自分の誕生日『0505』にするんだもの。で、次は僕の誕生日『0801』だもの。 なので読者のみんなも、暗証番号系はちょっと考えようね。とりあえず周囲のものですぐ推測できるのは駄目だよ。 「フェリーニさんも快く許可してくれたし、盛り上がりそうねー。他の注目選手にも取材できるようならしたいらしいし、もしかしたら」 「僕のところは勘弁したいですけどね。関係者ですし」 「でも恭文くん、フェリーニさんとも友人でしょ? 対戦する事になったらそうも言ってられないわよ」 「……確かになー」 その時はどうしよう……そんな事も考えながら、事務所の仕事をこなしていく。そう、その時まではこなしていた。 ……そこで殺気が走る。それは事務所のドアを派手に開けて。 「たのもー!」 「た、たのもぉ?」 突然の来訪者二人が入ってくる。一人は紫髪ツインテールで、ゴスロリチックなキャミを着た女の子。身長は僕と同じくらい。 もう一人は百七十以上あり、でもグラマラスな体型が目を引く。夏だからってのもあるけど。しかもその来訪者は僕達の知り合いで。 「あれま、りん! ともみも!」 「り、りんさん達、どうしたんですかー!」 「どうしたもこうしたもない! 恭文!」 紫髪の名前は朝比奈りん――魔王エンジェルというユニットのアイドルで、あむ達とも友人。 もう一人も同じく魔王エンジェルに所属する、三条ともみ。……思い出すなぁ、あの秘められた事件を。 まだなぞたま事件の真っ最中だった頃、魔王エンジェルは少々問題のあるユニットだった。 そこに876プロの秋月涼、ルル達も絡んで、とんでもない大問題に発展した事がある。 それ以来の仲なんだけど……りんは涙目で僕にズカズカと近づき、指差ししてくる。 「アンタ、アンタ……あたしとともみに責任を取らないで! 嫁を六人増やしたって!」 「は……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 「ちょ、恭文くん! いや、それ以前に朝比奈さんも駄目よ! アイドルなんだから!」 「私達、恭文さんには奥さんもいるし、それに魔王エンジェルの再建もあったから……でも、ちょっと後悔してる。 本当は、家族みたいに一緒がよかったし。なのに、六人って」 「三条さんまでー! ……あれ、でも六人……は!」 小鳥さんだけじゃなく、亜美と真美……僕も察した。六人なんて、もう考えるまでもなかった。 ……ディアーチェ達の事かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんで広まってる! これも風の噂かぁ! 「ま、待って! りん、ともみ、おのれらは誤解している!」 「どこが誤解!? さっきアンタの家に電話したら、アンタを旦那様って言う奴がいたんだけど!」 「キリエェェェェェェェェェェェ!」 「やっぱり、覚えがあるんだね。……だったらいいわけ、しないでほしいよ。 恭文さんが素敵なのは、私達自身がよく知っているし。それならそれで受け入れるし」 「だから待って! 確かにホームステイで同居人が増えたけど、六人嫁にしたなんて事実はない! それだけはないから!」 「はぁ……はぁ、はぁぁぁぁぁぁ……!」 そこで疲れ果てながら入ってきたのは、赤髪ロングスレンダーの女。黒のノースリーブシャツにスカートという、夏に優しくない格好の子は。 「あー! 東豪寺麗華さんですー! あ、お久しぶりですー」 「お、おじゃましま……この馬鹿どもがぁ! アイドルって自覚を持ちなさいよぉ! なに堂々と他所様の事務所で男に告白してるの!?」 はい、魔王エンジェルのリーダー兼プロデューサーの東豪寺麗華です。でもよかったー! 麗華はまともだった! 「とにかく二人とも、ちょっと落ち着こう。あのね、誤解しまくりなんだよ。まず」 「なので恭文、あたし達とガンプラバトルで勝負だよ!」 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? なんで、どうして! バトルの前に話し合おうよ! というか僕はもうすぐ世界大会ー!」 「だから、そのお祝いも……電話とかでは伝えたけど、直接のお礼はツアーでかなり遅れたから。でも、そこは一旦置いといて」 置いとくの!? 麗華、そんな可愛らしく『置いといて』の仕草をしなくていいよ! その前に気にするべきところがあるでしょ! 「個人的事情は抜きに、今日は765プロに三対三の事務所交流戦を申し込みにきたんだ。というか、事前挨拶?」 『事務所交流戦!?』 「あれ……え、聞いてないのかな。りん、どうしよう」 「まぁとにかくだよ。今やアイドルのガンプラバトルは、千早の活躍もあって一般的になりつつある。 恭文、アンタが出た地区予選でもそうでしょ。引退組だけど美希も出ていたし、346プロの諸星きらりも出ていたし」 「……そう言えば」 準決勝で戦ったMGガンダムMk-II、そのビルドファイター……実はアイドルだったのよ。 諸星きらりっていう子でさ。でもバトルの記憶より、勝負する前のくっつき具合で大変だった。 「あたしとともみも麗華のツテでいろいろ教わってるんだけど、自分達だけでやっていても訓練にならない」 「それでうちに……麗華」 「そ、その通りよ。蒼凪恭文、アンタが参加する事も前提として伝えているわ。高木社長に」 「「社長に!?」」 「……でもコイツら、暴走するからぁ! 正直説得力ないわ!」 プロデューサー兼ユニットリーダーが疑ってるんですけど! そりゃあ疑いたくもなるわ、いきなりの流れだもの! いや、それ以前に社長……僕はなにも聞いてないんですけど! しかも僕の参加が前提ってなにー! 「だ、大丈夫。お祝い……頑張るし。彼女がそんなに増えたなら、私も……遠慮、しないよ? うん、全開で行くんだから」 ともみ、もじもじしなくていい! というかなに! この展開には覚えが……雪歩達かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! それ以外に伝わる要素が思いつかない! くそー! 歌唄が察していた時点で探りを入れておくべきだったー! 「とにかくそういうわけだから! 勝負は明後日の十五時、765プロのバトルルームで! 細かい打ち合わせはまた連絡するから! じゃああたし達、次の仕事があるから!」 「言うだけかい! ていうか明後日って、小鳥さん!」 「私も聞いてないわ! ねぇ、社長には話を通しているのよね! だったら……どういう事よー!」 「知らない! あとあたし達、聖夜市に引っ越すから! それでご近所付き合いから外堀を埋めてやる!」 「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! りん、ともみもちょっと落ち着いて! まずはほら、話し合おう! 誤解を」 「りんと一緒に、頑張るよ? その、私達の事が忘れられないくらい……頑張っちゃうんだから。なので」 「「失礼しました!」」 そして二人は止める間もなく出ていった。しかも麗華を強引に引っ張り。 「ちょ、ま……アンタ達ー! これは一体どういう事なの! ねぇってばー!」 そのまま消えていく。伸びかけた手は引っ込める事もできず、ただただ打ち震えるのみ。 ど、どうして……誤解は地区予選中に全て解けたと思っていたのに。時間差にもほどがある。 「恭文くん、どうしましょう!」 「とりあえず、雪歩達をすぐに呼び出して……ください」 「分かったわ!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ うー、むかむかするー。まぁあれから仕事に集中してた、あたし達が悪いんだけどさぁ。 とにかく準備だ……あたしのガンプラ、見せてやろうじゃないのさ! 「ちょっと待ちなさいよ!」 そこでなぜか麗華が荒ぶり、あたし達の手を払って停止。まぁ悪い事はしたので、とりあえずなにも言わない。 「アンタ達、一体なに考えてるのよ! 幾らなんでも無茶苦茶よ! 765プロにも失礼だし!」 「麗華、ごめん。でも……やっぱり、放っておけなくて」 「……PPSE社の連中が、ちょこちょこ周囲を伺っているから?」 「……アイツ、また面倒事に飛び込んでるんでしょ? でも……なんにもできないし」 嫁なんて、ぶっちゃけ理由付けだった。なんでこういう時……それが悔しくて悔しくて、歩道の隅で軽く頭をかいちゃう。 ……麗華は東豪寺財閥のご令嬢。更に言えば、東豪寺財閥は恭文にそれなりの借りがある。 PPSE社にも出資してるんだけど、その流れで知ったらしいの。上層部付きのSPが、恭文の周りを調べまわってるって。 それを聞いたらいても立っていられなくて。でもアイツ、そこをツツいてもきっと笑って『大丈夫』って言うだけだし。 それでどうしようどうしようって考えていたら、結局乗り込んでいた。それもともみと揃ってだから、ほんと馬鹿らしい。 「……で、どうするのよ」 「どうしよう……そこまで、考えてない。でも嫌なの、あたし達がアイドルを続けられたのは……アイツやあむ達のおかげなのに」 「私も、このままは嫌だ。あとは、メイドさんになるしか……ないし」 「だからってこれは……ちょっと待ってよ。ともみ、メイドさんってなに」 「フェイトさんが教えてくれたの。あの、恭文さんはメイドさんにすっごく弱いって」 「おぉ、それだぁ! メイドさんならお嫁さんとは別枠でいけるじゃん!」 「いけるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 荒ぶる麗華は気にせず、いろいろ考えてみる。どうしよう……なにが、できるんだろう。 そりゃあ大活躍しちゃってて、距離は離れていたよ。それでも好きな気持ちと、お返ししたいって気持ちは……ずっと変わらない。 改めて街を歩きながら、思い出すのはあの秋の日。夢が分からなくなっていたあたしが、また立ち上がれた日の事。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ――それから二時間後、事務所には全員集合。赤羽根さんがあんぐりする中、僕は雪歩と千早、響とあずささん……そして社長に笑いかけていた。 「へぇ……つまり、雪歩とあずささんが」 「ご、ごめんなさいですぅ! その、ショックで……お話したの、すっかり忘れててぇ!」 「でもどうして今頃……あ、そう言えばツアー中だったから」 「みたいですねー。というわけで二人とも、それに社長も正座」 「「「……はい」」」 そして三人は素直に正座……ちょっとプルプル震えているけど、きっとそれは自業自得だ。 え、社長も正座? 当然だよ……事前に話を聞いていながら、この直前まで伝えていなかったしねぇ! 「プロデューサーさん、これはもうプロデューサーさんが立てたフラグに責任を取らないからじゃ」 「うるさいわ春閣下!」 「誰が閣下ですか! 八つ当たりしないでくださいよ!」 「おのれだよおのれ! だとしても全くの誤解でこんな事になるのはおかしいでしょ! 本当に嫁じゃないの! そういう子達じゃないの! ホームステイみたいなもので、ちゃんとした保護者的な恐竜もいるの!」 「恐竜ってなんですか! というか、それなら電話とメールで」 「繋がらないんだよ! 畜生めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 ……いや、正確には一人だけ繋がった。でも……どうすりゃいいの、この状況! 受け止められる限界量を軽く飛び越えている! 「い、伊織ちゃん……東豪寺さんとはお友達だよねー。なんとかならないかなー。プロデューサーさんも困ってるしー」 「無理よ。それで三対三……さらっと事務所交流戦って事にしてるのがきついわね。 アンタは世界大会出場前だし、ガンプラを破損させるわけにもいかない。となればチームメンバーも必要だけど」 「あの、それなら私がやりますぅ! 迷惑かけちゃいましたし!」 「プロデューサーさん、私も」 「萩原さんはともかく、あずささんは無理ですよ。そもそもガンプラを作っていないですよね」 千早の素晴らしい指摘に、あずささんががっくり肩を落とす。……そこを忘れちゃいけませんって。 「もっと言えば萩原さんも不安が……まだクロスボーンの機動制御に不安があるし」 「わ、私は大丈夫だよぉ! ちゃんと飛べるようになったし!」 「……雪歩、ドリルで穴掘りに集中しやすいのは、飛べるようになったって言わない」 「はう!?」 「というか、ぼく達は駄目だよ。なんだかんだで引き受けている仕事優先になって、練習もほとんど参加していないし」 「期末試験や夏休みの宿題もあったからなぁ。どうしてもそっち優先で……それで千早もアウト。 友達関係は変わらずだけど、765プロは辞めているわけで。自分もリカルドとのバトルがすぐだし……それなら」 そこで響が見るのは、ほぼギャラリー化していた美奈子達新人組……え、おのれまさか。 「……杏奈、達?」 「そうだぞ。はっきり言うと、ガンプラ制作・ファイター技術の練習歴なら自分達以上だしな」 「ちゅ!」 「まぁ確かに私らなら……申し込まれた理由が誤解に誤解が重なっているようで、全く笑えませんけど」 「同感です。それに、正直私達が出る意味ってあるんでしょうか。個人個人の話し合いでなんとかなるような」 志保がありありと『私達を巻き込まないでください』って言っている。それは分かるんだけど……あぁ、非常に言い辛い。 「甘いわよ、志保!」 「え、えぇ!」 でも伊織は一刀両断。そう、一刀両断だよ。志保は『事態をなにも分かっていない』ってね。 「あのねぇ、話を聞いてた? あくまでもこの交流戦は、先に備えてお互い切磋琢磨し合うためなの」 「でもそれ、ただのいいわけじゃ」 「なるほど。アンタはこれから仕事仲間になるかもしれないアイドル達を、そういう公私混同するような奴と見下すわけね。 予め社長にも話を通している、正式な話なのに。それは先輩に対しての無礼よ」 「無礼!? え……待ってください、それはつまり」 「えぇ、そんな理由で交流戦を断ったら……765プロはとんだ笑いものよ。それに大丈夫よ。 魔王エンジェルがそういうフシを一つでも見せたら、徹底的にツツいて上位に立てばいい。 当然麗華達もそこは分かっているから、本当に事情は置いていくわよ? そうじゃなきゃ魔王エンジェルの評判にも関わる」 「前もって決まっていた事である以上、個人的事情は、やっぱり個人的事情なんですね。……ごめんなさい」 「いいよ、本人達の前でやらかさないでもらえれば。ちなみに、この交流戦で僕が出る理由は成り立ってるよ。 ほら、東豪寺麗華は魔王エンジェルのプロデューサーでもあるから。……これ、プロデューサーとアイドルによる混合チームって前提なんだよ」 恐らく疑問に思っているところなので、僕も軽く補足。それで志保は更に『それで』と吐息を漏らした。 「そういう意味でも、志保が言ったような行動は取れませんね。そうすればあなた様やプロデューサー共々、志の低い姿を晒す事となります。 ですが東豪寺麗華もがんぷらとは……あぁ、律子と同じでしょうか。自分もできなければと」 「東豪寺さんの手腕と性格を考えれば、納得できるところね。でもどうしましょう、北沢さん達も初心者同然でしょ?」 「麗華達はこうして申し込むくらいだから、それなりにやっていると見ていい。 ……だからこそ、こちらも最大戦力で行かなきゃいけないわね」 そこで伊織と律子さんがちらっとこっちを見てくる。……僕が誰と戦うか、選べって話かぁ。一人では戦わせてくれないわけね。 視線で『当然』と念押ししてくるので、シオン達が揃ってため息。これはもう、腹を決めるしかないか。 志保が懸念したような問題もない以上……だとすると、ここで引っ張っていけるのは。 「美奈子、杏奈、悪いけど協力して」 「わ、私が!?」 「杏奈……ん、分かった。頑張る」 「わぁ、凄いです! 美奈子さん、杏奈ちゃん、頑張ってください!」 「ファイトだよー!」 星梨花と可奈、それに志保達も拍手でエールを送る。それで二人はやや照れた様子……いきなりの選抜だしねぇ。 しかも相手は先輩でもある魔王エンジェル。二人とも、肩の力が入りまくりだけど、ワクワクした表情も浮かべ始める。 「蒼凪君、一応聞くが、二人を選んだ理由は」 「まず美奈子とは元々顔見知りですから、そういう意味でも連携が取りやすい。 加えて二人はゲーマーです。そこも絡んで、新人組だとファイター技能が一つ抜けているんですよ。 ……あ、百合子もそうですね。最初こそアレでしたけど、慣れるのはかなり速かった」 「わ、私ですか!」 「あの、ゲームって……そういうのもバトルの強さに関係しているんですか」 「もちろんだよ。志保、考えてみて。ガンプラバトルもガンプラを使い、勝敗を競う『ゲーム』でしょうが。 単純に操作どうこうじゃなくて、そういう中での勝負勘も大事な要素だよ」 「あ……それでなんですね。納得しました」 これもまた人機一体――そういう意味でもディープゲーマーな杏奈が、一つ抜けるのはある意味必然だった。 「それでこういうの、実は珍しくない事なんだよ。僕も武術関係は一応プロだから、戦術や直接戦闘の機動では応用しているし。 ……モビルスーツの大半は人型戦闘兵器。だからこそ自分のリアルな動き、その技能を応用する事も可能なんだ」 「なら私らやったらダンスの動きを取り入れて……って、さすがにそれは無茶かー」 「できるよ」 「ほんまか!」 「そもそもダンスだって、戦闘術に応用可能な技能だもの。というか実際にそうしている武術がある。例えばカポエイラとか」 ちょうどいい機会なので、みんなに軽く教授。ホワイトボードを裏返し、マジックで『カポエイラ』と書いてみる。 「カポエイラは元々、ブラジルから生まれたものらしい。五百年ほど前、ポルトガルによって植民地化されていてね。 その開拓にアフリカ大陸の黒人を連行し人身売買、奴隷として酷使されていた。もちろん今なら絶対に許されない行為だ。 ……こうした背景の中、カポエイラは黒人奴隷が看守にバレないよう、ダンスの振りをして修練した格闘技とされている。 足技を中心に発展しているんだけど、それも手かせをされたまま修練したため……まぁここは想像も多分に含まれているけど」 「ダンスを応用っちゅうか、ダンスが隠れみのやったんか! でも……総合格闘技とかでは出てないよな」 「まぁ発祥はそんな感じだけど、今はいわゆるショーや演舞的な意味合いが強いしね。 むしろ相手に蹴りや攻撃を当てるのは下手ーってされているくらいなんだから。……ただ、恐ろしいよ。 ブラジルを旅行した時、地元のカポエイラ使いとやり合った事があるけど……一撃でろっ骨一本、持っていかれた」 軽く笑って、左手で右脇腹を叩く。すると奈緒を筆頭に、春香達も僕の迫力に飲まれ、息を飲む。 「黒人特有のバネがあるしなやかな筋肉、それから繰り出す蹴り技。空手やテコンドーと言った、ポピュラーなものとは質も違う。 しかも当てずに魅せるってのは、当てられる範囲などをしっかり見極めたからこそできる『エンターテイメント』だ。 おのれらだって、当たるか当たらないかーってすれすれなタイミングで、ダンスする事があるでしょ」 「た、確かに……え、でもこれって」 「可奈ちゃん、言いたい事はよーく分かる。でもプロデューサーさん、こういう人だから」 春香の発言が気になるけど、まぁきにしない。とにかくよ、様々な武術やダンスの動きを取り入れる表現競技、かなり人気なんだよね。 トラッキングもそうだし、エクストリームマーシャルアーツもその同系列だし。ダンスと格闘技、違うように見えても近い位置にいるわけだよ。 「詳しくはまた次の機会に教えるよ。とにかく可奈達も、今の評価はあくまでも『現段階』ってところ。みんなはこれからだよ、これから」 『はい!』 そう話をまとめると、赤羽根さんも納得してくれた様子。うし、なら早速準備開始だ。 二人のアデルも改良が必要だろうし、作戦も組んでおかないと。忙しくなるぞー。 「あ、そうだ。それなら……恭文くん、実は新しいガンプラを作って」 「新しいガンプラ?」 「うん。お店で一目ぼれして」 気になる事を言いながら、美奈子が照れ気味にあるガンプラを取り出す。それは青を基調とした、重量級のフォルム。 両肩と両腕に装備したキャノン砲身が、その印象をより強める。そしてやや変化形なAマークが胸元で輝いていた。 こ、これは……! そうか、美奈子はずっしりぽっちゃり系が好きだった! 「ガンダムAGE-3フォートレス!」 「そうだよー。いいよねー、ずっしりぽっちゃり……恭文くんもこれくらいになってほしいなぁ。というかプロデューサーさんも」 『いやいやいやいや!』 なに言ってんの、コイツ! フォートレスの体型と重量を知った上で言ってるの!? さすがにあり得ないからね! ◆◆◆◆◆ AGE-3 ガンダムAGE-3ノーマル 『機動戦士ガンダムAGE』内に登場する、第三部主役機。軍を退役したフリット・アスノが独自に開発した第三世代ガンダム。 地球に侵攻しつつあるヴェイガンを迎撃するべく起動され、アセムの息子であるキオ・アスノが搭乗する。 頭部とバックパックに変形する【コアファイター】(Aパーツ)と、胴体(ウェアに変形する)【Gセプター】が合体し、完成する。 パーツ自体に機動性を持たせた事でより迅速な空中換装が可能。分離しての回避やかく乱といった、奇抜な戦法を採る事もできる。 更に長期の大戦に亘(わた)り得られた、ヴェイガン側の技術が応用されている。 そのため千トンを超す重MS【レガンナー】を持ち上げたまま飛行できるほどの、膨大なスラスター推力。 複数の大型火器を同時運用できるほどの、高いジェネレーター出力を有している。 ※武装 シグマシスライフル:戦艦【ディーヴァ】に搭載されている、フォトンブラスターキャノンの技術が応用された主砲 これは従来MSの範ちゅうを超えた、絶大な破壊力を生み出す。分離時にはGセプターが懸架する。 ビームサーベル。両腕の装甲内にはセットされた、接近戦用の兵装。AGE-3は合計二基格納している。 取り出して手で持つ以外に、前腕から直接ビームを展開。甲剣のように運用する事も可能。 ◆◆◆◆◆ AGE-3F ガンダムAGE-3フォートレス 重砲撃型ウェア【Gホッパー】と合体した、ガンダムエイジスの陸戦形態。 飛行能力を犠牲にし、脚部に内蔵された高出力ホバーユニットによって、砂漠や湿地などの不整地を高速で滑走する事が可能。 その総合火力はAGE-2ダブルバレットのニ倍以上に達し、文字どおりの「移動要塞(フォートレス)」として戦場を席けんする。 ※武装 シグマシスキャノン:両肩と両腕に計四門装備された大型砲。単門でもシグマシスライフル以上の威力を持つ。 全砲門を最大出力で開放する事で、射線上に存在する全てをなぎ払うほどの威力となる。 砲身自体の強度も極めて高く、接近戦では打撃武器や防御装甲としても使用され、更に拳による攻撃も可能である。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 美奈子はやっぱりヤバい……ていうか、僕だけじゃなく既婚者の赤羽根さんにまで、がっつり食べる事を勧めるとは。 とにかくガンプラの改修、更にバトル訓練とチーム戦の練習をこなし、いよいよ試合当日。 765プロのバトルルームで、僕達は対じする。本当に、二日で準備できた事が奇跡だった。めっちゃ疲れたし。 「いやもう、ほんとごめんなさい。とりあえず個人的事情はまた後ほど、別に解決してもらうとして」 「それなら問題ないよ。伝えるのを忘れていた社長は吊しあげたし……まぁあれだ、楽しく全力でバトルしようか。今後に続くようさ」 「えぇ。りん、ともみ、それでいいわね」 「「もちろん!」」 「ではその勝負、このラルが見届けさせてもらおう!」 ……そしてなぜかいる大尉。ジャッジ役と言わんばかりに立っているので、もうツッコむ気もなかった。 『……誰!?』 「ちょ、あなた誰ですか! 恭文君の知り合い!?」 「なぜ僕を一番に疑うのか。……ラル大尉、ガンプラバトルをやっている者なら、知らない者はいない重鎮ですよ」 「あたし達は知らないんだけど! ていうかやっぱりアンタの知り合いじゃん! 律子さんが言った通りじゃないのさ!」 「まぁまぁ。大尉が見届け人なら問題ないから。さー、やるよー」 『できるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』 ≪――Plaese set your GP-Base≫ ベースから音声が流れたので、手前のスロットにGPベースを設置。ベースにPPSEのロゴが入り、更にパイロットネームと機体名が表示される。 ≪Beginning【Plavesky particle】dispersal. Field――Canyon≫ ベースと僕達の足元から粒子が立ち上り、フィールドとコクピットを形成。今回は市街地と森林地帯。 その近くには大きな山々……これはOVAの『機動戦士ガンダム第08MS小隊』か。震える山前編・後編の舞台だよ。 ≪Please set your GUNPLA≫ 指示通りガンプラを置くと、プラフスキー粒子がガンプラに浸透――スキャンされているが如く、下から上へと光が走る。 カメラアイが光り、首が僅かに上がった。粒子が僕の前に収束。メインコンソールと操縦用のスフィアとなる。 モニターやコンソール、計器類は淡く青色に輝き、アームレイカー型操縦スフィアは月のような黄色。 コンソールにはガンプラ内部の粒子量も逐一表示され、両側に配置された円系ゲージが忙しなく動く。 両手でスフィアを掴むと、ベース周囲で粒子が物質化。機械的なカタパルトへと変化。 同時に前・左右のメインモニターにカタパルト内の様子が映し出される。 ≪BATTLE START≫ 『望月杏奈……アデル、行きます……!』 『佐竹美奈子、ガンダムAGE-3フォートレス! いっくよー!』 美奈子達が楽しげに飛び出す中、僕もスフィアを押し込み……自分のガンプラと一緒に突撃する。そう、ここまで地道に改修していたとっておきだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ いろいろ悩むところもあったけど、一つ腹を決めた。その上であたし達は。 ≪BATTLE START≫ 『東豪寺麗華――ウイングガンダム!』 『三条ともみ、ジム・スナイパーII』 「朝比奈りん――ドラド!」 スフィア型アームレイカーを押し込み、戦いの舞台へと飛び出す。 『介入行動に入る!』 『いきます』 「出るよ!」 青い空の下飛び出し、早速下降。あたしのドラドも紫の曲線ボディを輝かせ、尾も揺らめかせながら四足で着地する。 麗華の赤いウイングガンダム、ともみのジム・スナイパーも膝立ちとなり……まずは周辺警戒か。 「ともみ」 『分かってる』 ジム・スナイパーは静かにライフルを構えた。あたし達もレーダーやカメラ映像で周囲を索敵。 でも敵影らしいものは出ていなくて、ちょっと拍子抜け。ガンガン攻めこむのが楽しいんだけどなぁ。 『向こうも様子見かもしれないわね。ともみ、とりあえず木々に隠れながら移動……狙撃ポイントに向かって。私とりんで近辺をしょう戒する』 『分かった』 「じゃあ早速」 『飛ばずに歩いて、市街地に入るわよ』 「……はーい」 まぁ的だもんねー。しょうがないのでともみと別れ、ゆっくり慎重に市街地へ入る。住宅や工業施設が交じり合った、不思議な感じ。 バックのともみと連携しつつ、自分達の行動範囲を少しずつ広げていく。トラップなども確認するけど、今のところはなしか。 でもどれもこれも思ったより高くて、十六やら十八メートル近くある、モビルスーツとどっこいどっこい。 視界もちょい悪いし、気をつけた方がよさそう。……とはいえ、これは。 「……妙に静かだなぁ。麗華、バスターライフルで街をなぎ払わない?」 『嫌よ。エネルギーがもったいな』 そこで警告音。十二時方向から……真正面!? 慌てて麗華と左右に分かれ散開するけど、そこにはなにもない。 そして頭上から、空気を切り裂くが響く。そちらに目を向けると、なにかが一瞬で通り過ぎ、ソニックブームを発生させていた。 それに威圧されている間に、さっきまであたし達がいた、林の辺りで爆発。土や木々が衝撃で派手に舞い上がる。 「な……! 今の、なに!」 『狙撃!? いや、それにしては威力が』 そして二発、三発とごう音が響き、音速粋を超えて林に着弾していく。狙撃じゃない、これは砲撃……ロングレンジキャノンかなにかか! 「ともみ!」 『大丈夫……けん制みたい。位置は掴まれていない。でも』 そうだ、ともみなら問題ない。前線のあたし達より冷静に状況は見ているもの。 『見つけた、蒼いガンダム……きっと、恭文さんだ』 ともみはちょっと楽しげにしながら、狙撃ビーム発射。街の上を通り過ぎ、ビームはキャノンが飛んできた方を貫く。 『やった!』 『ううん、外した。退避行動を整えて……そっちから見て十一時方向に逃げたよ。それに残り二機も出てきた』 「……あー、レーダーに反応が出たよ。てーか」 挟み撃ちだね、これは。……右側、麗華がいる方にはアデル。そして左側にはAGE-3フォートレスが登場。 翼を展開し、あたし達は一気に上昇。シグマシスキャノンの一斉放射を避け……アデルのビームがこない? すぐに察すると、麗華がバスターライフルを発射。……最大出力では射軸を中心とした周辺大気を、一瞬にして電離(イオン化)。 半径百五十メートルに及ぶ激烈なプラズマ過流と、数十キロメートルに及ぶ灼熱の奔流を巻き起こす。 またこのビームは、それ自体が複合的な層を持つ。高速で貫通力の高いビーム帯を中心に、低速で破壊力の強い粒子束が更に貫通する。 ようは範囲も広くて、めちゃくちゃ強いって話だよ。黄色いビームをアデルは左に避け、あたしはすかさず移動先へと飛び込み右サーベル展開。 胴体と右腕めがけて打ち込むと、アデルはその右薙一閃をシールドで防御。ただし真正面から受け止めるのではなく、腕を伸ばしやや斜めに。 上でビームや砲弾が行き交い始める中、こちらのサーベルは盾の表面を撫でながら振りきってしまう。 その間にアデルはドッズライフルをリアスカートに仕舞い、代わりにサーベルを取り出し刺突。 すかさず反転し、左のサーベルも展開しつつなぎ払い。刺突を脇へと流し、飛び込みながら全身を使って回転斬り。 アデルはすぐさま後ろに飛んで回避するので、着地したところで両手をかざしサーベル消失――ビームマシンガン乱射。 アデルはサーベルを回転させ、ビームシールドを構築。マシンガンの弾丸を全て払った上で接近してくる。 両手のサーベルを再展開し、飛び込みながらの唐竹一閃をバツの字で受け止めた。ちぃ、動きがいい! 『……手ごわい』 「そっちこそ! 確かアンタ、杏奈だっけ!?」 『そう……でも、負けない』 「あたしだって!」 ◆◆◆◆◆ XXXG-01W ウイングガンダム 『新機動戦記ガンダムW』にて登場。ドクターJが故郷のL1コロニー群にて完成させた機体。 地球圏統一連合に対する一大テロ作戦『オペレーション・メテオ』発動と同時に、地球に降下した。 パイロットはドクターJに見いだされ、幼少より特殊工作員としての英才教育を叩き込まれた少年【ヒイロ・ユイ】が務める。 本機の機動性の大半は、バックパックに接続された一対のウイングユニットに集約されている。 このユニットは単純に揚力を発生させるのみならず、翼の分割されたパーツを可動・変化させる事で、機体の空力特性を適宜変化。 失速から極超音速飛行までに至る、あらゆる速度域に対応する事ができる。 宇宙空間においても質量移動(AMBAC)や、内蔵されたバーニアスラスターを併用した高い姿勢制御能力を発揮。 更にバード形態へと変形し、機動力と行動範囲を上昇させる事で、他のガンダムよりも上の作戦行動が可能。 コクピットは球体形状となっており、頭部のメインカメラと連動して回転。 機体が見たものをパイロットもそのまま見る事となる。なおバード形態では頭部が収納されるため、常時水平に固定される。 ※武装 バスターライフル:ウイングガンダムゼロのツインバスターライフルを基に開発された、高火力携帯ビーム砲。 本兵装はエネルギーを物質化寸前まで縮退化させ、詰め込んだ専用カートリッジを銃身に三つ搭載。最大出力で発射した場合、弾数は三発となる。 またエネルギー経路がカートリッジで完結しているため、規格の異なる別機体でも使用可能な利点を持つ。 ビームサーベル:シールドに一基格納された、接近戦用武装。耐久性に優れたガンダニュウム合金製部材を採用。 それにより、水中でも一切減衰しないほどの高出力を発生させる。抜刀時はシールドが中折れしグリップが露出する。 バルカン:頭部にニ基内蔵された機関砲。対MS用としては非力で、威嚇・けん制や対人戦が主な用途である。 マシンキャノン:両肩にニ基内蔵された機関砲。頭部バルカンよりも大口径で、ガンダニュウム合金製以外のMSであれば破壊可能な威力を持つ。 シールド:バード形態時の機首を兼ねるガンダニュウム合金製シールド。 それ自体の強度に加え、表面に施された特殊コーティングによって実弾、ビームを問わず堅固な守備力を有する。 バード形態時は先端にバスターライフルを接続する。先端部は鋭利で、そのまま打突武器としても使用される。 ◆◆◆◆◆ ovm-e ドラド 『機動戦士ガンダムAGE』第ニ部以降より登場。第一部に登場したガフランから、変形機構を廃止し、陸上での運動性能を高めている。 オプション武装として三連ビームバルカンやミサイルランチャーが内蔵された、盾状の兵装を両腕に装着する事が可能。 カラーリングはパープルを基本としつつ、指揮官機など異なるカラーリングやカスタマイズが施された機体が存在する。 ※武装 ビームバルカン/ビームサーベル:両手の平に搭載されている装備。ガフランから続くヴェイガンMSの基本である。 ビームライフル(尾):生物的な尾に見せかけた兵装。その形状からフレキシブルに動き、その射軸は極めて広い。 拡散ビーム砲:腹部に搭載された高出力ビーム砲。 三連ビームバルカン/ミサイルランチャー:両腕で盾のように装備するオプション兵装。 ◆◆◆◆◆ RGM-79SP ジムスナイパーII OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』などに登場。メカニックデザインは出渕裕。 一年戦争末期にジム・スナイパーカスタムの設計コンセプトを、RGM-79Dをはじめとするジム・コマンド系列機にも導入して新規設計・開発された機種である。 頭部のバイザーには精密射撃用センサーと高倍率カメラ(精密射撃用レーザーと光学複合センサー)を備えている。 狙撃時には頭部バイザーを下ろして頭部全体を冷却することで超長距離の狙撃を可能とする。 その他の性能も一年戦争時の連邦の量産型MSとしては最高級を誇り、特に脚部に増設したスラスターと新型のバックパックによって高い機動力を持つ。 当機は汎用性も高く、一年戦争当時における連邦軍MS用武装はほとんど使用できる。 ともみはHGUCのキットに附属しているブルパップ・マシンガン、ビームサーベル、曲面型シールドなどを使用。 ※武装 75mmスナイパー・ライフル:モーゼル・ボルトアクションライフル"Kar98k"を元に開発された実弾ライフル(無反動砲)。 開発者はドイツ人という設定。口径はオリジナルの7.92mmの拡大ではなく、陸軍の75mm砲を転用したため、75mm砲となっている。 流体さく薬を使用しており、Kar98kと同じく中央部のボックスマガジンにクリップされた五発を装填した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ レーダーで杏奈ちゃんの位置を確認しつつ、ホバリングでの後退。滑るように街の合間を抜けていく。 マシンキャノンでのけん制をすれすれに避け、地面が次々と撃ち抜かれ、硝煙に包まれていく。 目隠し……く、どこからくるの! 後ろからとか! 『美奈子、十二時方向からバスターライフル! 最大出力でぶっ放して!』 十二時……恭文君の指示通りに、全砲門を真正面に向け。 「ディスチャージ!」 最大出力での一斉砲撃。ピンク色の奔流は硝煙を払い、二発目のバスターライフルと正面衝突。 『なに!』 「押し切って、フォートレス!」 そして二つの奔流はせめぎ合い、その圧力に耐えかねて大爆発。周辺のビルをなぎ倒し、衝撃でフォートレスも大きく吹き飛ぶ。 近くの大型ビルを突き抜けながら転がり、なんとか起き上がる。……杏奈ちゃんと朝比奈さんも吹き飛んだみたい。 機体は無事だけど……そこで警告音。八時方向へ振り返り、軽快に回りこんできたウイングガンダムと対じ。 ウイングガンダムはバスターライフルを左手に持ち替え、右手でサーベルを持って逆袈裟一閃。 咄嗟に右腕のシグマシスキャノンで受け止め、ピンク色のビーム刃を強引に払う。 『斬れないですって!』 「強度対策はしっかりしてます!」 体勢が崩れたところで、すかさず両肩のキャノンを零距離発射。ウイングガンダムは身を翻しすれすれで避け、懐へ入りながら刺突。 それに対しビームを生成しながら、左のシグマシスキャノンで殴りつける。 ビーム刃は砲口に収束していたエネルギーと衝突し、貫く事もできず散らされていく。 でもこちらもただでは済まず、エネルギーの爆発によりまた後退。左のシグマシスキャノンは……無事。 勢いに乗って距離を取りつつ、全砲門をフル稼働でキャノン連射。 でもウイングガンダムは砲撃の合間をすり抜け、本当の鳥みたいに軽快な飛行を見せつけてくる。 そうして距離を詰められた。振るわれるサーベルはシグマシスキャノンでなんとか払い、マシンキャノンも分厚い装甲で耐えていく。 うぅ、恭文くんから接近戦の特訓を受けてなかったら……でも大丈夫だ。格ゲーと同じで見切りが命。 うん、特訓だよ。私の趣味は格ゲーだし、そういう技能を生かすための訓練。 もちろんバトルは格ゲーとひと味違う。でも同じところもある。相手のリーチ、動き、『必殺技』をしっかり覚える。 あとはAGE-3フォートレスの挙動も……やれる、やるんだ。いろいろ事情はあるけど、一生に戦おうって選んでくれた事は嬉しかった。 この二日間、自分の準備もさておいて私達のために……だからやってやる! それでみんなには、頑張って用意した超ビッグバン盛りお弁当を食べてもらうんだから! (Battle39へ続く) あとがき 恭文「というわけでBattle38、いかがだったでしょうか。今回は女子限定大会が終わって、前回のCパートまでの合間。幕間とも言えますね」 フェイト「それで魔王エンジェル、HP版では本編初登場……同人版との絡みもあるんだっけ、出したの」 恭文「向こうではレギュラーだしねぇ」 (いろいろあるのです) 恭文「それでお相手は蒼凪恭文と」 フェイト「フェイト・T・蒼凪です。えっと、麗華ちゃんはウイングガンダム……これは」 恭文「以前拍手で頂いた、改造機体のアイディアに連なるところだね。今回は普通のカラー変更だけど」 フェイト「じゃありんちゃんのドラドは」 恭文「色」 フェイト「色!?」 (ファルシアは、Amazonで四千円とかだったから) 恭文「それと美奈子は、もう察してよ。劇中で言った通りだから」 フェイト「だ、だよねー。でもヤスフミ、クレープ……うぅ、私もミックスベリーが食べたい」 恭文「……フェイト、なに言ってるの」 フェイト「どうして信じられないって顔をするの!?」 恭文「そう言うと思って、あのあと帰ってから作ったじゃないのさ! 一緒に食べたでしょ!?」 フェイト「違うよー! あのお店で、夕日を見ながら食べるの!」 恭文「あー、そっち? うん、なら今度行こうか。アイリ達も連れてさ」 フェイト「うん」 (閃光の女神、すっかりごきげんで蒼い古き鉄に抱きつきすりすり……なおミックスベリーの話自体は、ISでやったアレです。IS2第一話とかですね) 恭文「それで六月……実は作者の周囲でも変化が」 フェイト「変化?」 恭文「作者の自宅から歩いて十分圏内には、今までファミマとセブンイレブンがありました」 フェイト「コンビニ!?」 恭文「でも同じ圏内で、ローソンが建設中で……そこが開店すると、御三家が十分以内に出そろい選び放題という事に」 フェイト「それは大事なの!?」 恭文「大事なんだよ。幕間のためにもなるし」 (なにより、人生で初めての十分圏内ローソン。今まではファミマしかなかったのに……わっほいー。 本日のED:Vivid『REAL』) あむ「……って、アンタのガンプラがきちんと描写されてない!」 恭文「そこも次回だね。そして今回の乱戦、今のところ三機がガンダムAGE枠だという罠」 あむ「スパロボにも出るし、問題ないじゃん。でもアンタ、狙撃レベルの砲撃? ロングキャノン装備って」 恭文「今回は美奈子達の経験値向上も目的だしね。そういう支援もできるよう、装備をチョイスしてるから。まぁまぁ見ててよ」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |