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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第58話 『超龍争奪戦(ちょうりゅうそうだつせん)』


「――ではジャンク・シンクロンを召喚!」


ジャンク・シンクロンがケットウリュウ横の歪みから飛び出て、右手で背負っているエンジンをかける。


「ジャンク・シンクロンの召喚成功時、効果発動! 墓地よりレベル2以下のモンスター――レベル1:チューニング・サポーターを召喚!」


そして同じ歪み――ゲートが生まれ、そこからカルノ達サイズなチューニング・サポーターが出現。


「このカードはシンクロ召喚に使用する際、レベル2モンスターとして扱う事ができる。
が……ジャンク・シンクロンのそ生効果により、この効果は無効化されている」

「なるほど、だから支援者(サポーター)か」

「では自分の墓地に存在するモンスターが、特殊召喚に成功した時」


やっぱくるか……! ケットウリュウは得意げにドッペル・ウォリアーを取り出し、場に置く。


「ドッペル・ウォリアーを特殊召喚する!」


光と一緒に現れたドッペル・ウォリアーはこちらに銃を向けてくる。……まぁ最初のターンだし、攻撃は無理だけどねー。


「ではレベル1:綿毛トークン二体」


綿毛トークン二体がふわりと浮かび上がり。


「レベル2:ドッペル・ウォリアーとレベル1:チューニング・サポーターに」


他二体のモンスターも続き、最後にジャンク・シンクロンが跳躍。青いリングとなり、頭上の四体を包み込む。


「レベル3:ジャンク・シンクロンをチューニング!」

「早速くるか……!」


【1+1+2+1+3】――合計レベル8。しかも一ターン目で召喚するとなれば、あれしかない。

星となったモンスター達は生まれた極光に包まれる。そこから発せられる圧力に身構えると……あれ、なにこれ。

スターダスト、だよね。でも……昨日と違う気配がする。この強烈な鋭い殺気は、いったい。


「……お兄様、分かりますか」

「うん、分かるよ」


荒れ狂う風と光の中、自分の考えが少々甘かった事に気づく。同時に安どもしていた。

【コイツ】の前にことはさん達を出したら、一体どんな事になっていたか。いや、僕もかなりやばいんだけど。


「これは、スターダストじゃない……!」

「では、なんだと言うんだ! コイツは!」

「ふはははははは! いい勘をしているな そう、これはお前達の知るスターダストではない!
しかしスターダストではある! 目覚めよ、冷徹なりし龍の本能――シンクロ召喚!」


光の中から飛び出した白銀の龍は、スターダストのフォルムそのまま……そう、そのままだったはず。

でも各部の爪が鋭角化して、更に本数を増やし、頭部も横に張り出し大型化していた。

その姿を見て悟る。スターダストは変わってしまった……恐らく、コイツのせいで。


「光となって駆け抜けろ! レベル8:閃こう竜(せんこうりゅう)スターダスト!」


そして閃こう竜スターダストは、世界に吠える。存在を刻み込むように……力を誇示するように。


「ではドッペル・ウォリアーとチューニング・サポーターの効果発動だ!
チューニング・サポーターがシンクロ素材に使用され墓地へ送られた時」


ケットウリュウはあ然とする僕達を気にした様子もなく、手札を四枚に増やす。


「デッキから一枚ドロー! なおこれは墓地で効果発揮するため、ジャンク・シンクロンの効果により無効とはならない!
続けてドッペル・ウォリアーの効果! ドッペル・ウォリアーがシンクロ素材として墓地へ送られた時」


軽くホバリングしている閃こう竜スターダスト、その隣に光が走り、白いドッペル・ウォリアー二体が出現。


「自分フィールド上にドッペル・トークン二体を、攻撃表示で特殊召喚する事ができる! オレはこれでターンエンドだ!」

「……一つ聞かせろ。スターダストは、どうした」

「スターダストは進化したんだよ! このオレと同調(シンクロ)する事でな!
そして人間どもに災厄を! 絶望と涙を呼び起こす神となった!」

「大体分かった」


右手をスナップさせ、ケットウリュウを――閃こう竜スターダストを睨みつけ、右手をデッキにかける。


「お前、ぶっ潰すわ」

「ならばこい! オレ達はもはや、デュエルでしか語る舌を持たん!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


閃こう竜……!? なんなの、あの禍々(まがまが)しい……そう表現しても差し支えない、鋭い気配は!

ラン達も怯えた様子で後ずさり、閃こう竜の咆哮に身震いする。


「な、なんなのだあれは! 我々のデッキに入っていたスターダストとは全く違うぞ!」

「あむちゃん、あれよ! 私が感じ取った気配は! まさか、アヤカシの力でカードが変化するなんて……!」

「やっぱ、効果とかも変わってたり……するのかな」

「か、変わっていたら……変わってますよねぇ」

「名前から、変わってるもんねー」

「しかもこれだけ展開して、手札消費は一枚だよ。やっぱり、世界レベルは恐ろしい」


落ち着け、これはカードゲームだ。ただ姿や名前だけが変わっていて、同じ効果とかなら恭文も対処できる。

でも効果や攻撃力とかがまるまる変わっていたら、かなり厄介かも。どうすんの、これ……恭文!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ドッペル・ウォリアー

効果モンスター

星2/闇属性/戦士族/攻 800/守 800

自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

このカードがシンクロ召喚の素材として墓地へ送られた場合、
自分フィールド上に「ドッペル・トークン」
(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する事ができる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN01→02

ケットウリュウ

T:閃こう竜スターダスト ATK2500/DEF2000(攻撃表示)
U:ドッペル・トークン ATK400/DEF400(攻撃表示)
V:ドッペル・トークン ATK400/DEF400(攻撃表示)

墓地×6(チューニング・サポーター×1 ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1
ダンディライオン×1 レベル・スティーラー×1)
除外×0
□□□□□14 手札×4 デッキ総数×30(セットカード×0)
□VTU□ □ LP:4000(セットモンスター×0)

□ □□□□□ LP:4000(セットモンスター×0)
15□□□□□ 手札×5→6 デッキ総数×35→34(セットカード×0)
墓地×0 除外×0

恭文




『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説

とある魔導師と彼女の機動六課の日常

第58話 『超龍争奪戦(ちょうりゅうそうだつせん)』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


臆せば負ける――戦いってのはそういうもんだ。それはカードゲームだろうと変わらず。なので。


「僕のターン」


気合いを入れて、僕のターンを始めよう。まずはスターダストのスペックを確かめつつ、場を整えるところから。

相手の場に伏せカードはないし、トークンも基本バニラだ。攻めない理由はない……右手をデッキにかけ。


「ドロー!」


カードと一枚引き、手札を六枚とする。よし、これならまずは……!

早速動こうとすると、僕の横にフレミング・アクアが出現。【やっちゃえー』と拳を振り上げた。


「メインフェイズ1、通常魔法【E−エマージェンシーコール】を発動!
デッキからE・HEROと名のつく、E・HEROエアーマンを手札に加える!」

デッキから飛び出たエアーマンのカードをキャッチすると、デッキは自動シャッフル。その上で。


「E・HEROエアーマンを召喚!」


旋風とともにエアーマンが、僕の場にさっ爽登場。初手でこれはいい感じだよ。……閃こう竜は動かずか。

どうやらこのままプレイを続けていいようだね。まずはトークンから潰していこう。


「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、二つある効果のうち一つを使用できる!
今回は二つ目。デッキからHEROモンスター一枚を手札に加える! E・HEROネオスを手札へ!」

「くくく、ネオスか……!」


ネオスを手札に加えても、奴は動かず。ならこのままバトルだ。


「バトルフェイズ! E・HEROエアーマン、右のドッベルトークンに攻撃!」


エアーマンがホバリングしたまま場へ直進。ジグザグにスライドしながら、トークンへ肉薄。


「させん! 閃こう竜スターダストの効果発動!」


でもその瞬間、閃こう竜が翼を広げ咆哮。エアーマンが打ち込んだ拳は、突如発生した金色の障壁で防がれる。


「自分フィールドに表側表示で存在するカード一枚を選択! ドッペル・トークンを選択!
トークンはこのターン、戦闘及びカード効果で破壊されない!」

「ちぃ! だがダメージは受けてもらう!」


破壊されないというだけで、そこは変わらない。でも回数制限なしの破壊耐性……なんと厄介な。

それでもエアーマンは右フックで障壁を打ち砕き、その粒子がケットウリュウの体へ次々と突き刺さる。


「ぐぅ……!」

「メインフェイズ2。カードを一枚伏せ、ターンエンドだよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN02→03

ケットウリュウ

T:閃こう竜スターダスト ATK2500/DEF2000(攻撃表示)
U:ドッペル・トークン ATK400/DEF400(攻撃表示)
V:ドッペル・トークン ATK400/DEF400(攻撃表示)

墓地×6(チューニング・サポーター×1 ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1
ダンディライオン×1 レベル・スティーラー×1)
除外×0
□□□□□14 手札×4→5 デッキ総数×30→29(セットカード×0)
□VTU□ □ LP:2600(セットモンスター×0)

□ □□@□□ LP:4000(セットモンスター×0)
15□□■□□ 手札×5(E・HEROネオス×1) デッキ総数×32(セットカード×1)
墓地×1 除外×0

@:E・HEROエアーマン ATK1800/DEF300(攻撃表示)

恭文


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「オレのターン……ドロー! メインフェイズ1へ入り、スポーアを召喚!」


光と一緒に出てきたのは、水色の毛玉モンスター。瞳はそれよりも深い青で染まり、愛らしい表情を見せる。


「墓地にあるレベル・スティーラーの効果! 自分フィールド上のレベル5以上のモンスターを選択して発動!
オレはレベル8:閃こう竜スターダストを選択し、そのレベルを一つ下げ」


これにより閃こう竜はレベル7扱い……なお一度下げたレベルは、エンドフェイズを超えてもそのまま。

モンスターが一度場から離れない限りは駄目って話だね。墓地から飛び出したレベル・スティーラーを、ケットウリュウはディスクへ置く。


「このカードを墓地から特殊召喚!」


そしてスポーアの隣にレベル・スティーラーが出現。これでレベル2〜4のシンクロが可能となった。

この状況で呼び出せるシンクロは幾つか思いつくけど、別世界だからなぁ。とりあえず予想外なのがきてもいいよう、身構えておく。


「レベル1:ドッペル・トークン二体、レベル・スティーラーに、レベル1:スポーアをチューニング!」


トークン達とレベル・スティーラーが跳び上がり、スポーアはひとつのリングに変化。

それが三体を包み、三つの星とする。そして星とリングは一体となりて、絆(きずな)の極光を走らせる。


「シンクロ召喚!」


現れたのは黒い爪を持つ手っ甲――赤と白のLINEが走るそれは、光を払いながら高く飛び上がる。


「アームズ・エイド!」


レベル4シンクロで候補は挙がっていたけど、やっぱコイツかー! くそ、閃こう竜の効果と合わせると面倒極まりないぞ!


「ではアームズ・エイドの効果! 一ターンに一度、自分のメインフェイズ時、装備カード扱いとしてモンスターに装備できる! アームズ・エイドを閃こう竜スターダストに装備!」


場に置いたアームズ・エイドのカードを、閃こう竜の後ろ――魔法・罠ゾーンにセット。

閃こう竜は空に右手を伸ばし、アームズ・エイドを招き寄せる。……アームズ・エイドは加速しながら反転し、そのまま閃こう竜の腕を収める。

細身な体に不釣り合いな拳を身につけ、閃こう竜から強烈なオーラが放たれ吹き抜ける。


ただそれだけの事なのに地面が揺れ、近くでガラスの割れる音が響いた。


「この効果で装備カード扱いとなっている場合のみ! 装備モンスターの攻撃力は1000アップする!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


スポーア

チューナー(効果モンスター)
星1/風属性/植物族/攻 400/守 800

このカードが墓地に存在する場合、
このカード以外の自分の墓地の植物族モンスター1体を
ゲームから除外して発動できる。

このカードを墓地から特殊召喚し、
この効果を発動するために除外したモンスターのレベル分だけ
このカードのレベルを上げる。

「スポーア」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


アームズ・エイド

チューナー(効果モンスター)
星1/風属性/植物族/攻 400/守 800

シンクロ・効果モンスター
星4/光属性/機械族/攻1800/守1200

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとしてモンスターに装備、
または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚できる。

この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、
装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。

また、装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文はライフダメージこそ与えたけど、場のカードは破壊できなかった。カードを一枚伏せ、ケットウリュウのターンに移る。

……移った瞬間ご覧の有様だよ! なにあれ、攻撃力3500って事だよね! ふざけんなー!


「……源ちゃん」

「破壊無効化……しかもアームズ・エイドはまずいぞ! 一気にひん死へ追い込まれる!」

「ど、どういう事なの!? いや、攻撃力3500だから強いのは分かるけど、半分は残るじゃん!」

「では閃こう竜の効果! 閃こう竜自身を指定し、戦闘及びカード効果では破壊されないものとする!」


そして閃こう竜があの障壁をまとって。


「バトルフェイズ! 閃こう竜スターダストよ、エアーマンを粉砕せよ!」


翼を広げ、恭文の場に踏み込んできた。やばい……これ、絶対やばい! もう今更だけど!


「そうそう! アームズ・エイドを装備したモンスターが、戦闘でモンスターを破壊・墓地送りにした場合……効果発動!
破壊したモンスターの、元々の攻撃力分ダメージを受けてもらうぞ!」

「えぇ! そ、そんなんあかん! そうしたら本当にひん死やんか!」

「バリアーフォースー……って、無理かー! 破壊無効化されてるのよね!」

「……なにやってるか、さっぱり分からん」


よし、殿様は無視だ! オネストも駄目だし、こうなるとやっぱり伏せカード……恭文は笑って、右手をカードにかざした。


「あむ! みんな!」


そこで後ろからエンジン……というかブレーキ音。かなり急な感じで……ていうかこの声は!


「じゃあ伏せカードオープン――コマンド・チェンジ!」

「きましたぁ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


オープンしたコマンド・チェンジから緑の風が吹き抜け、それがエアーマンと絡み合う。……やっぱ僕はスゥに頭が上がらないんだろうか。


「自分フィールド上に表側表示で存在する、E・HEROと名のついたモンスター一体――今回はエアーマンを選択して発動!
選択したモンスターを墓地へ送り、それと同属性の『コマンド』と名のついた」


エアーマンを墓地へ送り、エクストラスロットからお馴染みな一枚を取り出す。


「魔法使い族モンスター一体を、エクストラデッキから特殊召喚する! スゥ、いくよ!」

「はいですぅ♪」


場に生まれた輝きと風が混ざり合い、一つになり一気にはじけ飛んだ。


「まばゆい緑の旋風が、優しく強い盾となる! その強さ、全てを包む導となれ!」


風の中から現れたのは、少しだけ目つきが鋭いレンゲルシロップ。……今回もお世話になります。


「魔法鉄騎士レンゲル・コマンド――守備表示で特殊召喚!」

「守備力3000!? 足りん、足りんぞぉ! モンスターの種類が変わったので、攻撃の巻き戻し! もう一度やれ、閃こう竜よ!」

「相手モンスターの攻撃宣言時、レンゲル・コマンドの効果発動! 一ターンに一度、手札を一枚捨てる事で」


この状況ならレンゲル・コマンドは鍵に等しい。なのでネオスを手札から墓地へ送り、優しい緑色の風を生み出す。

その風が突撃しかけていた閃こう竜を押し返し、ケットウリュウの脇へ戻す。


「その相手モンスターの攻撃を無効にする! ……当然OKだよね? 閃こう竜が無効にできるのは破壊のみだ」

「無論! ではカードを二枚伏せ、ターンエンドといこうか!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


レンゲル・コマンドのお陰で、恭文はひん死を避けられた。ホッとしているとあたし達の隣に遊星さんがやってくる。


「おい、貴様! この状況を見て分からないのか! 危険だから離れて」

「流ノ介、なに言ってるのよ! この人が不動遊星よ!」

「……このカニ頭がぁ!?」


なに失礼な事言ってるの! いや、カニ……やめてー! もうカニにしか見えなくなる! 違うのに、違うはずなのに!


「あぁ。あなた達がアヤカシとやらを止めているという……すまない、面倒をかけてしまって」

「それは大丈夫です。隙間から盗られたら、普通の人はどうもできんし。それより、あの」

「あれは、スターダストなんだな」

「……はい」


遊星さんが険しい顔で閃こう竜を――変わり果てたスターダストを見ていた。だからことはさんも事実だけを告げる。

で、でもどういう事? 姿とか変わってるのに、それでも問題なしで受け入れてるし。


「デュエルは始まったばっかなんだ。見ての通り恭文が」

「……本当にすまない、新しいデッキを組んでいて遅れてしまった」

「自分で取り戻すつもりだったのかよ、アンタ!」

「当然だ。以前もそうした」


詰問した源太さんも絶句する、当然と言わんばかりの……しかも以前もって!

だから慣れてるのかな! 姿が変わったのも初めてじゃないとか!? なにそれー!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN03→04

ケットウリュウ

T:閃こう竜スターダスト ATK3500/DEF2000(攻撃表示 レベル7扱い アームズ・エイド装備によりATK+1000)
U:アームズ・エイド ATK1800/DEF1200(閃こう竜スターダストに装備中)

墓地×7(チューニング・サポーター×1 ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1
ダンディライオン×1 レベル・スティーラー×1 スポーア×1)
除外×0
□■U■□13 手札×2 デッキ総数×29(セットカード×2)
□□T□□ □ LP:2600(セットモンスター×0)

□ □□@□□ LP:4000(セットモンスター×0)
14□□□□□ 手札×4→5 デッキ総数×32→31(セットカード×0)
墓地×4(E・HEROネオス×1 E・HEROエアーマン×1) 除外×0

@:魔法鉄騎士レンゲル・コマンド ATK1500/DEF3000(守備表示)

恭文


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「僕のターン、ドロー!」


手札は五枚……よし、いい流れだ。ライフ差では負けていないから、そこをうまく活用する。

ドローしたカードを加え、軽くシャッフル。その上でコマンドモンスターが描かれた、一枚の魔法カードを取り出す。

その背後にはあむとよく似た女の子。目を閉じ、戦いに向かうコマンド達を応援していた。


「メインフェイズ1、通常魔法【バックアップ・コマンド】を発動するよ。
自分の墓地から「HERO」と名のついたモンスター一体と、「コマンド」と名のついた速攻魔法カード一枚を選択。
僕は【E・HEROエアーマン】と、さっきのターンで使った速攻魔法【コマンド・チェンジ】を選択し」


二枚が墓地から出てくるので、それをしっかり回収。その代わりにバックアップ・コマンドを墓地へ送る。

結果手札は六枚となり、エアーマンをバッチリ回収。コマンド・チェンジももう一回使えるというお得祭りだ。


「手札に加えるよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


○バックアップ・コマンド(とまとオリカ)

【通常魔法】

自分の墓地から「HERO」と名のついたモンスター1体と
「コマンド」と名のついた速攻魔法カード1枚を選択して手札に加える。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「更に魔法、O−オーバーソウルを発動。自分の墓地にいる、E・HEROの通常モンスター一体を特殊召喚する」

「ふ、くるか!」

「いくよ、マイ・フェイバリットカード! E・HEROネオスを攻撃表示で特殊召喚!」


オーバーソウルをディスクへ起き、効果発動。地面から生まれた光の輪――そこから飛び出したネオスは、身を翻しながら場へ着地する。


「更にE・HEROエアーマンを攻撃表示で召喚!」


再びエアーマンにも場に出てもらい、一応準備は整った。……アームズ・エイドは確かに強力だ。

でもそれだって使いよう。では教えてあげよう、キーカードにこだわるとロクな事にならないってさ。


「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、二つある効果のうち一つを選択・発動できる。
今回は一つ目の効果。フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。装備カード扱いとなっている、アームズ・エイドを選択するよ」


エアーマンが両手を腰だめに構え、内蔵式プロペラを高速回転――そこから二つの旋風を生み出し発射する。

風が空間をも揺らしていく中、ケットウリュウは不敵に笑った。とても……とても楽しげにだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……え、破壊できるん? あれモンスターやけど」

「できるらしいな。ルールブックによると、装備したモンスターは魔法・罠の扱いとなるようだ」


流ノ介さん、マジでなんか覚えてる?! あー、でもそっか。そうじゃないと面倒だしね。

ていうか壊せないじゃん、魔法・罠ゾーンにも攻撃してーとかじゃないとさ。相手モンスターも破壊できないとチートだし。

ていうか、そのチートが今この段階で存在しているわけで。さて、閃こう竜は当然。


「閃こう竜スターダストの効果発動し、アームズ・エイドを選択! アームズ・エイドは戦闘及び、カード効果により破壊されない!」


きた……! 閃こう竜が翼を広げ、光の障壁を展開。それがエアーマンの撃ち出した風をいとも簡単に散らしてしまう。


「なるほど、あれがスターダスト――閃こう竜の能力か。スターダストと同じようで違う」

「惜しい。せっかく厄介な装備を破壊できるところだったのに」

「いいや姉さん、惜しくねぇぜ! これで閃こう竜は破壊できる!」

「だよね。恭文、このためにエアーマンの効果を使ったんだ。だったら次は」


なにかこう、破壊できるカードを持ち出してそのまま……と思ったら、恭文は閃こう竜を指差し。


「バトルフェイズ! E・HEROネオス、閃こう竜スターダストへ攻撃!」


なにもせずにアタック!? それでもネオスは迷いなく相手の場へ駆け出した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ふん、やはりそれが狙いか。恐らくはオネストでもあるのだろう……だがこちらも馬鹿ではないのでな!


「カードオープン!」


右手をかざし、伏せていたカードをオープン。それは罠……!


「カウンター罠、攻撃の無力化! 相手モンスターの攻撃宣言時に発動し、その攻撃モンスター一体の攻撃を無効! バトルフェイズを終了する!」


閃こう竜に向かってオネストが……もとい、オネストと仲良しなネオスが飛び込んで右ストレート。

ふ、いい気迫と拳……さすがは伝説のカード! しかしその拳は閃こう竜へ届く前に、突如現れたかかしが受け止め弾く。


「なにぃ!」

「バトルしたら勝ってたんに、攻撃を防いだ!?」


シンケンジャーどもが一名を除いて驚いてるが、奴と不動遊星は『やっぱりか』という表情。

……ふ、この展開を予測できるだけの知能はあるようだ。そうでなくては、地獄を見せる意味もない!


「バトルフェイズを封じられちゃあどうしようもないね。じゃあメインフェイズ2、カードを一枚伏せてターンエンド」


またもコマンド・チェンジか? だがそう何度も閃こう竜の一撃を食らえるわけでもあるまい。

面白い……血がたぎる! やはりそのデッキ、オレ様のものとしなくてはなぁ! いい地獄が生み出せそうだ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文と閃こう竜のプレイングに全員が驚くばかり。でもあたしは……ラン達はちょっと違う。ネオスは光属性だから防いだのかも。


「……あむちゃん」

「分かってる。アイツ、オネストを警戒したんだ」

「オネスト……あ! 攻撃力がめっちゃ高くなる天使さん!」


ことはさんがすぐ気づいたのは、昨日のデュエルで恭文も使ってたから。光属性デッキでは得意技だから、注意するようにと言ってたの。

ただジャンクドッペルは光属性専門ってわけじゃないから、あくまでも予備知識としてだね。あとは入り口って意味もある。

属性や種族を軸に組む事もできるし、それ用のサポートもある。もちろん攻撃力やレベルを絡めるのもアリだって言ってたんだ。


「あむの言う通りだ。手札にオネストがあると警戒し、攻撃を防いだ」

「あー、それがあったかー! 確かにネオスで殴る状況だし、なにかあるなぁと思うよなぁ!」

「だが恭文もそこが狙いだった。手札にオネストがない可能性もある」

「え……遊星さん、それどうして! ネオスやられちゃうじゃん!」

「奴の伏せカードを使わせたかったんだろう。迎撃用のカードならば確実に使うと踏んだ」

「アイツ、また無茶苦茶な……!」

「そうでもない。伏せたのがコマンドチェンジなら、攻撃反応がなかった時点で発動させればいい」


あ、なるほど。そういう予備策もあったから、無茶な攻撃でハッタリ仕掛けたと。

でも防がれたとか、札がバレたのは悪い事じゃない。向こうも対処を迫られるわけだしさ。

その分手札が削れれば……! ていうかお願い、それでなんとかなって!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN04→05

ケットウリュウ

T:閃こう竜スターダスト ATK3500/DEF2000(攻撃表示 レベル7扱い アームズ・エイド装備によりATK+1000)
U:アームズ・エイド ATK1800/DEF1200(閃こう竜スターダストに装備中)

墓地×8(チューニング・サポーター×1 ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1
ダンディライオン×1 レベル・スティーラー×1 スポーア×1)
除外×0
□■U□□13 手札×2→3 デッキ総数×29→28(セットカード×1)
□□T□□ □ LP:2600(セットモンスター×0)

□ □A@B□ LP:4000(セットモンスター×0)
14□□■□□ 手札×3 デッキ総数×31(セットカード×1)
墓地×3 除外×0

@:魔法鉄騎士レンゲル・コマンド ATK1500/DEF3000(守備表示)
A:E・HEROネオス ATK2500/DEF2000(攻撃表示)
B:E・HEROエアーマン ATK1800/DEF300(攻撃表示)

恭文


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「――ではメインフェイズ1はなにもせず、アタックフェイズ! 閃こう竜よ」


閃こう竜が軽く浮かび上がり、ケットウリュウの指し示す方――E・HEROエアーマンを指差す。


「E・HEROエアーマンへ攻撃!」


巨大な拳を振りかぶり、ケットウリュウが僕の場へ舞い降りる。そして拳を振りかぶり、一気に打ち下ろす。

エアーマンは抵抗もできずその鉄ついに潰され、爆散。その衝撃が僕まで襲い、つい身構える。

でもそれはただの衝撃じゃなかった。体の肉を、骨を、内包する魂を引き裂かんばかりの圧力。


ガードに回した腕や踏ん張る足の外側が軽く切れ、同時に焼かれるような痛みも加わってくる。

それに耐え切れず吹き飛ばされ、地面を派手に滑って倒れ込んでしまう。そうしてせき込むと、口から血が漏れた。


「……恭文!」

「だい、じょうぶ」


そういう事かと納得しつつ、起き上がって笑う。1700のダメージ……こりゃキツいなぁ。

そうだよね、ここはこういう場だ。しかも相手にしているのはスターダストだ。でも、おかげでスイッチが入った。


「ふん、よく立ち上がれたな!」

「てめぇ、なにしやがった!」

「昨日貴様らが味わったのと同じ……いいや、それ以上の痛みが襲っただけの事! つまり」


ケットウリュウは勝ち誇りながら僕を指差す。すると閃こう竜はアームズ・エイドを振りかぶり、そこに薄緑色の力を凝縮――光の拳と化す。


「貴様は負ければ、カードを失うだけではすまん! 死ぬという事だ!」

「なん……だとぉ!」

「当然だろう! 術者であるオレの命も賭けている! デュエルの重さはそれと比例しているのだ!
ふはははははははははは! どうだ、怖いだろう! 後悔しているだろう! 嘆け、怯えろ!
その恐怖も三途(さんず)の川を増やす糧となる! さぁ、それではアームズ・エイドの効果を発動だ!」

「アカン……そんなんアカン! やめて!」

「アームズ・エイドを装備したモンスターが、モンスターを戦闘破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの」


こっちへ走り、ことはさんが攻撃を止めようとする。でもその瞬間、突如発生した見えない衝撃でことはさんが吹き飛ばされる。

そして倒れることはさんをあむ達が慌てて受け止めた。なるほど、邪魔する意図で介入してもこれか。


「ことはちゃん! おい、しっかりしろ! くそ……!」

「元々の攻撃力分、相手ライフにダメージを与える! 追加で1800のダメージ……さぁ、今度は腕が吹き飛ぶかな!?」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


そして拳が打ち下ろされる。迫る巨大な拳……逃げる事は当然許されない。だから、僕は笑ってしまう。


「……それはどうかな」


拳が閃こう竜とともに迫る中、レンゲル・コマンドが前に出てかばってくれる。それだけじゃなくロッドをかざし、鏡状のシールドを展開。

それで拳を受け止め、拳に込められた力は全てシールドに受け止められ、アームズ・エイドから輝きが失われる。


「この瞬間、レンゲル・コマンドの効果発動! このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り」


戸惑う閃こう竜、それを映す鏡から光が生まれる。それは閃こう竜が先ほど、僕にぶつけようとした光そのまま。

光が、姿が鏡で跳ね返るように、力も奔流として撃ち出される。それは閃こう竜を飲み込み、一気にケットウリュウへ迫る。


「相手カードの効果によって発生する、自分への効果ダメージは代わりに相手が受ける!」

≪……つまりあなたが受けるんですよ、1800のダメージは≫


そして衝撃はケットウリュウを飲み込み、炎と衝撃の蹂躙を起こす。

地面にクレーターすら作り、それを受けたケットウリュウが悲鳴を上げながら空へ吹き飛ぶ。

そしてケットウリュウは着地する事もできず、右肩から墜落。ボロボロになりながら、地面に倒れて呻き始める。


「き、さまぁ……!」

「ネオスに攻撃しなかったのは褒めてあげるよ。でも……僕が嘆き恐怖する? 馬鹿言うな」


痛む体、流れる血――でも笑って、全部を楽しむ。心を沸き立たせて、この『遊び』を全力で楽しむ。

そのために笑う。笑って、ふらつきながらも立ち上がる奴を見下す。


「僕は絶望なんてしない。さぁデュエルを続けようか、ケットウリュウ――まだお前のターンだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


もう駄目かと思ったら、レンゲル・コマンドの効果でアイツは反撃……って、アレミラーじゃん!

姿だけじゃなくて、効果まで似てたんだ! でも表側表示で存在する限り……だよね! これならいける!


「恭文くん……無事、なん?」

「あぁ! しかもアームズ・エイドにとっては、あのカードは相性最悪だぜ!
ライフがなくならないよう、チャンプアタックするだけでも相手を追い込める!」

「そっか……だから恭文、さっきのターンでネオスを攻撃させたんだ! 仮に伏せカードが動かず、そのまま破壊されれば2500のダメージじゃん!」

「そこまで考えての攻撃だったんだ。そりゃ、真似できないわ。……でも恭文くん、なんか楽しそうじゃない?」


確かに……みんな、怪訝そうに恭文を見ていた。スイッチ入っちゃったかー、そりゃ初見はびっくりするって。


「この状況で怯えも見せず、まだ踏み込むというのか。なんだ、あのたん力は」

「……アイツはああいう奴だから。今だって冒険を楽しんでる」

「冒険、だと」

「遊星さんのデッキを、スターダストを取り返す。それでアイツにもう誰も傷つけさせない――そういう冒険」


心配して損したし。だから楽しんでる、命を賭ける危険も、強い相手に追い込まれる状況も、全部ひっくるめて楽しむ。うん、恭文は大丈夫だ。

それにケットウリュウを追い込めたのも事実。これなら……でもそこで、ケットウリュウが笑っている事に気づく。


「メインフェイズ、2――! いいぞ、ただの子どもかと思っていたら……それでこそへし折り甲斐がある」


龍の目を開き、前のめりになりながら……アイツも楽しんでいた。この状況を――恭文と対じしている瞬間を。


「そう。だったら手本としてお前がへし折れろ」

「それでお前はついてこないのだろう?」

「当然でしょ。勝つのは、僕だ」

「いいや、このオレだぁ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN05メインフェイズ2開始時

ケットウリュウ

T:閃こう竜スターダスト ATK3500/DEF2000(攻撃表示 レベル7扱い アームズ・エイド装備によりATK+1000)
U:アームズ・エイド ATK1800/DEF1200(閃こう竜スターダストに装備中)

墓地×8(チューニング・サポーター×1 ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1
ダンディライオン×1 レベル・スティーラー×1 スポーア×1)
除外×0
□■U□□13 手札×2 デッキ総数×28(セットカード×1)
□□T□□ □ LP:800(セットモンスター×0)

□ □A@□□ LP:2300(セットモンスター×0)
14□□■□□ 手札×3 デッキ総数×31(セットカード×1)
墓地×4(E・HEROエアーマン×1) 除外×0

@:魔法鉄騎士レンゲル・コマンド ATK1500/DEF3000(守備表示)
A:E・HEROネオス ATK2500/DEF2000(攻撃表示)

恭文


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「では見せてやろう! 不動遊星のコピーでも、スターダストの亜種でもない――オレ自身を! カードオープン」


展開する罠カードには、手術着を着たモンスター達が描かれている。それはライトの下、もがくモンスターにオペを施そうとしていた。

絵柄からは命を助ける雰囲気など一かけらもない。あるのはそれをもてあそぶ悪魔の意思。これは。


「永続罠【DNA移植手術】を発動! 発動時に一種類の属性を宣言……オレは闇属性を発動!」


カードから流れる黒いオーラ。それが僕達の足回りへ広がり、ネオスとレンゲル・コマンドが苦しみ膝をつく。

そして閃こう竜も……くそ、属性の変更によるコマンド・チェンジと融合、オネスト封じか! デッキ内容も分からないのによくやる!


「これによりネオスとレンゲル・コマンド、閃こう竜スターダストは闇属性となる!」

「一つ聞かせろ。さっきのアタック、使っていればオネストのリスクはより減らせた。使わなかったのは」

「馬鹿を言うな! オネストのためだけにこんなカードを入れていると!? これは切り札だ、デュエリスト!
閃こう竜スターダストを対象に、レベル・スティーラーの効果を発動! 閃こう竜をレベル6とし、墓地より守備表示で特殊召喚する!」


やっぱりシンクロか。リング状のゲートが生まれ、そこからレベル・スティーラーが飛び出し着地……仕草は可愛いのにー。


「マジックカード、死者蘇生を発動! 墓地のチューニング・サポーターを守備表示で特殊召喚!」


続けて出てきたのはチューニング・サポーター……でもチューナーはいない。そんな中、決闘竜は一枚の魔法カードを場に出す。


「そこで速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動! 相手フィールド上に表側表示が存在!
更に自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター一体が、特殊召喚に成功した時発動できる!
その時召喚したモンスター――今回はチューニング・サポーターを手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する!」


そしてデッキから二枚のカードが飛び出す。それをキャッチし、ケットウリュウはチューニング・サポーター二体を同時召喚。

なおチューニング・サポーターは攻撃力100だから……でも【こっち】はそうもいかない。


「相手は相手自身のフィールド上に、表側で表示するモンスター一体を選択! 同じ条件で全て特殊召喚できる!」

「……二体目のネオスを選択、攻撃表示でデッキから召喚する」


ネオスが二枚あってよかった。ネオスをデッキから取り出し、場に特殊召喚。ネオスが並び立つという凄い状況となる。

普通なら胸が沸き立つんだけど、今は疑問ばっかり。どういう事なの? 奴の場にチューナーはいない。これじゃあシンクロは。


”なにぃ! おい恭文、レンゲル・コマンドは出せるだろ!”


そこで不可思議空間のヒカリが、慌てた様子でツッコんでくる。その声に顔をしかめながらも首振り。


”駄目。このカード、エクストラデッキは対象にしてないんだよ”

”……レンゲル・コマンドはエクストラデッキから特殊召喚したカード。だから出せないと”

”そういう事”

「ではいくぞ! レベル1:レベル・スティーラーとチューニング・サポーター三体に」


ケットウリュウは笑いながらシンクロ召喚の構え。でも……


「レベル6扱いの閃こう竜スターダストをチューニング!」

「――スターダスト、だと! 馬鹿な、それじゃあ!」

≪ま、まさかその閃こう竜は……チューナーなシンクロモンスターだったの!?≫

「その通り! そしてオレの魂を呼び出すには、闇属性チューナーでなくてはいけないのだよ!」


そうか、だからあんなカードを……ここまでやって呼び出せる切り札、それが今からくるってのか!


≪合計レベルは10――!≫

「地を這いし億万の蛆虫(うじむし)よ! その身をやつし天を埋めよ――全ての世界は、我らの掌中にあり!」


飛び上がる四体のモンスター達。そして閃こう竜は光の輪となり、それらを繋ぐ導となる。

でもその色は禍々しく、血の気が凍るほどのプレッシャーにあふれていた。そして、黒き極光は走る。


「シンクロ召喚!」


その時青かった空は真っ黒に染まり、雷鳴が響く。世界がほの暗い混沌へ飲み込まれたような……そんな圧力。

そして雲を割り、巨大な龍が姿を現す。全長にして百メートルにも及ぶ、とてつもなく……街一つを覆い隠すほどの巨体。

黒い尾に、ハエを思わせるような巨大な目。鋭い牙が生える頭部の脇にはふとましい両腕。


更に後ろから小型の龍二体が生えていた。べエルゼ……ベルゼ、バブ? なに、これは……!


「君臨せよ――最強の決闘竜! 魔王超龍べエルゼウス!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


地獄の暴走召喚

速攻魔法

相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に
攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。

その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から
全て攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、
そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


魔王超龍べエルゼウス(原作版)

シンクロ・効果モンスター

星10/闇属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードは戦闘・効果では破壊されない。

(2):1ターンに1度、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を0にし、
その元々の攻撃力分だけ自分はLPを回復する。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「攻撃力、防御力ともに4000!?」

「では効果処理の説明だ! まずアームズ・エイドは閃こう竜が素材となったため、墓地へ送られている!
そしてチューニング・サポーターがシンクロ召喚に使用され、墓地へ送られたのでデッキから【三枚】ドロー!」


チューニング・サポーター、三体いたからね。効果は重複する……だからケットウリュウはドローし、手札を三枚へ戻す。


「そうそう、このカードは戦闘・効果で破壊されないぞ」

「なに……!」

「更に魔王超龍べエルゼウスの効果発動! 一体目のネオスを選択し、その力を奪わせてもらおう!」


そしてべエルゼウスが鈍く咆哮――それだけで大地が揺れ、辺りの気温が一気に下がる。

その煽りを受け、ネオスが両膝を付いて蹲る。同時にその脇にウィンドウ展開……攻撃力が、いきなりゼロになった!?


「一ターンに一度、相手フィールド上のモンスター一体を対象として効果発動。
そのモンスターの攻撃力をゼロにし、元々の攻撃力分自分はライフを回復する」


ネオスの攻撃力を吸い取ったのか。そしてケットウリュウは傷を癒やし、心地よさそうに首を回す。


「では再びレベル・スティーラーの効果を発動。べエルゼウスをレベル9とし、場に守備表示で特殊召喚する」


ち、用心深い! そして過労死同盟へ仲間入りなスティーラーは、軽く疲れた感じで震えながら再登場。


「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


なんなの、あの超常現象……! みんな、あのべエルゼウスってデカブツにあ然としていた。

場の流れを掴んだと思ったら、一気に引き戻された。しかもアームズ・エイドまで処分されちゃってるから、もう同じ手は使えない。


「戦闘・効果破壊されない、攻守4000のモンスターだと!? とんだチートじゃねぇか!」

「くそ……! やべぇぞやべぇぞ! 閃こう竜だけでも相当ダメージがあったんだぞ! あんな奴の攻撃、まともに食らったら!」

「恭文……!」


慌てる千明さんと源太さん……そして、あたしはもう祈る事しかできない。

デュエル中は邪魔もできないんだ、あとはアイツがいつも通り性格悪く勝つのを祈るしかない。


「……ジタバタするな!」


そこで一喝――今にも泣きそうなことはさんや、頭をかきむしっていた茉子さんがハッとする。

声を上げたのは流ノ介さん。決して揺らがず、仁王立ちで恭文を見ていた。


「我々がたじろいでどうする! 腹を括って見届ける事すらしないつもりか、お前達は!」

「流ノ介、アンタ」

「そうそう」


そこであたしの右側から声。そっちを見ると、赤いジャケットを着て、バックを背負った……十代さん!?


「ここはちゃんと見守ってやろうぜ。大丈夫、恭文は諦めてなんてない」

「……お前は誰だぁ!?」

「「じゅ、十代さん!」」


つい遊星さんと驚いて叫んじゃう。……あれ、という事は遊星さんが呼んだんじゃない!?
慌てて見上げると、遊星さんは察したらしく首を振ってきた。


「十代……あ、まさかネオスのオリジナルを持っているっていう、遊城十代かよ!」

「えぇ! じゃ、じゃあこの子ってあの凄いって言われてるデュエリストの!? でもあたしより年下じゃ!」

「あ、初めまして」


気づいた源太さんや驚くみんなに、十代さんは気軽に挨拶……なんか空気読めてない!


「でも遊星、お前またスターダスト盗られてんのか。しっかりしろよー」

「すみません。ですが十代さんはどうしてここに」

「いや、変な気配を感じたから駆けつけてみれば……アイツ、マジでなにやってんだ」

「あの、そこを話すとめちゃくちゃ時間が……まぁ、また面倒事に首を突っ込んだとだけ」

「なるほどねぇ。で、なんであのデカブツからスターダストの気配がしてるんだ」


なんか気づいてる!? そう言えばこの人、精霊的なのがついてるんだっけ!

めっちゃ顔険しくなってるし! というかさっき、平然とスターダストを盗られたって言ってたし!


「あのあの、スターダストもあのケットウリュウって怪物に盗まれたんだよー! しかもデッキごと!」

「それを使って悪さしようとしてたから、怪物――アヤカシに詳しいこの人達と協力して追いかけたら」

「スターダストが閃こう竜って別のシンクロチューナーになっててぇ! それがシンクロしたらアレなんですぅ!」

「……ラン達の言う通りなんだけど、分かってくれたかしら」

「あぁ、すっごい分かりやすい説明だったぜ。で、どうやって勝つんだ?」

「あたし達がそれを聞きたいんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


どうする……どうするどうする! 戦闘・効果破壊はされない、攻撃力4000を超えた上でライフを削らなきゃいけない!

でももたもたもしていられない! 向こうは墓地にシンクロ素材がたっぷりで、手札もきっちり揃ってる!

次のターンでシンクロされて、総攻撃なんてされたらこっちのライフも……! もちろん対策はデッキにある。


元々はスターダストとデッキを取り戻すためのデュエルだ。破壊耐性持ちなスターダストを相手にするため、手は考えた。

さすがにこれは予想外だけど……でもまだ引けていない。なにか、なにか他に手は。

それを待ってジリ貧になって、失敗しましたじゃ話にならない。策は二つ三つと打たないと。


”……ちょっと待て! 恭文、あのカードが使えるんじゃないのか!”


考えをまとめていると、ヒカリが不可思議空間からまた大きな声を出す。あのカード? 一体なんの事。


”ほら、お前が入れていた気持ち悪いカードだ! 使えるかもと言ってただろ!”


だろうと思ったら、そこで気付かされる……あれか! そうだそうだ、地獄の暴走召喚で条件は整ってるじゃないのさ!

僕とした事が、べエルゼウスの圧力ですっ飛ばしてた! あれもスターダストを取り戻すための鍵!

あとは邪魔さえされなければ、一気に逆転できる! よっし……やってやる!


”ヒカリ、ナイス!”

”お姉様もたまには役に立つんですね”

”シオンがひどいぞ! 私がなにをした!”

”覚えがあるでしょ、おのれ!”


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN05→06

ケットウリュウ

T:魔王超龍べエルゼウス ATK4000/DEF4000(攻撃表示 レベル9扱い)
U:レベル・スティーラー ATK600/DEF0(守備表示)

A:DNA移植手術(永続罠 効果により表側表示のモンスターは全て闇属性として扱う)

墓地×15(ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1 ダンディライオン×1 スポーア×1
死者蘇生×1 閃こう竜スターダスト×1 アームズ・エイド×1 チューニング・サポーター×3)
除外×0
□A■□□12 手札×2 デッキ総数×23(セットカード×1)
□UT□□ □ LP:3300(セットモンスター×0)

□ □A@B□ LP:2300(セットモンスター×0)
14□□■□□ 手札×3→4 デッキ総数×30→29(セットカード×1)
墓地×4(E・HEROエアーマン×1) 除外×0

@:魔法鉄騎士レンゲル・コマンド ATK1500/DEF3000(守備表示)
A:E・HEROネオス ATK0/DEF2000(攻撃表示 べエルゼウスの効果により攻撃力0)
B:E・HEROネオス ATK2500/DEF2000(攻撃表示)

恭文


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


既に場はライフなど関係なくなっている。いかにアドを取り、一撃を決めるか……これはそういう勝負だ。

だからこそケットウリュウはひとつ、致命的なミスを犯した。あとはそれで戦況を覆せるかどうか……!


「僕のターン――ドロー!」


手札を四枚とし、早速手を打つ。深呼吸し、あのデカブツを見上げる。


「べエルゼウス……デカくて強くて、いいカードだねぇ」

「感謝しておこうか! べエルゼウスはこのケットウリュウそのもの! そしてこの世を三途(さんず)の川で満たす切り札だ!
もはや剣で切った張ったなど古い! この力でドウコク様を、あの世のアヤカシども全てを見返してくれよう!」

「なに、見下されてんの?」

「……あの世というのにも階級があってな。戦いの苦手なアヤカシなど、問題外というやつだ」

「そう……だったら泣きっ面に蜂だねぇ。それ、僕が奪うから」

「は? 貴様、なにを」


ケットウリュウは馬鹿にする視線を向けてくるけど、僕が本気だと知って言葉が止まる。では、始めようか。


「メインフェイズ1! 僕はレベル7:E・HEROネオス二体でオーバーレイネットワークを構築!」

「オーバーレイ……だとぉ!」


ネオス二体は互いの腕をクロスさせ、場に生まれた渦巻く銀河へと飛び込む。

未知の宇宙――そこに存在するのは、無限の可能性。だから触れよう、だから開けよう。

この状況を打開するにふさわしい、希望を呼びこむため。さぁ……こい!


「エクシーズ召喚! 現れよ、ランク7!」


エクストラデッキよりカードを取り出し、ネオス二枚と重ね置く。その瞬間、宇宙が収束し爆発。

広がる星々の輝きから、十メートルほどの逆三角すいが現れる。そのシンプルな異形にケットウリュウがたじろぐ。

黄色い一つ目を輝かせ、ネオスが元となったORUを周囲で回転させていた。


「No.(ナンバーズ)11ビッグ・アイ!」

「エクシーズ召喚……貴様、融合だけでなくそんなものまで!」

「人は進化するものなんだよ、ケットウリュウ! 僕はビッグ・アイのORUを一つ使い、効果発動!」


右手を巨大なべエルゼウスへかざすと、ビッグ・アイの周囲で瞬くORU一個が弾けて消失。

更に墓地へネオスのカードを送っておく。するとビッグ・アイは目を見開き、幻惑の光をべエルゼウスに放つ。


「相手フィールド上のモンスター一体――べエルゼウスを選択し、そのコントロールを得る!」

「……なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「破壊はされない、だったよねぇ。でもそれ以外なら問題はないでしょ! さぁ、付き従え――最強の決闘竜!」


そしてべエルゼウスのカードは、こちらにソリッドビジョンとして表示。コントロールはしっかりと確保する。

おっし……! なんかめっちゃプレッシャーきてるけど、問題なく耐えられる! コナミさん、ありがとー!


「きさ……貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 本当に侍どもの仲間か! やってる事が外道だろうがぁ!」

「まだ仲間じゃない! ご飯をごちそうになっただけだ! ……僕はE・HEROオーシャンを召喚!」


オーシャンを通常・攻撃表示で召喚。さて……伏せカードも開いてもらおうかな!


「このままバトルフェイズ! ビッグ・アイは効果を発動したターン、攻撃できないけど……オーシャン!」


戸惑いうろちょろするレベル・スティーラーを指差し。


「レベル・スティーラーへ攻撃!」


オーシャンが大きく跳躍し、逆手に持ったトライデントでレベル・スティーラーを串刺し……爆散させる。


「続けてべエルゼウス、ダイレクトアタック!」

「できるわけがなかろう! べエルゼウスは我が魂! 人間にアヤカシの魂を使役する事など」


そして魔王は咆哮――その目に禍々しい虹色を宿していく。それを見てケットウリュウが舌打ち。


「ちぃ……カードオープン!」


光は放たれ、いん石の衝突を思わせるような爆発となり、ケットウリュウもまた吹き飛ばしてしまう。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


吹き飛び、地面を転がりながらも奴はすぐ起き上がる。そうして生まれた爆煙を払い、こちらに怒りの形相を向けてくる。


「貴様ぁ……! 我が魂を受け入れ、使役しただと! 馬鹿な、あり得ん!」

「ちょっとなに言ってるか分からないわ。で、なにを発動したの」

「攻撃の無力化……! これで貴様のバトルフェイズは終了だ!」


攻撃の無力化? それならレベル・スティーラーを守れたはずなのに……なるほど、そういう事か。ならこちらも布石を打つ。


「カードを一枚伏せ、ターンエンドだよ」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


No.11ビッグ・アイ

エクシーズ・効果モンスター(制限カード)

ランク7/闇属性/魔法使い族/攻2600/守2000

レベル7モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、
相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターのコントロールを得る。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN06→07

ケットウリュウ

A:DNA移植手術(永続罠 効果により表側表示のモンスターは全て闇属性として扱う)

墓地×17(ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1 ダンディライオン×1 スポーア×1
死者蘇生×1 閃こう竜スターダスト×1 アームズ・エイド×1 レベル・スティーラー×1 チューニング・サポーター×3)
除外×0
□A□□□12 手札×2→3 デッキ総数×23→22(セットカード×0)
□□□□□ □ LP:3300(セットモンスター×0)


□ CA@B□ LP:2300(セットモンスター×0)
13□■■□□ 手札×2 デッキ総数×29(セットカード×2)
墓地×5(E・HEROエアーマン×1 E・HEROネオス×1) 除外×0

@:魔法鉄騎士レンゲル・コマンド ATK1500/DEF3000(守備表示)
A:No.11ビッグ・アイ ATK2600/DEF2000(攻撃表示 ORU:E・HEROネオス×1)
B:魔王超龍べエルゼウス ATK4000/DEF4000(攻撃表示 レベル9扱い)
C:E・HEROオーシャン ATK1500/DEF1200(攻撃表示)

恭文


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ア、アイツやっぱやらかしたし……! 真正面から打破じゃなくて、奪い取るって!

ていうか魔王を使役!? アンタどこの大魔王かな! この構図だけ見たらアンタの方が悪人じゃん!


「……流ノ介の言う通りね。心配してたのが、馬鹿らしくなったわ」

「でもこれやとその、恭文くんがアヤカシみたいな……ほら、ビッグ・アイってのもアヤカシっぽいし」

「流ノ介、なにかコメントを」

「私に聞くなぁ!」


流ノ介、なんかごめんー! で、でも場は有利じゃん! べエルゼウスは確保したし、場はがら空き!

手札もあるのが気になるけど、また恭文が有利になった! これなら……!


「オレのターン……ドロー! そのままメインフェイズへ入り、通常魔法【シンクロキャンセル】を発動!」


シンクロキャンセル?  場に出た魔法カードは、蒼い渦にいっぱいの星が描かれた……ファンタジーな姿だった。


「フィールド上に表側表示で存在する、シンクロモンスター一体を選択! エクストラデッキへ戻す!
更にエクストラデッキに戻した、そのモンスターのシンクロ召喚に使用した素材一組が墓地に揃っていれば」


そこで恭文に使役されているべエルゼウスが苦しみだし、弾けて消し飛ぶ。

いきなり空に青さが戻って混乱していると、墓地から合計五枚のカードが飛び出た。


「その一組を自分フィールド上に特殊召喚できる! さぁ、今一度現われろ!
閃こう竜スターダスト、レベル・スティーラー、チューニング・サポーター三体! 守備表示で召喚!」

「な……! 遊星さん、あれなに! 恭文の場にいたよね、べエルゼウス!」

「問題ない。あれは【自分フィールド上】と指定がないからな」

「それで、べエルゼウスを取り戻した……!? しかも素材一式が揃ったって事は」

「オレはレベル2:チューニング・サポーター二体をレベル8:閃こう竜スターダストでチューニング――シンクロ召喚! さぁ、今一度現れよ!」


そしてまた絶望が空を覆う。さっきまで得ていた安心感も全て吹き飛ばす、圧倒的な黒――そして混沌。

恭文みたいに超直感なんてない、あたしでも分かる。あれはマジで、地獄とかからやってきた悪魔だ。


「魔王超龍べエルゼウス――我が魂よ、よくぞ戻ってきた!」

「あれ……モンスターを揃えて、またシンクロしたんよな。という事は」

「ではチューニング・サポーターの効果発動! 効果により、デッキから二枚ドロー!」


手札まで増やしてきたし! アイツ、どんだけドローすれば気が済むわけ!? あり得ないじゃん!


「ではべエルゼウスの効果発動! 今回はビッグ・アイを選択し、攻撃力0とする!
そしてその攻撃力分、オレのライフを回復! 2600の回復効果だぁ!」


そしてハエの目が輝き、アイツの傷がどんどん癒えていく。ううん、もっともっと強くなって……!


「ライフ……5900だと」

「で、でもまだORUはあるし、次のターンになれば恭文くんかて」

「そう思うだろう? そこであの手札だよ。……あれが遊星のデッキってのがまた問題だ。ビッグ・アイの効果を封じるカードくらいはあるはずだ」

「えぇ。あれだけのドローを許したのは痛すぎる、しかもライフ差までつけられているとなると……くそ、もっと早く到着していれば」

「そんな……あれ?」

「どうしたの、ことは」

「なんか恭文くん、笑ってる」


そりゃあ冒険して……違う。恭文の笑いは、薄い歪みはこれまでとは質が違う。

見ているとゾクってするほどの殺気……それを感じて、ことはさんが身を震わせた。


「ここまでとはね」

「それはこちらの台詞だ。目的のためデュエルを利用している身だが、貴様とのデュエルはなかなかに楽しめた」

「僕もだよ。お前、外道だけど強いじゃないのさ」

「嬉しい事を言ってくれる――! 認めてくれるのか! この俺の強さを! ならばこの一撃で絶望を返そう!
その心がへし折れれば、三途(さんず)の川もより増えよう! ではバトルフェイズ、べエルゼウスでビッグ・アイに攻撃!」

「ここまで……予想通りとはねぇ!」


そして目を見開き、その笑いを全開にする。そして恭文は右手を、さっき伏せたカードにかざし。


「攻撃宣言時、カードオープン!」


展開する……なに、あれ。キラキラな光がこう、集まって一つになろうとしている絵柄だ。

見た事がないカードなので首を傾げると、十代さんが笑って右指を鳴らす。


「やっぱ入れてたか!」

「速攻魔法、超融合――! 手札一枚を捨て効果発動。自分・相手フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた素材を墓地へ送る。
僕が選択するのはドラゴン族:魔王超龍べエルゼウス、そして戦士族:E・HEROオーシャン」

「なにぃ! く……!」

「無駄だよ。超融合の発動に対して、あらゆる効果は発動できない。当然チェーンも組めない」


なんという強力カード……! だからケットウリュウもカードを、魂を自分から手に取ってディスクから外す。


「あれ、恭文くん……いつあのおっきいのの種族を」

「さっきディスクに、カード情報が出た時だよ。そして【墓地へ送る】ので、べエルゼウスの破壊耐性はスルーできる」


十代さんの説明通り、カードが二枚墓地に送られ……空はまた元の青さを取り戻した。

あれ、でも速攻魔法? それならシンクロされる前に……あ、素材があったからか!

それにバトルフェイズ前だ! だからアイツ、ドローには目をつぶってこのタイミングにしたの!?


「貴様……最初からべエルゼウスが狙いだったのか! そのためにドローを、ライフ回復を見過ごすだと! あり得ん!」

「それはどうかな。……そしてその融合モンスターを、融合召喚扱いで特殊召喚する!」


空の中もがくべエルゼウス、それに光となって突撃するオーシャン。そして恭文を痛めつけるように、黒い雷撃が降り注ぐ。


「恭文!」


声を上げてもなにもできない。ただ雷撃に撃ち抜かれるだけ……いや、恭文はそんな中でやっぱり笑っていた。

そうして気合いの雄たけびで雷撃を、特殊な力であろうそれを簡単に打ち払う。


「抵抗するなよ――生まれ変われ、魔王超龍べエルゼウス!」

「やめ、ろ……! 壊れる……オレの、魂が」

「E・HEROオーシャンと超融合!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


恭文はエクストラスロットから青いカードを取り出し、それで円を描く。その軌道に光が生まれ、それが波動となって周囲に広がる。

未だ足元で生まれ続ける闇も一瞬で払われ、光となったオーシャンはべエルゼウスにトライデントを突き立て……そのまま一つとなる。


「龍とHERO、新たな極地で絆を繋ぐ!」


そして恭文はカードを放り投げ、両手の中へ収める。手と手の間で制ししたカードも光となり。


「光差す導となれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


かめはめ波みたいに撃ち出され、空でもがき続ける光と衝突。そしてこの場を……ううん、この街そのものを照らしだす極光が生まれる。


「わぁ……あむちゃん、見てー!」

「また、空に青が戻った」

「恭文さんの色ですぅ」

「うん……そうか、べエルゼウスはアイツの色も塗り潰していたんだ。でも」

「恭文君が――あの子が、そんな事を許すはずもないわ」


だからそれは舞い降りる。恭文の魔力光と同じ青――そんな色の甲ちゅうをまとった、十五メートルほどはある竜の戦士が。

白銀の突撃槍を右肩に担ぎ、流線型の鎧が空の青でより強く輝く。ケットウリュウは空から舞い降りるそれを眩しそうに見上げた。

頭部や膝、しっぽから生えているオレンジ色の角がアクセントとなり、それは蒼の翼を広げる。


「超融合召喚――世界を浄化せよ! 波動竜騎士ドラゴエクィテス!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


※TURN07バトルフェイズ中

ケットウリュウ

T:チューニング・サポーター ATK100/DEF300(守備表示)
U:レベル・スティーラー ATK600/DEF0(守備表示)

A:DNA移植手術(永続罠 効果により表側表示のモンスターは全て闇属性として扱う)

墓地×18(ジャンク・シンクロン×1 ドッペル・ウォリアー×1 ダンディライオン×1 スポーア×1
死者蘇生×1 閃こう竜スターダスト×1 アームズ・エイド×1 チューニング・サポーター×2 魔王超龍べエルゼウス×1)
除外×0
□A□□□12 手札×4 デッキ総数×20(セットカード×0)
□T□U□ □ LP:5900(セットモンスター×0)


□ BA@□□ LP:2300(セットモンスター×0)
12□□■□□ 手札×1 デッキ総数×29(セットカード×1)
墓地×8(E・HEROエアーマン×1 E・HEROネオス×1 E・HEROオーシャン×1) 除外×0

@:魔法鉄騎士レンゲル・コマンド ATK1500/DEF3000(守備表示)
A:No.11ビッグ・アイ ATK0/DEF2000(攻撃表示 ORU:E・HEROネオス×1 べエルゼウスの効果により攻撃力0)
B:波動竜騎士ドラゴエクィテス ATK3200/DEF2000(攻撃表示)

恭文


(第59話へ続く)






あとがき


恭文「というわけで二〇一四年十一月十日に七百八十万Hit達成。その記念となるとまかの第五十八話です。お相手は蒼凪恭文と」

フェイト「フェイト・T・蒼凪です。……ケットウリュウが強い」

恭文「閃こう竜もだけど、魔王超龍も原作効果だしね。OCG効果みたいなデメリットないから」


(そして始まる魔王超龍の取り合い……この関係でちょっと時間がかかりました)


恭文「そして劇中で使ったバックアップ・コマンドは、壬黎ハルキ様から頂いたアイディアとなっております」


(ハルキ様、アイディアありがとうございました)


恭文「まぁデュエルは見てもらった通り、まだまだ続きます。そのためにケットウリュウもフルパワー」

フェイト「手札たくさんだし……ヤスフミ、これ勝てるの!?」

恭文「大丈夫、バンテリンあるよ」

フェイト「なにそれー!」


(そして大活躍なレンゲル・コマンド。
『スゥがふんわり優しく守りますよぉ』)


恭文「そして一部店舗では既に品入りされ、クロスボーン・ガンダムX1(HGUC)が販売開始。
もちろんビルドファイターズトライで活躍した、Ez-SRも販売していますよー。作者はアマゾンだから……月曜日」

フェイト「だから新発売なら買いに行った方がって言ったのに」


(だって、予約で確実に……そんなわけで既にレビューしているサイトさんもあるようです。興味のある方は検索してみてください)


恭文「出来はかなりいいっぽいよねー。安心したよ。ただフェイスオープン状態はF91みたいに手軽な交換ってわけには」

フェイト「あ、構造上組み直さないと駄目っぽいんだっけ」

恭文「大丈夫、作者は二個買いしてるから。……というかね、出てくれた事そのものがありがたいわけですよ。
オールガンダムプロジェクトが始まるまで、十五メートル級MSのHGは夢のよう」


(蒼い古き鉄、ちょっと遠い目)


恭文「この調子でX0も出そう! ……ただ当分先になるだろうから、今はなんちゃって改造で」

フェイト「どうするの?」

恭文「魔王のソード&ガンを持たせ、バックパックも魔王のアームユニットを挟んで装備……そうして世界戦用のガンプラが完成」

フェイト「お手軽すぎない!?」


(最初は簡単でいいんです。あ、でもプラ板はあるし、角だけゴーストっぽくしてもよさそうだなぁ。
本日のED:Zwei『約束のオーグメント』)


空海「Ez-SR、本編での敗北は残念だが……カッコよかったな!」

恭文「だねぇ。というか……前作の二人うえだゆうじさんと比べるのは酷すぎる。あれはほら、世界レベルだから」

空海「中の人で言うなよ! ……え、俺比べてたっけ」

恭文「フェイトとアブソル達が。中高生大会と世界レベルを比べちゃ駄目だって」

空海「あー、納得した。でももったいないよなぁ、Ez-SRは早速買ってきて作ってるんだが、めちゃくちゃカッコいいんだよ」

恭文「一発屋で終わるには惜しすぎる機体だよねぇ。でもそんな余韻も吹き飛ばす次回予告……素組みって」

空海「どうなるんだよ、次回」


(おしまい)






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