[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
幕間そのきゅう 『生きていると、やるせないと思うこともある 生きていると、色々考えて色々思うこともある 再び異国の地へ・・・編』:1



古鉄≪さて、再びな海外ロケです。どうも、私古き鉄・アルトアイゼンです≫

はやて「どうも、八神はやてです。・・・さて、今回はどこ行くんや?」

古鉄≪今回は幕間そのよんから続いた海鳴で暮らし始めてからの話の最終章・・・な、はずです≫

はやて「また自分自信無さげやなっ!!」

古鉄≪あ、やっぱり違いますね。全然最終章じゃないです≫

はやて「なんでそないなるんやっ!?」

古鉄≪しょうがないじゃないですか。さざなみ寮のお話構築中なんですし≫

はやて「・・・あぁ、納得したわ」

古鉄≪しかも、難航してます。参考のために当然本編をやっているんですが、何回やってもリスティさんENDになるんですよ。仕方ないので作者、攻略HP参考にやってます≫

はやて「な、なんや色々大変なんやな・・・。えー、とにかく今回のお話は、ちょうどあのチビスケが海鳴で暮らし始めてから1年経った春。うちの家族も巻き込んで起きたある一件の話です。なお、今回もガチで海外ロケです」

古鉄≪いや、楽しみですね。あの人とかあの人とかも出ますし。さぁ、今回こそ私に出番をー!!≫

はやて「自分、やっぱ気にするとこはそこかっ!?」




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


幕間そのきゅう 『生きていると、やるせないと思うこともある 生きていると、色々考えて色々思うこともある 再び異国の地へ・・・編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・フィアッセさんへ、少しだけお久しぶりです。ツアーはどんな調子ですか? テレビでだけど、ちょくちょく様子見させてもらってます。メールでもそうだし、そういうの見ても元気そうで・・・安心してます。





僕の方は、なんとか元気してます。恭也さんと美由希さんと一緒に訓練したり、翠屋でバイトしたり。





海鳴に来てから、1年が経ちました。なんというか、非常に濃い1年で・・・とにかく、元気です。・・・って、こればっかりですね。





あ、それと最近恭也さんの紹介で、ある先生と知り合いました。多分・・・フィアッセさんも知ってると思うんですけど・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・初めまして、蒼凪・・・恭文君でいいかな?」

「あ、はい。初めまして」

「はい、初めまして。私はフィリス・矢沢です」



そう言ってお辞儀してきたのは、銀色の長い髪と柔らかな顔立ちをした小柄な女性。黒いシャツに黒いスカート。そして白い白衣に両手に黒いグローブ。えっと、恭也さん、この人が・・・。



「そうだ、俺達がお世話になっているフィリス・矢沢先生だ」



ここは海鳴にある総合病院。本日、恭也さんに連れられる形でここに来た。

で、何してるかと言うと・・・この人に会ってます。ここのお医者さんで、恭也さんや美由希さん、士郎さんの主治医とか。



「あ、気軽にフィリスって呼んでね。それで恭也さん、今日はまたどうしてこの子を?」

「あ、それは僕も聞きたいです。・・・どうして?」

「お前の身長が伸びないからだ。その年なら伸び盛りのはずなのに、1年経って1ミリの変化も無しはおかしいだろ」



い、言うなぁぁぁぁぁぁっ! 出会った頃はフェイトやなのはとギリ同じくらいだったのに、なんか最近抜かされてるけど言うなぁぁぁぁぁぁっ!!



「こちらのフィリスさんは整体のスペシャリストだ。少し身体を見てもらえ」

「なるほど・・・。あ、じゃあ恭文君は服を脱いで、ベッドに横になってくれる?」

「・・・恭也さん、ボケていいですか? いや、本能がボケろと叫んでるんですが」

「ボケていいぞ。ただし・・・瞬間その本能を斬るがな」

「じゃあ、素直に脱ぎます」





とにかく、服を脱いで(パンツは残す)横になる。そこにフィリスさんがぐにぐにと身体を触る。



け、結構力強く触るんだな。というか、あの細身でこんな力あるのか。・・・で、両膝を取って曲げたり伸ばしたり。腕や手首も同じく。

ある程度触って、手を放す。なので僕もフィリスさんの顔を見ると・・・あれ、なんでそんな神妙な面持ち?





「・・・ね、君もしかして・・・ここ1、2年くらいの間に大怪我したりしたことある?」

「へっ!?」

「それも、下手をすれば死ぬような怪我。身体中ボロボロで、もう見てもいられないくらいに」



ま、まぁ・・・一応は。骨がへし折れ裂傷が身体中を刻み、出血多量でかなり危なくて・・・。

まぁ、おかげさまで特に後遺症のような類は無いけど。



「なるほど・・・。それで、それだけじゃないよね。君・・・もしかして武術とかやってる?」

「あ、はい。剣術を少々」



それだけじゃなくて魔法も使えるけど。



「やっぱり。筋肉のつきかたとかがそんな感じだもの。結構重いものを振ってるよね? 恭也さんや美由希さんみたいな小太刀じゃなくて、本当に日本刀サイズの物を」

「そんなことまで分かるんですか・・・」

「まだ分かるよ? 君、その怪我の後も結構負傷してるよね。打ち身とか切り傷とかも多い。・・・あぁ、左肩に刺突も受けてるね。それだけじゃなくて上の方・・・深く斬られてる?
ちゃんと治療してるからあんまり分からないけど、本当にちょっとだけ、そこの筋肉の発達が遅いもの」



あ、あははは・・・。なにこれ? なんか事前調査されてるとかかな。いくらなんでも見抜かれ過ぎだって。



「とにかく、身長が伸びないのはそれらが原因だね」

「後遺症・・・ってことですか?」

「そうだね。あ、ただ直接的になにか障害が出てるってことじゃないの。多分、治ろう治ろうとしたことで成長するエネルギーを大きく使っちゃったんじゃないかな」



な、なんか急に不思議な話をし出したっ!? あの、恭也さん、この結構本気な顔して言い出している人は大丈夫なんですかっ!!



「バカもの。俺達にも分かりやすいように説明してくれているだけだろうが」

「な、なるほど・・・」

「でも・・・強い身体だね。いっぱい頑張って、いっぱい鍛えてる。細くて柔らかくて小さいのに、すごくしなやかで強い。なにか強くなりたい理由とか、目標とかあるのかな」



そう言ってフィリスさんが仰向けになってベッドに突っ伏している僕の顔を見る。優しく微笑みながら。やっぱり・・・色々見抜かれてるらしい。なにか核心ありげに言ってくるから。



「ま、まぁ・・・一応」



好きな人・・・フェイトを守りたいとか、みんなからもらった時間、止めたくないとか。あと・・・『魔導師だから』で止まりたくないとか。



「なら、きっと君の心に身体が応えてくれてるんだね。だから、細くて壊れそうなのに、中身は全然そんなことを感じさせないくらいに強い。・・・よし、じゃあしばらく私と一緒に頑張ってみようか」

「え?」

「君の身体、ちょっと頑張り過ぎなところがあるから、そこの負担を少しだけ和らげてあげるの。そうすれば、今よりも動けるようになるし、身長も伸び始めると思う」

「ホントですかっ!?」



思わず起き上がる。・・・あ、やめよう。ベッドに静かにだいぶー。だって、やっぱり女の人に上半身でも裸見られるのは恥ずかしい。



「ただし・・・効果は薄いかも知れない。本当に身体が出来上がっていない時に大怪我してるから、やっぱりそのダメージは残ってるの。君の場合は後遺症どうこうじゃなくて、成長を引き換えにしてる。それにプラスするのは、本当に難しいの。それでも、大丈夫?」

「・・・大丈夫です。最低でも・・・150超えれば・・・!!」

「どうして150?」



そんなの、簡単だ。それだけあれば・・・それだけあれば・・・!!



「妙に僕に対してコミュニケーションを取ってくるお姉さんが抱きついてきた時に、胸に顔を埋めるなどというむちゃくちゃ恥ずかしい思いをしなくていいからです。あと10センチでもあれば、ぎりぎり肩にいけるんです」



仰向けになりながら、つい右手を握り締める。そして思い出す。・・・うちの主治医を。今日、恭也さんに連れられて病院に行くと話したら『そう・・・私より他の女が良くなったのねっ! もう私は飽きたのねっ!!』とか抜かしてたアホ先生を。

とりあえず、無視して家に帰ったら電話がかかってきて『お願い、無視はやめて・・・。悲しいの、ちょっと悲しくなるの・・・』って泣かれたのは、きっと何かの錯覚だと思っていこうと思う。



「・・・な、なるほど。なら、一応そこを目標にしてみようか。身長は約束出来ないけど、身体の方はしっかり面倒見させてもらうね」

「はい、よろしくお願いします。フィリスさん。・・・先生ってつけた方がいいですか?」

「ううん、フィリスさんでいいよ。そっちの方が嬉しい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・という感じで整体を受け始めたんですけど・・・まぁすごいすごい。一回受けるだけで身体がすごく軽くなったんですよ。テーピングも撒き方・・・もとい、巻き方を教えてもらって、今は自分で巻くようになったんですけど、それも含めると身体への負担がもう3割減くらいで。





恭也さんと美由希さんからも言われましたもの。まるでマグネットコーティングを施したガンダ○のようだと。・・・あながち間違ってないけど、整体のおかげで動きよくなってるってなんか複雑です。





あと、身長は・・・まぁ、受け始めたばかりなんで今後に期待します。めざせ、150超えっ!!





それと、フィリスさんから聞いてびっくりしたんですけど、フィアッセさんもフィリスさんの患者だったとか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フィアッセさんと友達なんですかっ!?」

「うん。それで、実は君の話も聞いてたんだ。小さいけど、すごく強い子と友達になって、大好きになったって」



そうだったんだ・・・。あ、そう言えばフィアッセさん海鳴で暮らしてた時期もあるって言ってたし、その時かな。

いや、その時しかないか。病気療養のために滞在してたって言ってたんだし。



「フィアッセからも聞いてるだろうけど、その時あの子・・・少し身体を悪くしててね。それで私と私のお父さんが一応の主治医みたいな感じかな」

「なるほど・・・。あの、フィアッセさんもう身体の方は」

「うん、大丈夫だよ。恭文君が見た通り、すっごく元気。でも・・・ありがとう」



そう言って、フィリスさんがペコリと頭を下げる。・・・あの、どうしました?



「フィアッセのこと、守ってくれて」

「・・・別に僕は大したことしてません。勝手に首突っ込んで、勝手に暴れただけで。恭也さんや美由希さんにエリスさん達みんなが居たから、コンサートもフィアッセさんも守れたんです」



それは思う。やっぱり・・・まだまだだなと。まだ僕は、弱いよ。色んな意味でさ。



「そうかも知れないけど・・・でも、君が一番頑張ってくれたというのは、みんな認めてるらしいよ? 少なくともフィアッセはそう思ってる。あの子ね、その時のこと嬉しそうに・・・だけど、申し訳なさそうに話すんだ。
君が、全く関係ない自分のために傷だらけになって・・・命を賭けてくれたこと。そうして、自分やみんなの命と、歌声を守ってくれたこと。フィアッセ、本当に君の事が大好きになったみたいだよ?」

「・・・だったら、嬉しいです。僕もフィアッセさんのこと、大好きですから」



なんというか、やっぱり好き。フェイトへの気持ちがなくなったわけじゃないけど、それとはまた別の意味で大好きで、大切な人。



「そっか、フィアッセが聞いたらきっと喜ぶと思うな。まぁ、だから・・・結婚の約束までしたわけだもの」



フィリスさんの表情が変わる。こう・・・ニヤニヤした感じに。いや、この人がやるとどっかの狸みたいに嫌な感じはしないけどさ。

・・・・・・いやいや、なぜそこまで知ってるっ!? あぁ、考えるまでもないよねコレっ! フィアッセさんが話したんだっ!!



「アレ、フィアッセは本気らしいから、頑張ってね。今のうちからこれだけ相思相愛なら、きっと年の差も大丈夫だから」

「あ、あれは・・・その、あくまでもし7年後互いに相手が居なかったら・・・という話ですから。」



そうですよ、結構条件厳しいのよ? 僕はともかく、フィアッセさんは美人だしスタイルもいいし・・・あれならすぐにでも相手出来るでしょ。



「あぁ、本命が居るんだよね。確か・・・2歳年上でフェイトちゃん。金色の長い髪で、赤い瞳の綺麗な子」

「どうしてそんなことまで知ってるっ!?」

「フィアッセ、ちょっと膨れて話してたよ? 私、13歳の子に負けてるーって」



フィ、フィアッセさんのおしゃべりっ! どうしてそこまで話すのさっ!!



「まぁ、今度会った時は覚悟しておいた方がいいと思うな。もう私の事しか見れないように、本気で誘惑するって言ってたから」

「11歳児を本気で誘惑する20歳半ばっておかしいと思うんですけどっ!!」

「・・・そうだよね、そう思うよね。でもごめん、私もそれ言ったんだけど、問題ないって即答で返されたの」



あ、一応止めてくれたんだ。でもダメだったと。・・・よし、話を変えよう。別の話にしよう。うんうん。



「でも、なんと言うか・・・ビックリです」

「フィアッセと友達なのが?」

「いえ、それもそうですけど、フィリスさんの多才さが」



だって、話を聞くと整体・・・整形外科は本業じゃないって言うし。それでアレでしょ? 凄いよ、凄いよフィリス先生。そりゃあ病院中で人気者扱いされるさ。

小柄だけど柔らかくて優しい笑顔に患者から見ると天使のような性格。これで人気出ない理由はないでしょ。



「ありがと、そう言ってくれると嬉しいよ。・・・はぁ、あの三人も恭文君みたいにいい子だと嬉しいんだけどな」

「三人?」

「恭也さんと美由希さんと士郎さん。もう言う事聞かずに無茶ばかりするから・・・。その上、定期健診もすっぽかしたりするんだよ? もう本当になんであぁなんだろうっ!!」

「あ、あはは・・・すみません。多分僕もその無茶に最近付き合ってます。あと、少なくとも僕はすっぽかさないんで、その小さな角は収めていただけると非常に嬉しいです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・あと、フェイトともあれから色々話しました。今までも話してたけど、もっと色んな事を。・・・話して、たまにちょっと喧嘩して・・・なんとか、わかってもらいました。僕がすごくわがままだってこと。





一つだけ・・・わがままなせいで不幸になんてならないという約束をして、それで認めてくれました。わがままな僕のこと、分かってくれました。それが、なんだか嬉しくて・・・申し訳なくて。





でも、フラグが立たないんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 全く立たないんですっ!! フェイトも最近ちょっとやること出来て、デートも出来ない感じで・・・僕が一体なにしたってーのっ!? ようやく理解が深まったのに、それでフラグ立たせる時間がないっておかしいでしょうがっ!!





・・・と、とにかく、なんとか頑張ります。まぁ・・・あの約束はダメになるかもしれない方向なのがアレですけど。





最後になりましたけど、また・・・絶対に、フィアッセさんの歌、聴きにいきます。あの時も言ったけど、フィアッセさんのことも・・・フィアッセさんの歌も、好きになりましたから。





それじゃあ、残りのツアー、頑張ってください。3月で色々変わり目なので、メール・・・ちょっとだけかしこまった形で送っちゃいました(笑)





それじゃあ、また・・・です。





大好きで大事なあなたへ 蒼凪恭文より




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「送信・・・っと」





夕方、赤い夕焼けが窓から差し込む居間で、僕はモニターとにらめっこしつつ・・・僕は文面の最終確認を終えて、メールを送った。送り先は、今世界を飛び回っている光の歌姫。




・・・まぁ、結構ちょくちょくやり取りしてるんだけどさ。でも、やっぱり緊張する。なんというか・・・メールするの。だって、15も年の差があるわけだから、色々とね。





「・・・ヤスフミ、ただいま」



聞こえたのは後ろから。そこを見ると・・・制服姿のフェイト。当然、学校帰りである。

着ている服はなのはやはやて、アリサにすずかが通う聖祥大付属の中学校(女子校)の制服。なお、ブラウンのブレザー。



「あ、おかえり」

「・・・フィアッセさんにメール?」

「・・・なぜ分かる」



フェイト、帰って来て二言目にそれってどういうことさ。



「分かるよ。ヤスフミが真剣な顔でメールしてるときは、大体フィアッセさんだもの。仕事関連の時でも適当に打つのに」

「さりげに失礼な事言うなー!!」



まぁ・・・一応年上ですので、失礼の無いようにしたいのよ。あと、もうやり取りしたくないとか思われたくないし。



「それならきっと大丈夫、フィアッセさんもヤスフミのことが好きなはずだから。そうじゃなかったら、ここまでやり取りするはずないし・・・それに、沢山お話したんだよね」

「うん、沢山ね」



なんと言うか・・・あの旅の中で一番楽しい時間。あれを思い出すと、やっぱり考えてしまう。



「それで、歌とかも少し教えてもらったり、ご飯食べたり、一緒に『緊張感が無い』ってエリスさんに怒られたり・・・」



また・・・旅してみたいなと。また、世界を見てみたいなと。そうしたら、またあんな出会いがあって・・・。



「どんなこと書いたの?」

「うーん、フェイトが頑固で分からず屋で大変でしたというメールを」

「あ、そうなんだ・・・って、それはヤスフミだよっ! どうして私っ!?
・・・あぁ、違うね。私達二人とも頑固で分からず屋だね」

「そうだよ」



まぁ、あれから何回も話して、喧嘩になることもあったけど・・・それでも、一応認めてはくれたから。



「ね、フェイト」

「うん?」

「ごめん」



僕はフェイトの方を見て、一言そう言う。すると、夕暮れに頬を染められながら、フェイトが首を振る。



「大丈夫だよ。・・・その、もちろん出来るなら暗器や恭也さんと美由希さんから習った技は使って欲しくない。もうあんな戦いもして欲しくない。それは・・・本当だよ? 友達で、仲間で、家族だから、やっぱり心配なの。でも、止まりたく・・・無いんだよね」

「うん、止まりたくない。『魔導師だから』で言い訳も、したくない」

「うん、何度も話してくれたよね。それでね、私はヤスフミのそうしたい気持ち、手を伸ばしたい気持ち、教えてもらったから、もう大丈夫だよ。本当に少しだけかも知れないけど、ちゃんと分かってるから。
ただ、忘れないでね? ・・・言い訳して止まっても、例え世界中の誰がなんて言ったって・・・私は、絶対にヤスフミを責めたりなんてしないから。味方で・・・居るから」

「・・・ありがと」



そう、あれから何度も話した。恭也さんや美由希さんから教わった御神流の技を使う事、質量兵器・・・銃器相手の魔法無しでの戦闘の継続に関してあれこれと。

それで、今言ったようにどうにか認めてくれた。分かって・・・くれたのだ。



「・・・ね、ヤスフミ」

「なに?」

「フィアッセさんの事、好きなの?」



・・・どこか嬉しそうに、そう言ってきたのは我が片思いのお姉さん。



「・・・なんでそう思うのさ」

「だって、あんなに傷だらけになって守ろうとしたりして・・・。メールも嬉しそうにやり取りしてたし、もしかしたら魔法無しで戦えるようになりたいのも、フィアッセさんにまたあんなことがあった時のために・・・とか考えてるのかなと」



またそういう風に勘違いしますか。ふーん、いいよいいよ。いつもはヘコむけど、今日はカウンターかましてやろうじゃないのさ。



「うん。好き、だよ」

「・・・そっか」

「そうだよ、大好きで・・・大事で・・・特別な人」



そうだよ、ほらほら、なにか反応しなよ。もうここでいきなり『そんなの・・・だめ。ヤスフミは私のだよ』とかなんとかでもオーケーよっ!?



「・・・なら、もっともっと頑張らないとね。フィアッセさんは大人だから、すごく素敵にならないと、ヤスフミのこと見てくれないと思うし」



グサっ!!



≪・・・あなた、バカでしょ? こうなるって分かってたでしょうに≫



うん、分かってた。分かってたよ。でもさ・・・たまには変わったやり口もしたいのよ。



「でも、それならすずかやシャマルさんはどうするの? 二人ともなんだか最近現地妻とか言い出してるし・・・」

「あれは違うからっ! 普通にあれはおかしいからっ!!」



な、なんなんだよ現地妻1号と2号ってっ! どう考えてもおかしいでしょうがっ!! 神様、僕が一体なにしたってのっ!?



≪あなた、今更それを聞くんですか?≫



念話でそう話しかけてきたのは、皆様おなじみ僕の相棒。・・・いや、だってさ。覚えないし。



≪じゃあ、一つずつ思い出していきましょうか。・・・最初の段階であなたが本局に保護されて目を覚ました時、ちょうどその場に来たシャマルさんを偶発的に押し倒してその両胸をラッキースケベで鷲掴み≫



う。



≪それだけではなく、あまりの事態に叫んだシャマルさんの手を『情熱的』に掴んで、本局医療施設の中を逃走。傍から見るとアナタはシャマルさんを人質に取った風に見えたおかげで、そのまま施設内を大混乱に陥れる。
それで、事件中も色々ありましたよね。怪我して泣かれて心配かけまくって・・・≫



う・・・。



≪事件が解決してからはもっとヒドイですね。シャマルさんの微妙な料理を食べて、泣きそうな顔をしていたのを見過ごせずに『美味しいです』と言って駄目押し好感度アップ。
そして、挙句は一緒にお風呂に入って洗いっこ。それから一緒の布団でシャマルさんに抱きしめられながら精神的に弱っていたあなたはあの人の胸を再び揉む。あの人のたわわな果実を手にかけながらピロートーク≫



う・・・・・・。



≪しかも、シャマルさんは怒るどころかそれで嬉しそう。もう現地妻1号って名乗りは当然としか思えませんよ。いや、むしろせめて本命になれないなら名乗らせてあげてくださいお願いしますとしか言えませんって≫



う・・・・・・・・・。



≪そして、すずかさんには・・・お泊まりであれこれお話ですよ。そしてイレインとその量産型の襲撃のおかげでフラグ一気に成立・・・。これでなんでそういう覚えが無いと言えるんですか。私には理解できませんよ≫



ご、ごめんなさい。念話ですけどごめんなさい。なんか僕が激しく悪いような気がしてきました、はい。

よし、もう絶対に本命以外でフラグ立てるのやめようっ! 僕はフェイト一筋なんだっ!!



「まぁ、そこはいいか。・・・それで、もう準備は出来てる?」

「もち、明日だしね。・・・うー、まさかこんなに早くまた行くことになるとは」

「でも、フィアッセさんには会えそうにないね」

「まぁ、チャリティー・ツアーの真っ最中だもん。しゃあないよ」



そこは仕方ない。元気にメールのやり取りが出来るだけでよしとしよう。

ただ・・・とりあえずフェイトのにこやかな表情が気になる。本当に気になる。なんですかアレ。うぅ、どうやってフラグ立てればいいんだろう。



「本当は私も行ければいいんだけど・・・」

「いいって、仕事なんだから仕方ないでしょ。とにかく、気をつけて行ってくるから、お土産期待しててね」

「うん」










ま、そこはともかく・・・フェイト達が春休みに入ったある日のこと。というより、翌日ね? 僕はある場所に立っていた。





そう、そこは・・・!!










「やって来ました・・・イギリスっ!!」

≪またまた来ましたね。再び異国の地へ≫

「今回はリインも一緒ですー!!」





そう、ここはイギリス。いわゆる異国の地。異国の空港。

なお、僕一人ではない。



「自分ら・・・めっちゃ元気やな」

「アタシやはやては、結構ぐったりだぞ? つーか、ザフィーラに至ってはすっげー顔色悪いし」





あぁ、そうですね。さっきからベンチに座ってシャマルさんに看病されてるし。なお、ザフィーラさんは今回もこいぬモードです。だって、人間形態だとチケット代金かかるけど、あれならまだなんとか・・・ねぇ?





「ここが外国ですか・・・。あぁ、なんだかわくわくですー♪」

「蒼凪、リインもあまりはしゃぐな。特に蒼凪、お前だ。一応休暇中の事だが、お前はすべて遊びというわけではないのだからな」

「「はーい」」










そう、八神家一同も一緒に来ているのだ。





なぜこんな状況になっているかというのを説明するためには、数日前に時間を遡らないといけない。あれは・・・ちとクロノさんと相談したいことがあって、話していた時の事だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・デバイス以外の魔法装備?」

「はい」



いきなりと言えばいきなりな質問に、クロノさんは相当頭を抱えてる。というか、なんかスチームが・・・。



「だが、君には鋼糸や飛針があるじゃないか。恭也さんから習っているあれが」



・・・どうもうちのお兄さんは、近頃恭也さんにヤキモチを妬いているらしい(エイミィさん経由の情報)。兄の威厳とやらが薄れているのが辛いとか。

なので、それで以前叩いた事だし、少し持ち上げておけとアドバイスをもらったのだ。




「でも、まだ実戦使用出来るレベルじゃないんですよ。・・・今回聞いてるのは、僕の魔力量そのものをフォロー出来るような装備が無いかって話なんです」

「というと?」

「僕、すぐにガス欠するじゃないですか。もっと言っちゃえば・・・そのせいで魔法攻撃の幅が少なくなる」



主に単体用が僕の手札。でも、それだけじゃ足りない。スティンガーみたいな誘導弾以外にも複数相手も見据えたものがないと、こう・・・どうもね。



「なるほどな・・・。だが、一概に魔力量のフォローと言っても、色々難しいだろ。まさかどこかのロボットみたいに、魔力を詰め込んだタンクを体に接続するわけにもいくまい。
まぁ、一応カートリッジというものがあるが・・・あれはあくまでもブーストのためのもの。お前が望んでいるものとは違う。なにより、使用しすぎれば負荷が怖い」

「そうなんですよね・・・。あー、魔力無しで魔法が発動出来ればなぁ」



結構やる気なしでした発言だった。でも、人生はなにがどう転ぶのかさっぱりわからない。



「バカかお前は。そんなものが存在するわけ・・・」



クロノさんが止まった。そうして、急に何かを考え始めたのだ。・・・あの、どうしました?



「・・・あるぞ」

「はいっ!? え、そんな便利アイテムがどこにあるんですかっ!!」

「もちろん、魔力は消費する。ただし・・・それはその場ではない。よし、恭文・・・会ってみるか?」





誰に?





「僕の魔法戦闘の先生達だ。その人達なら、お前の要望に応える手を知っているはずだ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・その人達は現在イギリスに在住しているとか。なので、僕は再びここに来る事を決めた。





ただし、今回は僕だけじゃなかった。たまたま春休みで大きな休暇を取った八神家一同も一緒に行くことになったのだ。というより、はやての昔からお世話になっている人がイギリスに在住らしい。なんでも、その人の使い魔が、クロノさんの先生とか。・・・世の中って、色々狭いね。





ま、そこはともかく・・・イギリスか。やっぱり思い出すなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私は小走りに空港の床を踏みながら辺りを見回す。





思い出すのは、私より小さな身長をした男の子の顔。そして、その身体の中にとても強いものを持っている子。





年の差とか気にしないで、いっぱい話して・・・大好きだという気持ちをぶつけられる子。なんだか、私ダメだな。ショタとかそういうのじゃないんだけど・・・。





でも、それでも・・・探す。だって私は、その子に会いたいから。将来はともかく、今あの子の事が好きで大切なのは変わらないから。






そして、見つけた。空港のロビーに備え付けられた長いすの近く。栗色のショートカットの女の子と、空色をしたストレートロングの女の子。あと赤毛で三つ編みの子に数人の女性。その中に居る男の子を。





私は自分の記憶と変わらない笑顔を浮かべながら、女の子達と話しているその子の顔を見つけられた事が嬉しくて・・・走る。










「恭文くんっ!!」










そのまま私は飛び込むようにして・・・その子を抱きしめた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・恭文くんっ!!」





あの人のこと。数ヶ月一緒に居て、すごく仲良くなった人。その時間が出来たおかげで、大好きで、とても大切な友達になった女性。



年こそ10以上離れてるけど、そういうの気にしないでたくさん話せる相手。フェイトとはまた違った意味合いで大好きな人。





「久しぶりー!!」





そうそう、こんな感じで抱きつくこともあって、それが恥ずかしいんだけどすっごくうれしくて・・・あ、なんかやわらかくて大きい。というか、幸せ・・・。



だから、僕もギュっと抱き返す。というか、その・・・しないと泣きそうな顔を向けてくるのですよ。





「会いたかった・・・。元気そうだね。あの、ちょっと背伸びた?」





あいにく、身長は今のところ変化無し。というか、メールで書いたじゃないですか。





「そう言えばそうだったね。・・・あ、昨日はメールありがとう。すごく嬉しかったよ。でも、やっぱりメールより実物だよね。こうやって話せる方が楽しいもの」





というより、やたらリアルな妄想だな。なんか顔がすっごくちか・・・い・・・。





「恭文くん・・・I LOVE YOU♪」





そうして、ほっぺたにチュって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?





「・・・ふぃあっせさん?」

「そうだよ」




目の前には笑顔。金とブラウンが混じった色合いの長髪をポニーテールにし、白いセーターに青のストールにスカート。

ほっぺたに口づけした後だから、僕との顔の距離・・・すごく近い。



「本物?」

「本物だよー。ほら、だからすごく暖かいし、やわらかいでしょ?」





・・・うん、すごく暖かいです。こう・・・ぎゅって感じが幸せで。





「・・・って、なんで居るのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

「アンタ、今頃気づいたんかいっ!!」





[*前へ][次へ#]

16/30ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!