小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) 第34話 『侵略者D/世界の選ばれし子ども達』 前回のあらすじ――世界中を回る事になりました。でもそれじゃあちょっと足りないので、私とレナモンはみんなを送ったあと別行動。 世界中にあるダーク・タワーを地道に破壊する事に……さすがに衛星軌道上から世界中に砲撃とか、そういう真似はできないからなぁ。 でも光子郎君の事前調査で大体の位置は割れているし、集合場所である六か所周辺はヤスフミ達の担当。 あとはバレないようひたすらに『転送→結界→攻撃・破壊→転送』のループ。 現在アラスカ……真っ暗な中、極寒の吹雪で凍りついていたダーク・タワーを砲撃で破壊完了。 これ、バリアジャケット着ていなかったら死んでいるかも。うぅ、私にしかできない事とはいえ辛い。 「フェイト、魔力は大丈夫か」 「うん、そこは。むしろみんなの方が心配だよ」 各国の軍隊もやっぱり動いているし、時間帯によっては真っ昼間。人目だって当然ある。 まぁ軍隊の方はゲンナイさん達主導で行われた情報操作と、IS敗北が効いているから慎重だけど。 でもこれ……やっぱり、後が大変だよね。世界最強の兵器と戦って、勝っちゃったんだもの。 ……いや、後の事はやっぱり後回しだ。今は私達にできる事、考えないと。 「とにかく次だね。休んでいる暇もないし」 「管理局の動きも気になるから……か」 「それ」 やっぱり三年前の異変と合わせて、変な注目されてるだろうしなぁ。無理やり介入はないと思うけど……不安はある。 できれば変な介入はしないでほしいと願いながら、転送魔法詠唱――足元にミッド式魔法陣が展開する。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 世界は現在大荒れもいいところ。ていうか、クリスマスの騒動は本当にやめてほしい、闇の書事件を思い出しちゃうもの。 そんな事を言ってもしょうがないんだけど。とにかく自宅から、本局のレティへ通信を繋ぐ。 あの怪物がロストロギア絡みな可能性もあるし、現地駐在の身としては状況確認もしておきたかった。 ソファーへ座り、妙な予感に軽く身震い。……やっぱり、闇の書事件を思い出しているのかもしれない。 『でもあなたとクロノは、なんていうか災難ね。いや、恭文君達もなんだけど』 「そうでもないわよ。私達はただ思い出すだけだもの、怪物騒ぎに関わっているわけじゃないし。……それでレティ」 『本局も大荒れよ。ただ……そこって管理外世界でしょ?』 やっぱりそこよねー。まぁここで私達が堂々と乗り込んだら、それこそ侵略問題に発展しかねないんだけど。 『怪物のデータもないし、どう介入するべきかって上は揉めまくってる。事件は今起きてるのにね』 「それはしょうがないわよ。怪物の存在が現地住民に知られている以上……しかも世界中だもの」 知られていなければ、秘密裏に接触・情報収集もできたんだろうけど。 知られていたとしても事件発生地域が限定されていて、夜とかでもまだなんとかなる。 でも時差の関係で時間帯も様々で、既に軍隊まで飛び出すような大騒ぎ。それでどう介入しろと? 閉鎖結界もあるしなんとかなりそうだけど、それっぽい状況を見せてしまうのもためらわれる。 仮にそうして不測の事態が起きて、結界が破壊され……私達の存在も露見してしまったら。 ここは怪物に関してのデータが少ないのも関係している。ここでの介入は、常にそういうリスクが伴ってしまう。 例えロストロギア絡みでこうなっていたとしてもそう。なんにしても、足りないのは情報……なのよねー。 例えば闇の書事件やPT事件みたいに、こっちの領分だってはっきり分かるような状況ならやり方もある。 でもそうじゃない場合、管理外世界への介入は綱渡りな事が多い。別にこれが特例ではないの。 こういう時、組織の限界やら矛盾を感じてしまう。いや、その限界を突き抜けたら結局侵略になりかねないんだけど。 変えなきゃいけない限界はあるけど、変えてはいけない限界もまた存在する。 組織というのは得てしてそういうものを含んでできている。……レティもそこをよく知っている子。 だからこのまま手をこまねいているはずもない。私なら限界を超えていいか、悪いか……判断材料を集めるところかしら。 幸いな事に怪物達は、自ら直接的な攻撃行動に出ていない。時間的余裕はあるはずだから。 「それでレティ」 『クロノ達アースラ組に頼んで、調べてもらっている最中。 ただ怪物や現地住民に対し、変な手出しはしないよう釘刺ししたけど……問題ないかしら』 「えぇ。というか、私に聞くのはおかしいわよ。一応休職中だもの。 ……それにね、どうもあの怪物達……侵略者ってわけでもなさそうだから」 『どういう事?』 「ニュースで見た限りなんだけど、ほとんどの怪物は積極的な破壊活動をしていないの。 ISの件もいきなり攻撃されて、止むなく応戦した感じ。まるで……そうね。 ここにいる事そのものを戸惑って、うろうろしている迷子みたいな」 『それで世界最強の兵器が『(笑)』を付けられるレベルで、一蹴されるのはおかしいわよ』 否定できないわねー。とんだとばっちりだもの。もちろん警告もなしで攻撃したISが悪いんだけど。 えぇ、その関係で各国の首脳も叩かれまくっているわ。戦闘の様子はテレビでも映っていたし、ISによる被害の方が大きいから。 ただレティは私の推測を完全否定するつもりはなく、画面の中で軽く右をチラ見。 『でも迷子……どこか、私達の知らない世界から現地生物が迷い込んだ? だとしてもこんな大量にはさすがに』 「やっぱり誰かが糸を引いているのかしら。怪物達の意思は関係なく、なんらかの目的で」 『だったら余計に侵略行為に出ないのが引っかかるわね。いや、侵略が目的じゃない? 怪物達をこの場に出す事。その上で生まれる影響が目的だとしたら』 「それよ。その流れならちぐはぐな印象は消えるわ。あれが別世界の生物だとして、召喚する方法は」 細かいところは分からないから、とりあえず私達の技術に置き換えて考えてみよう。……と言っても答えは出てるんだけど。 召喚――召喚魔法はほぼレアスキルな魔法。同時に召喚魔法を扱う魔導師は、転送魔法のエキスパートでもある。 ここにはいない存在を呼び出すのが転送魔法だもの。まず侵略みたいに、直接的な攻撃行動は自然と省かれる。 もちろん田町に出た怪物みたいに、自分から暴れているのもいる。でもそういうのはむしろ少数派。 もう一度言うけど、ほとんどの怪物は自ら攻撃行動を起こしていない。つまり『呼び出した時の影響』が求める答え。 あとは同時出現した、黒いモノリスも関連しているわよね。状況から見ていきなり作ったものとも思えない。 どこかで製造したものを運んできた、そう考えるのが妥当でしょ。その方法は恐らく転送魔法に近いもの。 つまり世界中で一気に、無数の怪物達とモノリスが運ばれてきたのよ。この場合考えられるのは……世界への影響。 人や情報、破壊活動どうこうじゃない。次元世界的に、今地球はどうなっているのか。まずそこを確認するべきかも。 「……レティ」 『地球周辺の海域に異常がないかどうか、アースラに調べてもらいましょ』 「お願い。あ、情報は逐一こっちへ回してもらえると」 『分かってるわ。……あ、それと恭文君とフェイトちゃんに連絡がつかないの』 『そう言えば』という感じで、レティがとんでもない事を言い出した。どうしてだろう、胸が妙な予感で締めつけられる。 『リインフォース達もアースラに招集したんだけど、朝からデートとか言ってて……あなた、なにか知らない?』 「いいえ。え、この状況で恭文君が」 『えぇ』 「まさか……いや、そんな。イースターの事だって無事に片付いたばかりで」 『……それでも、恭文君だもの』 フェイトさんも一緒というのがまた引っかかって……リビングの中、つい半笑い。 できれば、ただデートに熱中しているだけだと思いたい。でもさすがにない、わよね。 だって世界中で厳戒態勢が敷かれているんですもの。状況を察しないわけがない。つまり、そういう事なのよ。 魔法少女リリカルなのはA's・Remix とある魔導師と閃光の女神のえ〜すな日常/あどべんちゃー 第34話 『侵略者D/世界の選ばれし子ども達』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 子ども達は世界へ散らばる――恭文とタケル、太一はフランス・パリ。 ヒカリと光子郎は香港、伊織と丈はオーストラリア。京とソラ、あむはモスクワ。 そして大輔と賢、ヤマトはアメリカ・マイアミビーチに現地時間二〇〇二年一二月二四日、午後十時十五分到着。 東京では二十五日の午後十二時十五分の事だった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ アメリカかー。なんつうか、めっちゃ久しぶりって感じがするなぁ。えっと、確か現地時間は午後十時頃か。 まだクリスマスイブなんだよなぁ、こっちは。噂に聞くマイアミビーチの砂を踏み締め、静かな夜の海を見渡す。 「さてと……大輔、確かミミの友達と待ち合わせだったよな」 「えぇ。……あ、一乗寺とワームモンは知らないか。以前デジタルワールドで、マイケルっていう選ばれし子どもと知り合ってさ」 「Hey! ダイスケ!」 おー、きたきた。ビーチの入り口から、金髪を二つわけにした奴が駆け寄ってくる。 緑のコートを着たそいつは、オレ達と同い年くらい。ヤマトさん達もすぐに例のマイケルだと分かったみたいだ。 その足元には緑黒しま模様な、トカゲっぽいデジモン。でも体型は丸っこくて、トカゲの子どもって感じ。 爪の生えた四足でペタペタと歩き、背に生やしているオレンジ色のとさかも揺らす。 「マイケル! きてくれてありがとなー!」 「ベタモン、久しぶりー!」 「ノー・プロブレムだよ! ……さ、車は用意しているから挨拶は中で」 のんきに再会を喜ぶ時間もないってか。そこは納得しつつ、用意しているという車へ。えっと……ビートルだっけ? 丸っこくて大きい車の後部座席に、一乗寺達と三人並んで座る。すると車はすぐさま走り出した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ベタモン <成長期><両生類型><ウィルス種> 四足歩行をする両生類型デジモン。性格は温厚でとても大人しい。 だが一度怒らせると、体から百万ボルト以上の電流を発し、敵を攻撃する『電撃ビリリン』を放つ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ――マイケルと一乗寺達が自己紹介している間に、車はどういうわけか空港っぽいところへ。 いや、合ってるんだよな! だってヘリや飛行機やらがたくさん泊まってるしよ! 「マ、マイケル……! まさか」 「そのまさかさ」 助手席のマイケルが戸惑うオレ達へ振り返り、おどけるようにウィンク 「ケン君とヤマト君達はヘリでメキシコへ」 「「「「ヘリィ!?」」」」 「ダイスケは僕とヘリでニューヨークだ」 「「マジですかー!」」 すげぇよアメリカ、大胆っつーかワールドワイドっつーか……あ然としている間に車は停車。 ヤマトさん達は近くにあった、すぐにも飛び立ちそうなヘリへ乗り込む。オレとブイモンはマイケルに連れられ、反対側の軽飛行機へ。 飛行機乗るのは初めてじゃないんだよ。夏休み、こっちへきた時にも使ったからさ。 でも……やっぱぶっ飛んでるだろ、アメリカ! また気軽に百キロ単位の別行動かよ! 「お邪魔しまーす」 「Hey Guys」 そこで運転席にいた、金髪おじさんが一声かけてくる。……その人を見て、頭が一気にフリーズ。 そして再始動――とんでもない熱と感動で頭がいっぱいになる。 「大輔、どうしたのー?」 「こ、この人知ってる……! 映画『闇を撃て』シリーズの主演スター! え、なんで!」 「スター……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 「あー、紹介するよ」 マイケルがバツの悪そうな顔で出てきて、オレやブイモンへ苦笑してくる。 「僕のパパ」 「マイケルって、ハリウッドスターの息子だったの!?」 「ま、まぁ」 「「アメリカすげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」 「そこアメリカなの!?」 マイケルになぜか呆れられながらも、着席しシートベルトも締める。そして軽飛行機はかなり荒っぽく出発。 さ、さすがハリウッドスター……! なんか映画みたいに勢いある出発だぜ! 燃えてきたー! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ クリスマスという事もあり、本来ならアースラスタッフにも休みを出すはずだった。家庭持ちもいるからなぁ。 なのに全員、昨日のお台場事件で待機が決定。その上今日はこれだ。正直申し訳なくもあるが、そうも言っていられない。 それほどに状況は切迫していた。エイミィと二人アースラの管制室で、レティ提督からの指示通りに調べ物をした結果。 「なに、これ……!」 「僕に聞くな」 目の前の空間モニターに映るのは、地球の現状態を移す様々なデータ。しかしそれが示すものはどれもが異常。 安定とは程遠い数値が叩きだされ、バイオグラフは荒れる大海を思わせる勢いで乱れ狂う。 これを見る限りあの世界は、目に見えないだけで穴だらけと言っていいものだった。 「位相の乱れが出ているようだな」 「でもどうして! 普通の転送じゃあこんなおかしい事にはならないよ!」 「考えられる要因はそれほど特殊な召喚術式か……現在乱立しているあのモノリス。 いや、乱立していたと言うべきか。エイミィ、恭文達に連絡は」 「まだつかない。リインフォース達も知らないの一点張りだし……ねぇクロノ君、モノリスを破壊していったのってやっぱり」 「……あの馬鹿どもは」 事件が起きているなら起きているで、なぜこちらに報告の一つも入れないんだ。 二人が動いているなら、これは管理局サイドから解決できる案件かもしれない。 だったら嘱託として、現地協力者として情報提供するのが筋だろうに。それでこのこう着状態は大きく解消される。 まさかとは思うが、イースターの件を解決したからと言って調子に乗っているわけじゃあるまいな。 正直それすらも疑わしく思う状況だ。なんとかして二人の事も捕まえなければ。 「ただモノリスが原因ってのはアリかも。あれの破壊が始まってから、位相の乱れが静まっていってる」 「だが根本的解決には至っていない」 「……うん。もしかすると私達が知らなかっただけで、前々からなにか起こっていたのかも。 ほら、怪物騒ぎも今回が初めてじゃなくて、三年前にもあったわけだし」 「局は事態の推移についていけず、結局なにもできなかったがな。というかエイミィ、それ関連の調査データは」 「さっきも言ったけど駄目。いつの間にか消されていた」 三年前の一件も、短期で解決したから局はなにもできなかった。僕達もそれどころではなかったんだが。 ただ事後調査は重ね、異常現象や現地生物についてある程度の考察はまとめていた。そこはまぁ、当時の捜査担当だな。 だがそれを確認しようとしたところ、本局のデータベースから奇麗さっぱり消えていた。 それがまた局の対応を遅らせている。仮にも警察組織がハッキングを受け、案件にまつわる全てのデータを奪われた。 しかもそれが一体いつ、誰の手によって行われたかも分からないんだ。大失態以外の何物でもない。 そのしわ寄せが現場にもきて、僕達はなにもできず回り道を繰り返しているわけで。 「それに……空へ浮かんだっていうあの光景」 「あれが今出現している、現地生物達の住みかといったところか。だがそれらしい世界はなかった」 「じゃああの現地生物達、一体どこからきたの?」 「僕達管理局が未発見の世界、そう結論づけるしかないだろう。少なくとも幽霊の類じゃないさ」 つまるところあれか。恭文達はその現地生物達へ関わり、なんらかの目的で動いていると。 それも局に内緒でだ。もちろんそれは局に知られると面倒な事……しゅごキャラやらと同じくだな。 ……だとしても腹立たしいのは消えないが。それならそれでイースターの時と同様、こちらと同調して対処するべきだろうに。 ここで下手な動き方を見せれば、怪物達を引き入れたと言われてもおかしくないぞ。 クリスマスなのについカッカしてしまうのは、アイツらが馬鹿なせいだと察してほしい。 「……しょうがない。エイミィ、後は任せた。僕は現場へ向かう」 「いや、向かうって駄目だよ! そもそも魔法が通用するかどうかも危ういのに!」 「怪物達に直接対処するつもりはない。狙うはその周辺にいるであろう恭文達だ。 二人を捕まえ、事情を聞く。その上で対処を決めた方が早い」 「でもそれ、恭文くん達が情報を知っている事前提だよね」 「今までの事を考えれば、確実に関わっているだろ」 さすがに本気ではないが、なんにしてもモノリス周辺に魔力反応があったのは事実。 仮に連絡できない状態――人質・脅迫コンボなり、洗脳なりが行われているとしたら助ける必要もある。 アースラにいてはさすがにフットワークが重くなる。現地へ降りてすぐ移動できる状況を作らないと。 「あれ……ちょっと待って」 そこでエイミィは慌ててコンソールを叩き、ある映像を出す。それはアースラのカメラを用いた、衛星軌道上からの撮影映像。 視点はいわゆる俯瞰(ふかん)視点……巨大な滝に入っているカエルっぽい生物が、肩から生える管楽器を揺らす。 そんなカエルへ近づくのは、頭部が骨状態なドラゴン。大きさはカエルよりずっと小さく、ぎりぎり人が乗れるという感じ。 ドラゴンとカエルが交互に口を開いたかと思うと、ドラゴンは踵を返し去っていく。 それにカエルもゆっくりついていき、包囲している軍隊はただそれを見送る。 「これは」 「アメリカの……ナイアガラの滝ってところだよ。お察しの通り、衛星軌道上から撮影しているリアルタイム映像。 ……どうも他のところでも、怪物達が移動を開始してるっぽい」 「どういう事だ。まさか都心部へ乗り込んで、破壊活動を行うつもりか」 「それはないんじゃないかな。ほら、レティ提督も言ってたじゃない。大半の怪物は自ら攻撃行動を起こさないって」 「自らだろ? 今そうするべきと吹き込まれたのなら」 相手は言葉も通じないであろう猛獣。正直どこまでその推論が……そこで映像のある一点に目が引かれる。 エイミィの脇からコンソールを操作し、映像解析――ドラゴンの方へズームし、その背におかしいものを見つける。 「クロノ君、これ」 「あぁ」 エイミィもそれに気づき、息を飲んだ。どういうわけかドラゴンの背には……子どもがいた。 ズームにズームを繰り返しているから、シルエットで分かる程度。顔立ちや性別まではさすがに分からない。 だが映像を巻き戻し、改めてカエルがナイアガラの滝から立ち去るまでをチェック。 ドラゴンと一緒に、その子どももカエルに話しかけていた。……どういう事なんだ、これは。 まさかこの子どもが犯人? いや、それ以前にあれは現地生物のはず。人語を理解する知能があるのか。 それも完全別世界であろう、地球の言葉をだ。彼女が現地住民で、話した言語が地球の言葉なら……そうなってしまう。 僕達は今、体験した事のない未曽有の危機に陥っているのかもしれない。あの子どもに対し、そこまでの強い恐怖を抱いてしまった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ニューヨークへ移動している間に、作戦通り各国の選ばれし子ども達が行動開始。デジモン達を指定地域まで誘導する。 そのためにニューヨークは避難が始まっているけど……いや、もうマジすみません。建物とか壊さないうちに帰すんで。 両手を合わせ謝っていると、ニューヨーク――マンハッタンへ到着。時刻は午前二時……えっと、東京だと午後四時だったな。 軽飛行機は大胆にもビルの谷間をすり抜け、道路に到着。マジですれすれだったんで、ブイモンと二人抱き合ってしまった。 やっぱアメリカすげーと思いながら、マイケル達と一緒に軽飛行機を降りると。 「大輔くんー! ブイモンー!」 「こっちよー!」 緑色の帽子にコート、濃い赤のスカートを穿いたミミさんが駆け寄ってくる。もちろんパルモンも一緒だ。 ミミさんは俺達の前へきて、まず……軽飛行機を見るわけで。そりゃそうだよなー。 「でもまた、大胆な登場ねー。ところで恭文くんは?」 「もう、ミミったら」 「ミミさん……オレじゃ駄目ですか。そうですか」 「恭文ならその、パリだから。ニューヨークにはいないから」 なんかすっげー脱力しながらも、近くの公園へ移動。ベンチに座り、ミミさんはパソコンを開いてポチポチと操作。 するとニューヨーク近辺の地図が展開して、そこに幾つもの光点が出現。それは少しずつこっちへ近づいていた。 確かここ、セントラルパークだっけか? クリスマスだから雪も積もっていて、マジ奇麗だなぁ。 「あ、出た出た。みんな順調に進んでいるみたいね。さっき光子郎くん達ともメールでお話したんだけど」 「みんなも現地の子ども達と合流したそうよ。あとは待つだけ」 「待つだけかぁ。まぁしょうがないですよね、ここだとオレしかゲートを開けないし」 「その大輔があっちこっち動いてたら、結局二度手間だもんなぁ」 まぁみんな無事そうでほんと安心した。またISの横やりとかもなさそうだし……そこが一番心配だったんだよなぁ。 ISじゃなくても、軍隊が邪魔したら無理には通れないだろ? そんな事したらデジモン達はたちまち侵略者だ。 札幌や大阪の件は、ISから一方的に攻撃したからまだ言い訳できる。それはめちゃくちゃラッキーだったんだ。 そこをすっ飛ばしたら本当に意味がないし、気をつけておかないと。あぁ、オレ自身にも言っている。 「ところでここを集合場所にしたのは、ダイスケ……なわけないか」 「オレ、日本暮らしだしなぁ。やっぱミミさんですか」 「実は……わたしじゃないんだなー、これが」 ミミさんが苦笑すると、こっちにフードを被った人が……てーかゲンナイさんが近づいてきた。思わずゲンナイさんへ指差し。 「ゲンナイさん!?」 「違うよ。私の名前はベンジャミン」 「ゲンナイさんの仲間なんですって」 「で、でも顔とかそっくりだよ!? なぁ大輔!」 「あぁあぁ!」 「元は一つだからね。まぁその話は長くなるから置いといて」 置いとくのかよ! てーかめっちゃ気になるんですけど! ……でも、ベンジャミンさんかぁ。 やべぇ、ゲンナイさんって素で言いそうだ。だってマジでそっくりなんだよ。 「そういやマイケル、他の選ばれし子ども達ってどういう子達なんだ。マイケルと同じで、二〇〇一年の選ばれし子ども達とか」 「そういう子もいるし、そうじゃない子もいる。会った事がある子も、ない子も。 ……あ、でも一人ダイスケやミミと会いたがっていた子達がいたな」 「オレ達に?」 「それは会ってのお楽しみかな」 思わせぶりな言葉に首を傾げる。でも楽しみだなー。てーか凄いスケールだよな、ほんと。 これも太一先輩達が繋がりを作っていった結果か。……オレも負けてらんないなぁ。 そこでミミさんのパソコンから、電子音が響く。ミミさんは画面を開き、いきなり険しい顔をし始めた。 「大変……! ロックフェラーセンターで、ジュレイモンが暴れだしたって!」 「なんだって! てーか暴れだしたってなんですか!」 「クリスマスツリーを見て、敵と思ったみたい……サムって子からSOSよ!」 「止めに行かなきゃ!」 「あぁ! ……というわけで」 ブイモンとミミさん達へ向き直り、静かにお辞儀。 「「案内よろしくお願いします!」」 なんでかみんながズッコけるが、気にしちゃいけない。……さすがに分からないんだよ! この辺りは前回通ってないしよ! 「もう、二人ともー。ミミ」 「じゃあ一緒に行きましょうか。ベンジャミン、悪いんだけどここで留守番を」 そこでミミさんが苦笑しながら、隣のベンチにいるお父さんを見る。 ……お父さん、オレ達が持ってきたおにぎりを食べながら幸せそうにしていた。 てーか豪快だなぁ。アメリカって……世界ってやっぱすげー! 「あのおじさまと一緒に」 「いいだろう。ミミ、パルモン、分かっているとは思うが力は大事にね」 「「はい!」」 「おっしゃ! じゃあ行くぞ、マイケル!」 「OK!」 オレはD-3、ミミさん達はデジヴァイスを取り出し、それぞれのパートナーへ向ける。 「ブイモン、進化!」 ブイモンはいつも通り、青い光に包まれながら巨大化。エクスブイモンへと進化する。 「エクスブイモン!」 「パルモン、進化ー!」 パルモンは両手両足がある、サボテン人型サボテンへ進化。顔はハニワ状態で、両手にはボクシング用のグローブをつけていた。 大きさは五メートルくらいだろうか。て、てーか……花からサボテンって! 「トゲモン! ――トゲモン超進化ー!」 そのサボテンは回転しながらまた光に包まれ、赤い蕾(つぼみ)となる。それが開くと、中から花の妖精が飛び出した。 細身な体に、ワンピースみたいな花びらの服。頭は蕾(つぼみ)型で、その下に人の顔。翼とマフラーは葉っぱでできていた。 一気に印象が変わったそれは、飛び上がりくりくり瞳でウインク。 「リリモン!」 「ベタモン、進化……!」 ペタモンは十メートルほど飛び上がり、青い体を持つ龍に変身。両手足とかはなくて、その代わりに尾ひれがついている。 黄金色の頭部と耳ヒレを揺らし、楽しげに笑い始めた。 「シードラモン!」 「よし、行くぞ! 案内よろしくお願いします!」 「ダイスケ、そんなに言わなくても大丈夫だって」 マイケルに苦笑されながら、オレはエクスブイモンに抱えられる。ミミさん達はシードラモンへ乗って移動開始。 ロックフェラーセンターってところへ、みんな揃って飛んでいく。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ジュレイモン <完全体><植物型><ウィルス種> ウッドモンが更に進化し、非常に高い知性とパワーを得たデジモンがジュレイモンである。樹海の主と呼ばれている。 深く暗い森に迷い込んでしまったデジモンを更なる深みへ誘い込み、永遠に抜け出せなくしてしまう恐ろしいデジモンでもある。 身体からは幻覚を見せる霧を発生させ、森の深みに誘い込み、枝のような触手やツタで敵を取りこんで自らの栄養としてしまう。 長生きしているウッドモンを見かけたら、ジュレイモンに進化する前に倒す事が得策だろう。 必殺技は頭部の茂みに生える禁断の木の実『チェリーボム』。甘い香りに誘われて、この木の実を口にすれば確実な死が待っている。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ トゲモン <成熟期><植物型><データ・ウィルス種> 巨大なサボテンの姿をした、植物型デジモン。体内に栄養素データを保存する事ができ、なにもない砂漠地帯でもしばらく生きていく事ができる。 その表情から見て取れるように、ふだんはなにを考えているか全く分からず、一日中ぼーっとしている事がほとんど。 しかしひとたび怒らせるとその形相が一変し、暴れ出して手が着けられなくなる。 必殺技は腕先のトゲを更に硬質化させ、バンバン殴る『チクチクバンバン』。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ リリモン <完全体><妖精型><データ種> 美しく咲いた花弁から生まれた妖精型デジモン。見た目は人間の子供のような姿をしているが、計り知れないパワーを秘めている完全体である。 気まぐれでおてんばな性格で、同じような気質を持っている人間の少女には心を開くと言われている。 また泣き虫で泣き出すと手がつけられなくなるので、手なずけるには努力が必要である。 しかし小さなものや弱いものにはやさしく手を差し伸べる一面もある。 背中に生えた四枚の葉状羽で空を飛ぶ事ができ、リリモンが飛んだ後はさわやかなそよ風が吹くという。 必殺技は両腕を前に突き出し、手首の花弁を銃口にして、エネルギー弾を撃ち出す『フラウカノン』。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ シードラモン <成熟期><水生型><データ種> 大蛇のような長い体を持った水生型デジモン。この長い体を使い、襲い来る敵に体を巻きつけ、敵が息絶えるまで締め上げる。 元来知性といものを持ち合わせておらず、本能の赴くままネットの海を泳ぎ回っている。 必殺技は口から絶対零度の息を吐きだし、水を瞬時に凍らせて敵に放つ『アイスアロー』。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ では大輔達も移動中なので、私ことナレーターがロックフェラーセンターについて説明しよう。 ここはニューヨーク市ミッドタウン・マンハッタンの五番街、及び六番街にある複合施設。超高層ビルを含むビル群からなる場所だ。 この中で一番大きいGEビルディングは高さ二五八メートル、七十階建てとなっている。 中心にある半地下のプラザには、万国国旗とプロメテウスの黄金像が立ち、夏にはカフェテラス、冬にはアイススケートリンクとして使用される。 ここで特筆すべきは……十二月になると特大のクリスマスツリーが飾られる事。恐らくジュレイモンが敵と間違えたのはこれだろう。 ツリー自体はかなり有名で、大きさも二十メートルから三十メートル以上と大型。近年ではツリーの点灯式がアメリカ全土に渡って、NBCの番組でライブも放送されている。 ちなみにツリーは翌年一月六日の公現祭まで設置され、それが過ぎると建築木材などはリサイクルへと回されるのだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ミミさん達の案内でやってきたのは、なんかめちゃくちゃ高いビル群のど真ん中。……確かにツリーが壊されていた。 その脇で褐色肌な男の子が、困り気味にビルを見上げる。年の頃は伊織くらいで、アメリカカラーな帽子とジャケットを着ていた。 その子が見ていたのは……ひときわ高いビルの上。こう、でっかい樹木っぽいシルエットが夜に浮かんでいた。 どうやらあれがジュレイモンらしい。確か……完全体だったな。他にもいるデジモン達もじりじりと下がり、その様子を見守っていた。 その隣には炎の魔神……いや、炎の人型龍? あれ、フレアリザモンだったな。 「君がサムね! 助けにきたわ!」 「Oh! Thank you!」 「どうしましょう、GEビルディングのてっぺんに登っちゃってるわ」 「まるでキングコングだなー。……よし、エクスブイモン! アイツの頭を冷やしてやれ!」 「冷やす……分かった!」 エクスブイモンはオレを下ろし、一気にGEビルディングとやらの屋上へ飛び上がる。 そうしてキングコング状態なジュレイモンの背後を取った……取ったよな。遠いし暗いしで、うっすらとしか見えないが。 「――ふん!」 次の瞬間、エクスブイモンはジュレイモンの背後から飛び蹴り。縁にいたジュレイモンは足を滑らせ、そのまま落下……おいこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 「ダイスケ、なにやってるの! EGビルディングは七十階建てだよ!? 死ぬよあれ!」 「オレに言うなよ! アイツはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 「ああもうしょうがない……リリモン!」 「任せて!」 おぉ、なんか助ける手段があるのか! リリモンは両手を落下していくジュレイモンへかざす。 すると手首周囲にある花びらが大きく開き、手は一瞬で大砲みたいな砲口に変化。お……おい、ちょっと待て。 「あれ……リリモン、ストップー!」 「フラワーカノン!」 リリモンの手から、青白いビーム砲撃が発射……なんでじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 砲撃はジュレイモンへ直撃し、大爆発。それでジュレイモンの落下速度が一瞬だけ緩み、脇へはじけ飛ぶ。 そのままリリモンは落下地点を予測し、第二射・第三射。そうして落下衝撃を殺している様子だった。 命から奪いそうな勢いだけどな。そうしてジュレイモンの頭を、オレ達の後ろにあった巨大スケートリンクへ叩きつけた。 その瞬間、ズタボロなジュレイモンは目をパチクリさせ……あお向けに倒れる。 ……ついミミさんを見ると、顔を背けて口笛なんて吹き始めやがった。 「うふふ、大成功ー♪」 「大輔、これでどうだ」 そして一仕事終えたという顔で、エクスブイモンが降りてくる。リリモンと楽しげにハイタッチ……してる場合じゃねぇよ! 「駄目に決まってんだろうが、この馬鹿がぁ!」 「どうしてだ!」 「当たり前よー! あんな高さから落ちたらさすがに危ないわよ! リリモン、あとでお説教だからー!」 「なんであたしまでー!」 い、生きてるよな。あれ生きてるよな。サムらしき子も震えながら合掌し始めたけど……生きてるよな、あれ! 頼む、返事してくれー! オレが悪かったと思うから、立ち上がってくれー! 「マリアよ! この子はケンタルモン――助けにきたわ!」 そんなオレ達に駄目押しで、次々と他の子ども達が到着。まずきたのはヒカリちゃんと同じくらいの髪で、白コートを着た女の子。 脇には右手がロックバスター化している、ケンタウロス型デジモン。あっちこっちに機械パーツが見えていた。 次はドスドスと足音を響かせ、岩肌の亀が迫ってくる。その頭上にはバンダナを巻いた、ロングヘアーな男。オレと同い年くらいだろう。 「ルーだ! さぁジュレイモン、僕とトータモンが相手だ!」 そんなトータモンの横から飛び出してきたのは、金髪眼鏡な白人の男の子。緑のマフラーにオレンジのダウンジャケットを着ている。 その横には三メートルほどの雪だるま型デジモン――ユキダルモンか! 「やぁ、スティーブだ。この子はユキダルモン……って、もう終わってる?」 スティーブが……いや、スティーブだけじゃない。ピクピクしているジュレイモンを見て、助けにきてくれたみんなが首を傾げていた。 そ、そうだよなぁ。ピクピクしてるから生きてるけど、スケートリンク上でこれだもんなぁ、そりゃあ驚くよなぁ。 ……でもすげぇ。民族服着ている子もいるし、肌の色だってみんな違う。でもここにきて、同じ目的のため力を貸してくれている。 それがさ、とっても凄い事だって思うんだ。うまく言えないけど……その前にジュレイモンの事か! と、とにかく早く起こそう! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 起こした結果、ジュレイモンは本当に頭を冷やしてくれた。自分が勘違いしていたのも理解してくれたのでほっと一安心。 でもブイモン達には説教だ。セントラルパークへみんなを連れ戻ると、他のとこからきた子ども達も到着していた。 やっぱり服装も、肌や瞳の色も違って……でもそれで争ったりしない。いやさ、実はちょっと勉強したんだよ。 この間アメリカ行った後でさ。肌の色が違うから、人種が違うから、文化が違うから戦争する事もある。 相手を差別する事もあるってさ。相手がなんにも悪い事なんてしていないのにだ。そういうのはすげー馬鹿らしいって思った。 でも……一乗寺絡みのあれこれを見て、こうも考えた。相手を憎んだり許さないのって、簡単な事で成り立つんだなと。 それこそ今言った違いが理由になっちまう。それもひっくるめて人間で、オレ達はそういうもんを乗り越えなきゃいけない。 ……って、らしくない事考えててさ。でも、そこまで畏まる必要もなかったんだなと気づいた。 簡単な事でいいんだ。本当に簡単な事で、全部受け入れていける。オレ、ここへきてよかった。 「なにしんみりしてるのかな。早くゲートを開きなよ」 後ろから声をかけられ、ミミさんと一緒にビクッとする。そうして振り返ると。 「Merry Christmas――ダイスケ、ミミ」 「メリークリスマスー」 「ウォレス! グミモン!」 「あなた達もきてくれていたのね!」 「当然さ」 それは夏休みに知り合って、一緒に旅をしたウォレスとグミモンだった。そっか……そっかそっかそっか! 嬉しくなって、ウォレス達としっかり握手、ブイモンとミミさん、パルモンもそれに続いた。 「なんかすっげー久しぶりー! ……あ、そっか! マイケルが言ってたのって二人だったんだ!」 「そういう事。それよりほら、積もる話は後だよ」 「ゲートゲートー」 「おぉそうだった! ミミさん!」 ミミさんは頷き、ベンジャミンさんに預けてあったノートパソコンを開く。 それはベンチに置かれ、モニターは控えているデジモン達に向けられた。なのでD-3を取り出し。 「デジタルゲート、オープン!」 モニターへ向け、ゲート展開。デジモン達はそこから発生した光に吸い込まれ、デジタルワールドへと戻っていった。 わりと騒がしかった場が鎮まり、オレ達は一息。でもすぐに……両手でガッツポーズを取る。 『やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』 世界は広かった。オレ達だけじゃどうしようもないくらい広くて……でも仲間がいてくれた。 暮らす国が違っていても、文化や人種すら違っていても、一つの目的に向かって歩いていける。 そんな仲間が世界中にいたんだ。事件が起きたのは喜んじゃいけないけど……オレは今、笑い合える仲間達と出会えて本当に嬉しい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ こうしてニューヨークの危機は救われた。二〇〇二年一二月二五日――現地時間午前三時、日本時間午後五時の事である。 そして恭文達もこの時点でミッション完了。各地区のデジモン達を見事送還し、日本へと戻っていく。 しかし恭文達はまだ知らなかった。この間に着々と、奴らの計画が進んでいる事を。いや、察してはいた。 だがそれがどういう意味を持つかまでは知らなかった。だからこそ日本へ戻ってきた恭文達は、安どの表情を浮かべるわけで。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ この厳戒態勢の最中、子どもの安否より大事なものがあるらしい。成績や体面――そんなものばっかりさ。 そういう大人の汚さを感じた子ども達は、この街にはわんさかといる。その中で面白そうな子に声をかけ、トラックに乗せ移動開始。 あとは一乗寺賢さえ捕まれば……トラックの助手席で、そこの辺りどうするかを考える。 既に各国のデジモン達は送還されちまっている。また同じ事をやるのも手間だし、それでいちいち動かれてたんじゃ捕まえようがない。 この子達を人質ってのも考えたけど……そこであのガキが引っかかってくる。アタシらを遠慮なく殺せる、あの化け物だ。 「なぁアルケニモンー、一体どうやって一乗寺賢を捕まえるんだー?」 「考えてるとこだよ。てーか前見て運転しな」 とかツッコんだところ、トラックはゆっくり停車。 「なんで止まるんだい」 「赤信号ー」 「ち……めんどいねぇ」 デジタルワールドなら、交通ルールを守る必要もないってのに。でもしょうがないか、変にこっちの奴に目を付けられても。 「ん……なぁアルケニモン、あのポニテの子!」 いきなりこっちにまで身を乗り出し、マミーモンが左側の歩道を見る。……そこに立っていたのは、黒髪ポニテの女の子。 年の頃はあの生意気なガキどもと同じくらいかね。雑踏の中、隅によってそいつは立ち尽くしていた。 そうして通りがかる楽しげな子どもや大人を、かたっぱしから睨んでいた。恨みの感情をぶつけまくってるんだよ。 「あぁ、目に入ったよ。またおどろおどろしい空気出してるねぇ、相当嫌な事があったと見える」 「どうする、捕まえちゃう?」 「そうだねぇ、じゃあ」 ……アタシが降りて声かけしようかと思ったら、前の店から青髪おさげの女が出てきた。 身のこなしからしてただ者じゃないそいつは、ポニテの奴に声をかけそのまま歩き始める。そうしてアタシ達のトラックと交差。 「駄目だね。今騒がれると面倒だ」 「しょうがないかー。あーあー、もったいない……お、青信号」 そしてトラックはゆっくりと走り始める。中の大事な生けにえどもも傷つけないよう、ゆっくりだ。 さて……どうにかして、あのチビと一乗寺賢を引き剥がして、その上でって感じかね。 近くにいなければ人質作戦も有効だし……でも問題は、あのチビは他のガキどもと違う事。 アイツはね、どっちかっていうとアタシ達よりだよ。正義の味方というよりは悪党――だからこそやり辛い。 今のアタシ達に、アイツを引っ張って引きつけるだけの材料はあるか。そこを解決しない限り、計画がおじゃんになりかねない。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ お台場付近の川辺に戻ってきて、フェイトは僕に甘えてすりすり。あー、うん。転送魔法使いまくりで疲れたもんね。 そのまま甘えさせ、頭を撫でてあげる。そんな横で日奈森あむと京は。 「「帰ってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」 テンション高いなー。あれか、モスクワはそんなに辛かったのか。 「さー! お腹減ったわ! 夕飯食べましょ夕飯! ボルシチピロシキボルシチピロシキ!」 「ここまで頑張ったら、やっぱ食事が大事じゃん! あたしも今日はガツガツ食べるし!」 「お前ら……それ全部、モスクワが本場だろうが。いや、食べている暇はなかったんだろうが」 お兄さんを筆頭にみんなが呆れた顔をする中、つい困り顔で黙ってしまう。そんな僕の前にシオンとショウタロス――ヒカリが出てきた。 「恭文君、どうしたの?」 「いや……アルケニモン達の妨害、最後までなかったなぁと」 「……やっぱりそこだよね。やっぱりデジモン達を迷い込ませる事が最終目的じゃなくて」 「単なる目くらましで、またなにかされているか。くそ……奴ら、一体どこまで我々とデジタルワールドを弄べば気が済む」 荒ぶるサーベルレオモンを撫でてなだめていると。 「まぁ今日のところはいいじゃないか」 大輔がガッツポーズを取りながら、妙に真剣な顔をし始めた。 「ゆっくり休んで、次に備えようぜ。よくやったーって自分にご褒美あげるのも大事だろ」 『お……おう』 「あれ、なんでそんな戸惑うんだよ!」 「あぁ、悪い。お前もたまにはいい事言うなぁと」 「たまにってなんですか! 太一先輩までひどいっすよ!」 「悪い悪い」 膨れる大輔をみんなでなだめ、今日のところは言う通りにしようと決意。その場で解散し、疲れた体を引きずりながら帰宅する。 そうだね、自分へのご褒美は大事だ。それに……なにかあるとしたら、すぐ察知できると思う。 サーベルレオモンにも言ったけど、ここからの戦いは現実世界が舞台。それだけは間違いないと思うから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ パリ……大変だったなぁ。久々におじいちゃんと会えたのはよかったけど、恭文君が凄まじい大暴れかましたから。 恭文くん、ベルサイユ宮殿……というより、歴史ある建造物とか大好きだったんだね。 不法侵入かましたデジモン達に、死刑と言わんばかりの殺気を向けていたから。ていうか本当にやりそうで怖かった。 友達の新しい一面に苦笑しつつも、パタモンを頭に載せたまま帰宅。 「ただいまー」 するとエプロン姿の母さんが、リビングの方から慌てた様子で出てきた。 つい帽子を目深にかぶって、背も向けちゃう。そのまま座って、靴をぱぱっと脱ぐ。 「お帰り」 「ごめんね、急に出かけちゃって」 「それはいいんだけど……ねぇタケル、今日の怪獣騒ぎはデジモンよね」 「うん」 「あなた達も関わってるのよね」 「まぁ、止める方向で……でも心配いらないよ」 靴を脱ぎ終え、立ち上がってから振り返る。そうして笑いかけると、母さんは苦笑し始めた。 「ん、信じてるわ。ただ一つ気になっている事があって」 母さんの脇を抜け、自分の部屋へ……やっぱり申し訳なさってあるのかな。うまく顔を合わせられない。 「この間、変な男の人に会って。及川悠紀夫って言うんだけど、三年前の事はまだ終わってないって言ってて」 その言葉が引っかかり、慌てて母さんへ振り返る。 「三年前、お台場と光が丘で起こった事を詳しく教えてくれって、聞きにきた人なんだけど……あの人もなにか関係しているのかなって」 「母さん、その人人間だった!?」 慌てて詰め寄ると、母さんはぎょっとしながら身を引く。 「いや、人間だったって……デジモンじゃないわよ。ていうかデジモンだったら大騒ぎになって」 「じゃあ外見は! こう、青いコートに長帽子をかけてるとか!」 「紫のコートは着てたけど帽子は……え、タケルの知り合い?」 「違う、違うけど」 まさか僕達の周囲に……でも及川悠紀夫? 偽名なのかな。……だとしても調べた方がいいかも。 ただ僕にはそういうツテが全くないので、ここは頼れる友達の力を借りよう。三本の矢もなんとやらだよ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 母さん達に心配されながらも、夕飯を食べ終え……俺達は一緒に寝室へ。 ヒカリはやっぱり不安を拭えないようで、勉強机に座って黙りこんでいる。 テイルモンとアグモンはベッドからその様子を見守り、俺は……兄としてきつい事を言い放つわけで。 「どうするんだ」 「うん」 「このままじゃすまないぞ」 「……分かってる」 結果返ってきたのはこんな、気の抜けた返事。しょうがない、んだよな。分かってはいるんだ、ヒカリならこうなる。 ヒカリが望んでいるのはこんな事じゃないだろうから。……ベッドにもたれかかりながら、ついため息を吐く。 「大輔達は戦うと言っても、今まで敵のリングやスパイラルを壊す事しかしていなかった。 ダーク・タワーデジモンだって同じだ。少なくとも大輔達が倒した時は、タワーの変化形という認識」 「ブラックウォーグレイモンは……やっぱり、特殊例なのかなー」 「そうなっちまうな」 悲しげなアグモンに悪いと思い、頭を撫でて落ち着かせておく。……そう、大輔達の『倒す』はそこ止まりだ。 命を奪うようなやり方は絶対しないし、助けるための戦いという前提があった。 ダーク・タワーデジモンに関しても、言い方は悪いがどこかで言い訳をしているのかもしれない。 相手がザクなら人間じゃないんだーって感じでさ。もちろんそれが悪い事だとは言わない。 てーかそれが駄目だって言うなら、アグモンはここにはいない。みんな、操られたり傷ついたデジモンを助けるために頑張っていた。 それは今日の事だって同じだ。戦う事になったとしても、その前提だけは抜かなかった。 それが大輔達、二〇〇二年の選ばれし子ども達が持ついいところだ。でも……これからはそういかないかもしれない。 覚悟が必要になる、そう感じているんだ。今までとは違う、絶対的な闘争が待っているってさ。 それはヒカリも……もちろんヤマト達だって同じだ。このタイミングで完全体以降の進化が解禁されたのは、幸運と言うべきか。 「でも太一、私達は『キメラモン』を倒している」 「倒しているな。お前とパタモン、ヒメラモンにブイモン……それと恭文で」 「……つまり、全員じゃない」 「でも今回逃げ場なんてないかもしれない。三年前、俺達がそうしたように……本当の意味で、デジモンを倒すために戦う時がやってくる」 そこでヒカリの肩が大きく震える。……コイツが恐れているのはそこだよ。 前提そのものが違う、敵方の改心なんて期待できない戦いが待っているんだ。今までは幸運とも言える。 デジモンカイザーは改心し、一乗寺という元の自分を取り戻せた。 ブラックウォーグレイモンだって恭文と殴り合いやって、改めて自分ってやつを考えるようになった。 だけど……そうだな、俺も不安だ。そういう戦い方をやるしかなくなった時、本当にアイツらは戦えるのかってさ。 しかも今回はデジタルワールドじゃないかもしれない。現実世界で、他の人達もいる状況で戦う場合だってある。 そうなった場合、俺達はどうするべきなんだろうな。そういう覚悟を持てって……それじゃあ押し付けか。 結局できるのは決める事だけだ。もしそれで戦えないという選択が下されたのなら、それはしょうがない事だ。 どんなに悪いデジモンだろうと、そんなのはごめんだ。でも俺達はもう、覚悟を決めちまってる。 決断を迫られた時、迷った瞬間大事なものが失われると分かった時、その脅威となる相手を倒す――そういう覚悟はさ。 そうだな、アグモンが攫われた時と同じだ。ベッドからアグモンを抱え起こし、思いっきり抱き締めてやる。 「まぁ駄目な場合は、ダーク・タワーとかを壊してもらえばいいさ。幸いな事に究極体へも進化できるようになった」 「いざとなったらオメガモンかなー、太一ー」 「あぁ、そうだな」 「……それで、いいのかな」 「いい悪いじゃない、決めるか決められないかだ。アイツらが無理と判断したなら、その選択には価値がある。俺はそう思っている」 ヒカリがようやくこちらを振り向くので、安心させるように頷いてやる。それでヒカリは、ぎこちなくだけど笑顔を取り戻した。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ まさか日帰り世界旅行をするハメになるとは……ていうか、フェイトに至っては世界一周だよ。 リインフォース達はクロノさん達と厳戒態勢へ突入しており、アースラで缶詰。 僕達は……都内のホテルを取り、そこで一緒にお泊まり。今自宅へ戻るのはいろいろまずい。 でもこれから入室というところで、クロノさんからまた連絡。廊下でフェイトと顔を見合わせる。 しょうがないのでフェイトとヒメラモン達には入ってもらい、僕はまた外へ。雑踏の中、サウンドオンリーでかけ直した。 『……ようやくかけ直したか、馬鹿が』 「いきなりですねぇ。一体どうしたっていうんですか」 『それはこちらのセリフだ。この緊急事態になにをしていた』 「フェイトとデートですけど。ていうか大変な事になってたんですね、渓谷でイワナ釣りしてたから、全く気づきませんでしたよ」 『ほう……では乱立したモノリスの周辺で、魔力反応が出たのはどういう事だ』 「勘違いでしょ、変な事が起こってたんですから」 これで納得……してくれるわけがないよねー。正直今はかなりデリケートな状況だし、局も信用できないんだけど。 街中を歩きながら、クロノさんには聴こえないようため息を吐く。 『恭文、正直に話してくれ。君とフェイトはあの現地生物についてなにか知っている。 今日もその対処に迫られていたし、現地生物が突然消えたのもそのせいだ。 ……僕達は情報を求めている。君達がそれをくれれば、穏便な対応も十分に可能なんだ』 「だからなにも知りませんって」 『事情があるようなら、こちらでも配慮はする。とにかく局としても見過ごせないんだ。 あの黒いモノリスのせいで、地球周辺に位相の乱れまで発生している」 ち、そこまで読まれてるのか。こりゃリインフォース達が口を割るのも時間の問題だな。 ……しょうがない、ここはクロノさんをうまく言いくるめて、動きにくくしておこう。 てーか管理局の介入だけは避けたいのよ。ヘタをすれば事件の決着を奪われて、そのままデジモン達は管理局に登用されかねない。 正直今日のIS部隊『暴走』を見ていたら、どうしてもね。この件はやっぱり、組織の力は借りずに決着させたい。 「しょうがないですねぇ。なにも知らないですけど、仮に知っていたとしましょうか。 それでもクロノさんには説明しません。てーか今回に限っては信用できない」 『恭文』 「だってクロノさんの周囲に、この件の犯人がいるかもしれないじゃないですか」 クロノさんは『馬鹿な』と言いかけるけど、その意味をすぐ理解してくれる。……そう、局内に犯人がいる可能性もある。 一応ね、可能性の一つとして考えていたんだ。例えばデジタルワールドを壊し、デジモン達を現実世界へ強制移住。 そうして出てきたデジモン達を戦力として、いいように使う……とかさ。 管理局ならそれくらい内密にできそうだもの。無論それだけじゃあないよ。 「クロノさんが言う位相の乱れなんて、普通にやっていて起こせるものじゃない。 僕は悲しいかな、そんな科学力を持った世界と組織を一つしか知りません」 『馬鹿な……! いや、それなら局内で事件のデータが消されていたのも』 あー、そっちはゲンナイ達だな。なんかデジモンが悪用されないよう、情報統制してたっぽいし。 「なら決定ですね。もちろん僕は今言ったようになにも知りません。 知っている事があるとすれば、クロノさんが配慮してくれるという事だけ。 だとしても今回は頼れませんよ。なにも知らないけど、そこだけは分かります」 『……分かった。なら君はなにも知らないし、フェイトと釣りをしていただけ。そういう事なんだな』 「えぇ。じゃあそういう事で、僕達はしばらく釣り行脚してますんで」 『こちらの事は心配しなくていい。ただリインフォース達は預からせてもらう、厳戒態勢は継続中なんだ』 「分かりました、よろしくお願いします」 そこで通話は終了――よし、これでクロノさんは内も疑って、うかつな行動は取れなくなる。 え、ひどい? なにを仰るうさぎさん。今言ったでしょうが、僕の中で管理局――次元世界絡みは一番疑わしい存在なのよ。 違う可能性もあるけど、どうしても警戒しなきゃいけない相手。きっとクロノさんはそれについて調べてくれる。 僕、暗に言ってるもの。『詳細は言えないけど、そう疑ってしまう要素が大量にあるんです』ってさ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ クロノさんとの交渉はうまくいったので、みんなが待つ宿泊部屋へ。 お風呂に入って、くっついてラブラブして……僕はお風呂あがりなフェイトにマッサージ開始。 うつ伏せに寝転がるフェイトへ乗っかり、背中を丹念に揉み込んでいく。フェイト、目立ってないけど一番負担かかってるもの。 世界中のダーク・タワーを一つずつ潰していったわけで。これくらいはしないといけません。 ベッドが一つだけの部屋は若干手狭だけど、都内にいた方が利便性はある。 なによりクロノさんが僕達を捜そうとしても、このやり方なら無理が生じる。こっちでは一般人だよ、みんな。 それで宿泊情報などをどうやって調べるのかと。多少アウトコースを走らざるを得ないのは確か。 サーベルレオモンは床に寝そべりあくびをし、ヘイアグモンはベッドの脇に座って足をもみもみ……労っている労っている。 「あぅ……ヤスフミ、ヒメラモン、気持ちいいよぉ」 「ならよかった。でもありがと、目立たない上に大変な仕事引き受けてくれて……僕もなんとかしたかったんだけど」 「ううん。その辺りの話は」 「また番外編で出すよ」 「メタいよ!?」 それも許してほしい。このままいくと五回ほど時を遡らなきゃいけなくなるもの。 まぁそれはそれとして……やっぱ疲れてるなぁ、フェイト。大輔じゃないけどちゃんとご褒美はあげないと。 「でもどうしようか。リインフォース達は動かせないから、これ以上の戦力増強は認められない」 「十分だと思うけどね。僕達だけならともかく、世界中の仲間がいるもの」 「……お前は局の中に犯人がいる、そう考えてるのかよ」 「もしかしてって感じだけどね。ていうかショウタロス、おのれ気づかなかったの? 体がプログラムとして構築され、実体化しているそれはアバター同然。 どれだけアバターが破損しても、マザープログラムさえ無事なら復元可能」 「アルケニモン達の事だよな。そんなのはとっくに承知……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 だから承知してないっつーの。ついシオンと一緒に大きくため息。 「恭文、すまん……オレにも説明を。どういう事だ」 「シグナムさん達と同じなんだよ、それ。みんなもアバターと言えばアバターだから」 「……なるほど、次元世界側の技術と類似点があるからこそと」 「やってる事がそれくらい高難易度なのは間違いない。問題はそんな技術を用いながら、やってる事が見えないってところ。 例えば管理世界の人間なら、管理局に悟られないよう……って感じなんだろうけど」 ≪この期に及んでなにをしたいかが見えないって、ちょっとおかしいでしょ≫ 「でもだからこそ分かる事もあるよ。やろうとしている事は単純な世界征服とかじゃない。 それならダーク・タワーデジモンを持ち出し、遠慮なく攻撃すればいいもの。やっぱりダーク・タワーがあるからこそ起こる現象に答えが」 そこで携帯が鳴るので、フェイトに断ってマッサージ中断。右手で携帯を取り、通話ボタンを押す。 「はいもしもし」 『恭文くん、タケルです。今大丈夫かな、ちょっとお願いがあって』 「珍しいね、おのれが僕にお願いなんて。……一応聞くけどボケた方がいい?」 『そこを確認する時点でおかしいってどうして思えないのかな! とにかく今回はギャグなし。及川悠紀夫という人について調べてほしいんだ』 そこでかくかくしかじか――メモを取りながら、少々険しい顔をしてしまう。 「どういう事? マミーモンとかじゃ」 『直接見たわけじゃないから判断できない。でももしかしたらそれが黒幕とか』 「OK、ツテを頼るから一時間ちょうだい。とりあえず頼った結果だけはすぐ報告する」 『ごめんね、疲れてるところ』 「いいっていいって。こういうのは僕のお仕事だから。じゃあまた」 電話を終了し、まずは……やっぱり美沙斗さんかなぁ。香港警防隊に電話してっと。 「人間、なにか分かったのか」 「タケルのお母さんに、及川悠紀夫ってのが接触したそうなのよ。それで三年前の事件はまだ終わってないとか。 しかもソイツ、光が丘やお台場の霧事件についても調べてたみたい。それで以前一度話を聞きにきた」 「それはまんまお兄様ですね。それだけならまだ……待ってください、その接触はいつですか」 「クリスマスイブより前だよ。以前一度ってのも、太一さん達が冒険した直後みたい」 フェイトまで起き上がり、ヒメラモン達と顔を見合わせる。……ね? 偶然と片付けるには惜しい状況でしょ。 美沙斗さんに連絡したところ、快く調査してくれる事となった。もう頭が上がりません。 (第35話へ続く) あとがき 恭文「というわけで次は奴らが登場……どうまとめようか」 フェイト「そ、それより他の子達はー!?」 恭文「ごめん、何回も時間巻き戻しは辛くて」 フェイト「ふぇー!?」 (でもどこかのタイミングでは出したいです) 恭文「今回のお相手は蒼凪恭文と」 フェイト「フェイト・T・蒼凪です。えっと、デジモン達はなんとかなったけど」 恭文「厄介な介入をしそうな方々とか、暗躍するアルケニモン達とか……面倒の種が増えていく」 (そして状況から大まかな事を推察するリンディ&レティ) 恭文「フェイトも見習った方がいいよ、あれ」 フェイト「わ、私だって執務官だったからそういうの得意だよ?」 恭文「……へー」 フェイト「疑わしく見ないでー! うぅ、また意地悪するー!」 (ぽかぽかぽかー!) フェイト「というか、読者のみんなは知っているはずだもの。うん、知っているよね」 恭文「……ツッコミどころしかないでしょうが。それはそれとして、コミケお疲れ様ー。 天気が崩れ気味だったせいか、熱中症で運び込まれた方もいなかったそうです」 フェイト「そういえばヤスフミ、マイケルって」 恭文「こっちだと初登場だけど、シュリモン進化回に登場している子だよ。そちらの方はアニメでチェックチェック」 (やりますしね、新シリーズ) 恭文「そして作者はせっせとAGE-1の改良を……左肩と右足がアデルのものとなり、リペアU状態となりました」 フェイト「つまり」 恭文「次の戦い、左肩と右足がぶっ飛びます」 (フェニーチェ方式です) 恭文「それと幕間第二十四巻、販売開始しております。ご購入いただいたみなさん、ありがとうございました」 古鉄≪ありがとうございました。……今回はひたすらに策謀が≫ 恭文「戦闘力じゃサーヴァントには絶対勝てないしね。仕方ないね」 (なので頭を使い、状況も利用して封じ込めていきましょう。 本日のED:AiRI『Imagination>Reality』) あむ「恭文、ところでアドバンスド・ヘイズルは」 恭文「お、そうだ。そろそろあれも作らないと。キット買って、そのままだしねー」 フェイト「これで私も、大会で大暴れだよ。うんうん」 恭文「……練習はしようね。あと大会はエントリー締め切ってるから」 フェイト「えぇー!」 あむ「いや、当たり前じゃん!」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |