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「練習見に行くの、よした方がいいかな…?」
歩き始めてほどなくして、紗恵がつぶやくように言った言葉に、俺はハッとした。
急に、今朝の会話が蘇ってくる。
”一緒に歩いてて、恥ずかしい思いさせてるんじゃないかな”
「ごめん」って、「恥ずかしかった」って、そういうことか!?
それに気づいて、自分の失言にも気づいた。
俺の言った「恥ずかしかった」ってのは、そういう意味じゃない。
どう説明しようか考えているうちに、
「一緒に帰る日は、自主練、できないんだよね…?」
紗恵は追い討ちをかけるように、つぶやいた。
これは、歩きながらじゃ、ちゃんと話できないな…
駅も、この時間だとそれなりに人が居るし。
電車に乗ってしまったら絶対にムリだし。
駅へ向かう小さな三叉路にさしかかった時。
曲がろうとする紗恵を引き止めるように手を引いた。
「今日、少し遅くなっても平気?」
驚いて俺を見上げた紗恵は、俺の言葉に更に驚いたようで。
俺を見上げてくる顔は、キョトンとしてて。
何度か瞬きを繰り返した後、頷いてくれた。
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