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何が、ごめんなの?
もう少しで、今朝と同じセリフを言ってしまいそうになったけど。
寸前で飲み込んだ。
今朝の「ごめんね」の意味は、分かってたから。
分かってたけど、敢えて聞いた。
けど。
今の「ごめんね」に、思い当たるコトは無い。
今度は紗恵の言葉の続きを、じっと待った。
「恥ずかしかった、でしょ…?」
紗恵はそれだけ言うと、今度は俺から視線を反らしてしまった。
…恥ずかしかった…?
そりゃ、イキナリあれだけイジられりゃ、それなりに。
居心地悪いというか。
恥ずかしいというか。
「んー。まぁ、恥ずかしかった…かなぁ…」
別にいいんだけどさ。
そのうち、皆も慣れてしまえば何も言わなくなるだろうし。
でも。
それと、紗恵に謝られるのは、どうやっても結びつかない。
紗恵は、ずっと俯いたまま。
ふと、人の声が聞こえてきて、声のほうに視線をやると、門から人が出てきたのが見えた。
バスケ部のヤツじゃなさそうだけど。
駅方面に向かうヤツが必ず通る道だから、そのうち先輩たちも来るだろう。
こんなトコロで立ち往生してるのもな…
鉢合わせたら、今度こそ紗恵も巻き込んでイジられるに決まってる。
できれば、今はまだ、そんな状況は避けたい。
見られただけでも隠れてしまってたのに。
ここじゃ、逃げ場も無いし、かわいそうだ。
俺は仕方なく、紗恵の手を少し引いて。
「紗恵、歩きながら話そうか?」
俯いたままだったけど、小さく頷いたのを確認して。
また、ゆっくりと歩き始めた。
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