17
いつもなら、歩き始めてすぐに俺の方から話し掛けるのに。
しばらく黙っていた。
小さな紗恵の手は、俺の右手にスッポリ納まってて。
手をつないでるっていうより、俺が握り締めてるように見えなくもないんだけど。
でも、親指の付け根に引っかかるように、少しだけ出てる紗恵の指先が、ちゃんと、俺の手を握り返してくれてるのが分かるから。
今の状況が嬉しくて。
紗恵も同じように思ってくれてたらいいのに、とか考えてたら。
「頭、もう痛くない?」
不意に、紗恵に話し掛けられた。
「え!?」
紗恵のことばかり考えてたせいもあるけど。
たぶんそれが大半の原因だけど。
でも、紗恵から話し掛けられるってのが、今までほとんど無かったから。
ビックリして、思わず立ち止まって聞き返してしまった。
俺に合わせて立ち止まった紗恵は、また首をかしげて俺を見上げている。
あ”−−−。
なんだろう。
その仕草、マジでヤバイんだけど。
さっきもしてたけど、もしかして、紗恵の癖なのか?
誰にでもやってるワケじゃねェよな?
何も言わないうえに紗恵をガン見してる俺に、紗恵の表情が少し曇る。
「もしかして、まだ辛いの? そんなに強く殴られちゃったの?」
「ぁー。いや、大丈夫だよ」
慌てて返事をしたら、紗恵はホッとした表情になった。
みんなの視線からは隠れてたけど、俺が殴られたのはしっかり見てたらしい…。
俺…ダサ……
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!