16
先輩と伊部の後姿を、半ばぼんやりと見送って。
ふと紗恵のほうを見ると、少し首をかしげて俺を見上げていた。
その仕草に。
その表情に。
ヤられ気味の俺。
触れたい、抱きしめたいって気持ちを。
ここは学校、ここは学校、ここは学校。
そう思って、なんとか抑えた。
「俺らも、帰ろ」
「うん」
笑って頷いた紗恵に、手を差し出す。
紗恵は、少し恥ずかしそうに、でも、ちゃんと応えてくれた。
手をつないで歩く。
たったそれだけのことが、すげー嬉しくて。
いつもより余計にゆっくり歩いた。
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