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5


練習前のランニング中に、二階スタンドの隅に目を遣る。


いつもの習慣、というより、もう癖に近い。


紗恵と付き合い始めるよりももっと前。
入部してしばらく経った頃、紗恵が練習を見に来ているって気づいてから、ずっとだ。


別に、キョロキョロしたり、じっと見つめたりしてるわけじゃない。
練習中に余所見してたら、マジで殴られそうだし。
極力、不自然な感じにならないようにしてきた。



いつもの場所に紗恵の姿を確認して、小さく安心して視線を戻した。
いつものとおり、自然に…

と思ったら、隣を走っていたヤツに軽く小突かれた。

「何だよ…」

「アレ?」

小さく、紗恵の方を指差している。

目ざといな…


途端に、周りのヤツらがそっちを見た。


「どこ?」
「どれ?」
「どっち?」
「ちっちゃい方」


「何見てんだよ!」

思わず、また紗恵の方を見上げたら、ちょうど友達の後ろに隠れるところだった。


「あ、隠れた」


そりゃ、隠れたくもなるだろ!!

見てんじゃねェよ!!


なんとなくムカついてきたところへ、先頭を走っていたキャプテンがペースを落として近づいてきた。


「何やってんだ!」


ヤベっ!


俺も周りのヤツらも、慌てて前を向いた。





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