20
”デブ専”
そんな言い方されるなんて、考えてもみなかった。
私が、自分の体型の事でいろいろ言われちゃうのなら、それは仕方の無いことだけれど。
遠藤君まで、そんなふうに言われるなんて。
悲しくて、怖かった。
「麻美ちゃん、今日は、帰る、ね」
涙が出そうになるのを一生懸命こらえて、言った。
床に置いていた鞄を取ると、麻美ちゃんも鞄に手を伸ばそうとしていたから、慌てて止めた。
「大丈夫だから…」
「ぜんぜん大丈夫じゃないでしょ!」
麻美ちゃんも、泣きそうな顔してた。
私のせいで、こんな顔させちゃってる…
「ひとりに、なりたいから…」
一人になるのは、怖いけど。
一緒にいてもらったら、この前以上に甘えてしまうと思うから。
精一杯、強がるしかなかった。
「今日は先輩と帰る日なんでしょ? 待ってなきゃでしょ?」
「紗恵だって、今日は一緒に帰るんじゃなかったの?」
「……メール、しとくから、大丈夫」
それだけ言って、くるりと麻美ちゃんに背を向けて、走り出した。
「紗恵!」
麻美ちゃんの呼ぶ声が何度か聞こえた気がしたけど。
振り返らずに必死で走って、体育館を出た。
そこから、どうやって家まで帰ったのか、よく分からないくらい私の頭の中はぐちゃぐちゃで。
部屋に入ってすぐに、ベッドに倒れこんだ。
ショックと、悲しさと、怖さと。
今まで溜め込んでいた不安と。
いろんなことが相まって、どんどん涙が溢れてきた。
泣いても泣いても、止まらなくて。
部屋が暗くなってしまうまでずっと泣いて。
いつの間にか、泣きつかれて眠ってしまっていた。
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