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いつもと同じように、今日も麻美ちゃんとバスケ部の練習を見に行く。


体育館に近づくと、なんとなくチラチラと見られているような気がして…

落ち着かなくて、俯いた。


気にしすぎなんだと思いたいけど。
最近、女の子の視線が気になってしまう。



たぶん。

遠藤君とのことが、少しずつ噂になって広まっているんだと思う。



遠藤君は、目立つのに、あんまり人目を気にしてなさそうだし。
というか、目立っているという自覚が無さそうなんだけど。

一緒に帰ったり、お弁当食べたりしてたら、噂になって当たり前で。



見られたり、ヒソヒソされたりすることに免疫が無い私にとっては、かなりのストレスにもなっていた。



立ち止まってしまいそうな私の手を、麻美ちゃんが、きゅっと握って、引っ張ってくれた。





体育館に入って、2Fスタンドに着くまで、麻美ちゃんは手をつないでいてくれて。

隅っこのほうに二人で並んで座った。

「遠藤君、人気者だもんね。大変だね…」


麻美ちゃんがポツリと呟いたとき、私たちの前に数人の女の子がやってきた。



「ねぇ」



声をかけられて、私も麻美ちゃんも顔をあげる。

制服のリボンの色が2年生のものだった。

時々、先輩に場所を譲らされるコトがあるって聞いたことがあって。
それかな、って思って立ち上がると、麻美ちゃんも同じように立っていた。


ペコリと会釈をして移動しようとしたら、一人の先輩が、私の前に腕を出してきた。


結局、移動することもできず。

チビの私は、先輩方と向かい合って、というよりは囲まれて見下ろされるような状態になった。



「遠藤君と付き合ってんの?」



ものすごいストレートな質問。

威圧的な雰囲気に、完全に怖気づいている私は、何も答えられなかった。


「何でなにも言わないの? 聞いてるだけじゃん」

「やっぱ、この子がつきまとってるだけじゃないの?」

「同中だかなんだか知らないけど、ずうずうしくない?」


黙っている私をそのままに、勝手に会話が進んでいく。



付き合ってます、って……自信を持って言えたら……


そう思ったけど。
言えるはずもなく。



「でさぁ、どうなの?」

また、私の方に質問が戻ってきた。

それでも何も言えないでいると、フロアのほうがいつのまにか騒がしくなっていて。

先輩たちの意識は、そちらに向かい始めていた。


「アキ、もういいじゃん。練習始まっちゃうよー」

「遠藤君がデブ専とか、ありえないしぃー」


アキと呼ばれた先輩は、納得のいかなそうな顔だったけど。
周りに促されるままに私に背を向けて、フロアが良く見える方へと移動し始めた。



「ちょっと……!!」



少し離れたところで居た麻美ちゃんが、急に先輩たちの方に向かって行こうとしているのが視界に入った。

慌てて、麻美ちゃんの腕を、縋るように掴んだ。

「紗恵! 何するの。あんなこと…!!」

麻美ちゃんが、すごく怒ってくれているのは分かったけど。
こんな所でモメちゃったら、練習を見に来られなくなるかもしれない。

私のことで麻美ちゃんに変な迷惑もかけたくない。


麻美ちゃんの腕を離さないまま、何度も「だめだよ」って首を振った。




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あきゅろす。
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