15
あっという間に近づいてきた人影は、遠藤君だった。
「久田! 見つけた… ハァ…」
私の目の前まで走ってきた遠藤君は、膝に手をついて少し乱れた呼吸を整えている。
シャワーを浴びた後の髪は乾ききっていなくて。
もしかして、急いで出てきてきたのだろうかと、申し訳ない気分になった。
「大丈夫?」
「ぉう。ごめんな、一方的に待っててとか言っちゃって」
体を曲げているせいで、私の目の前にある遠藤君の頭に向かって声をかけると、遠藤君は、ひょぃと背筋を伸ばした。
見下ろされ、見上げる格好になったけど。
心なしか、遠藤君の顔が近いような気がする?
「待っててもらう所とか、何も言ってなかった事、練習終わった後に気づいたんだ。
焦った……ごめんな」
「私も、どこに居たらいいか聞かなかったし」
薄暗くて顔はよく見えないけど、何度も謝る遠藤君に「もういいよ」と笑いかけることができた。
待ち合わせる場所を伝えてないことに気づいた遠藤君は、ダッシュでシャワーを浴びて。
体育館の前まで行っても私は居なくて。
まだ帰っていなかった女の子たちに、私のことを見かけていないか聞いて回ったんだって。
そうしたら、私が帰っていったと教えてくれた子がいたらしくて。
またダッシュで校門を出て、運良く私を見つけてくれた。
「ごめんね、練習の後なのに走らせてしまって…」
今度は私が謝った。
おとなしく、体育館の前で待っていれば良かった。
もう少し、頑張れば良かったのに。
「ごめんね」
「いいよ。ちゃんと会えたから」
そう言って、遠藤君は笑ってくれた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!