11
遠藤君が練習に向かう後姿を見送った後。
ボーっと歩いて体育館にたどり着いたけど。
いつもなら…、さっきまでなら、ドキドキしながら上っていたはずの、2Fスタンドへの階段。
その手前で、座り込んでしまった。
去り際に「帰り、待ってて」って言われた。
どうしよう…
嬉しさよりも、困惑が先に立って、泣きたくなってきた。
彼のいるコたちは、みんなこんな経験をするの?
これって、必ず通らなきゃいけない道?
どうしてこんな時に、私、一人なんだろう…
麻美ちゃん……たすけて……
カバンから携帯を取り出して、震える指で履歴から麻美ちゃんの番号を選んだ。
───プルル………
「もしもーし」
「あ、麻美ちゃん……どうしよぅ……」
ワンコールで麻美ちゃんの声が聞こえてきて。
声を出したら、溜め込んでいた気持ちが一気に溢れ出たような気分だった。
「えっ? どうしたの? 何かあったの?」
第一声から、意味の分からない言葉だったのに。
麻美ちゃんは、そばに居るときと同じように優しい。
彼女の声に安心したせいか、涙が出てきた。
泣いてしまったせいで、ますますうまく喋れない私のことをなだめてくれて。
涙が止まるまで待ってくれて。
「ごめんね、麻美ちゃん。今日、用事あるって言ってたのに」
気が付いたら、携帯の通話時間は20分を超えていた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!