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恋話の棚ニャ!
エピローグ
少し冷めた風が窓から入ってくる。

「…さ…むい…ぞ」
突然の声にオレは慌てて振り向いた。
二度と目を覚まさないと言われていた由香里が微かに頬を膨らせて言った。
「ちきしょ〜、独り言聞いてんじゃね〜よ」
そう言ったオレの目から、抑えられない涙が溢れた。
「…」
「な、何でもねぇよ、先生呼んでくるから、大人しくしてろよ」
オレは袖口で涙を拭きながら言うと、病室を出た。

「よっしゃ〜!」
病室を出ると、トイレに駆け込んで、鏡に向かってガッツポーズした。
「ったく、いつまでも待たせてんじゃねーよ」
嬉しくて、嬉しくて、泣きながら笑いが出てくる。
胸が震えて止まらない。
一生の内でこんなに嬉しいことは2度とないと思う。
「ったく、言いたいことが、山ほどあるんだからな、覚悟してろよ」
何度も深呼吸をして、何とか心を落ち着かせると、トイレを出て、ナースステーションに向かった。

「目を覚ましたんだよ!」
オレはナースステーションに飛び込むなり叫んだ。
「あんたねー、寝ながら歩いたらケガするわよ(汗)」
仲良くなった看護士が呆れた顔で言った。
「ちげーよ、由香里が目を覚ましたんだよ」
「マジ!ちょ、何でコール鳴らさないのよ!」
看護士は慌てたように言うと、受話器を慌ただしく取った。

それから、医者や看護士が団体さんで病室にやってきた。
それから少し遅れて、由香里の両親が部屋に走り込んできた。

「奇跡だ…」
医師は由香里がベットで体を起こしているのを見て目を丸くして言った。
「進行を遅らせるくらいしか治療法が無かったのよ…意識を取り戻すなんて…」
看護士達も、ただただ驚いていた。

「…検査をしないと、何とも言えませんが…」
医師は難しい顔をして言うと、病室を出て行った。
「はぁ…愛の力ね…あ〜も〜あたしも愛がほし〜」
看護士達は口々に言いながら病室を出て行った。

「もう、ダメだと思ってたのよ」
「神様でも悪魔でも、感謝するぞ」
由香里の両親は涙ながらに言った。

「おい…」
「あっ、そうね…あ〜、責任とってくれるなら、いくらでも手を出していいわよ」
由香里の母親はいたずらっぽく言った。
「おい(汗)」
「いいわけないだろ!?」
由香里は布団を頭まで被って言った。
由香里の両親が病室から出て行くと、しばらく沈黙が続いた。

「…帰って来たぞ…」
布団の中から由香里の声がした。
「…1年とか…寝すぎだろ(汗)」
オレは呆れた顔で言った。
「仕方ないだろ、そう言う約束だったんだから」
由香里は布団から出てきて言った。
「ってことは、お前のとこにも…」
オレがそう言うと、由香里は小さく頷いた。
「あなたを想い続ける人が毎晩星に願い続けるなら、1年後あなたに奇跡が起きるでしょうって言われたぞ。…で、話って何だよ」
由香里は上目遣いで、オレをチラチラ見ながら言った。
「うっ…そ、それはだなぁ…だ〜、オレはお前が好きなんだよ」
「ずいぶん乱暴な言い方だなぁ…ってか、だ〜ってなんだよ」
由香里はほっぺたを膨らませながら言った。
「いや、だから…ちょ、ちょっと待てよ、うん、初めからだ。す〜は〜…お帰り…ずっと、ずーっとお前のことだけ考えてた。すんげー怖かった。もし、目を覚まさなかったら…アイツが嘘ついてたらって…。お前はオレの一番星なんだから、一番側に居てほしいんだ」
「…ボクの方が、ずっと、ず〜っと前から好きだったんだぞ。バカ…言うのが遅いんだよ〜」
由香里はオレの胸に顔を埋めると、涙を流しながら言った。
オレはそっと抱きしめて、柔らかな髪を何度も撫でた。
「そうよ、そこで、ぶちゅ〜っと」
「…」
「ごめん」
由香里はオレの腕から抜け出すと、入り口の扉を勢いよく開けた。
「あっ…見つかった」
由香里の母親は、慌てた様に、由香里の父親の後ろに隠れた。
「ボク達…わ、私達は、付き合うことになったんだから、邪魔しないでよ」
「くぅ〜、ついにこの時が来たのか。父さんは、お前の幸せを一番に考えてるぞ」
そう言った由香里の父親の目は、オレを睨んでいる様に見えた(汗)
「隆行に何かしたら、お父さんのこと嫌いになるからね」
「な、何もするわけないだろ、なー隆行君」
「あはは(汗)」
「隆行君、由香里のことよろしくね」
由香里の母親は、微笑みながら言った。

「何でだよ〜、許可出てるんだろ?」
オレが帰ると言うと、由香里が口を尖らせた。
「今までとは状況が違うんだから、このまま一緒にいる訳にはいかないだろ」
「そーだぞ、由香里。間違いがあったらどうするんだ」
由香里の父親は、腕を組んで頷きながら言った。
「な、何もあるわけないだろ。お父さんのスケベ」
由香里は赤い顔で由香里の父親を睨んだ。
「いや、ほら、だから…」
「はいはい、お父さんも若い頃、さっさと手を出したでしょ。後は若い二人に任せるわよ」
由香里の母親は、由香里の父親の腕に腕を回すと、引きずる様に歩き出した。
「いや、でもだな…」
「はいはい」
由香里の母親は…強かった(汗)
二人が出て行ってから、しばらく沈黙が続いた。

「ここから見上げる星空は、すんごい綺麗なんだよ」
オレはほっぺたを膨らませている由香里の前を通り過ぎて、窓際に立って空を見上げた。
「…」
由香里はチラッとこっちを向いたが、相変わらずほっぺたを膨らませたままだった。
「…はぁ、オレの負け、一緒に星見ながら話でもするか?」
「ホント!えへへ」
由香里はオレの隣に来ると、ぴったりくっついて、上目遣いで微笑んだ。

1週間後、検査は何も異常は無しと診断された。
オレの隣には、笑顔の由香里が居る。
「こら〜どこ向いて、独り言いってんだよ〜」
「独り言じゃない。予行練習だ」
オレは由香里の髪をクシャクシャと撫でながら言った。
「何の予行練習だよ〜」
由香里はほっぺたを膨らませて言った。
「そんなの決まってるだろ」
オレは一気に由香里に顔を近づけると、キスをした。
「ん〜!?」
由香里は一瞬目を大きくしたが、オレが離れようとしないので、諦めた様に目を閉じた。
「オレの一番星は、由香里だからな…」
「ボクの…あたしの一番星は隆行だからな…」
赤い顔で言い合う二人を、太陽がやれやれと見つめていた。

《おしまい》


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