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恋話の棚ニャ!
夏祭り
そう言えば、夏祭り一緒に行ったなぁ…。

「隆行、優しいボクから、一つ提案してあげるよ」
ある日の放課後、帰り支度をしていると、由香里が声を掛けてきた。
「あ〜忙しい忙しい」
今日は夏祭りだ。何かを手伝わされたらたまらないと、わざと忙しい振りをして見せた。
「こら〜聞けよ〜」
由香里はオレの服の裾を引っ張りながら言った。
「どうせ何か手伝えとか言うんだろ」
「違うぞ、一人寂しい隆行と、一緒に夏祭りに行ってやろうと思ってるだけだぞ」
由香里は上目遣いに言った。
「ふむ、オレは寂しくないし、夏祭りには、友達と行く。じゃあな」
オレは由香里の手を払いながら言った。
「う〜、一緒に行ってやるって言ってんだから、うんて言えよ〜」
由香里はほっぺたを膨らませながら言った。
「お前が一緒に行くヤツがいないんなら、一緒に行ってくださいだろ?」
オレは由香里の頭をグリグリと撫でながら言った。
「う〜」
由香里は上目遣いでオレを睨みながら唸った。
「隆行、一緒に行ってやれよ」
一緒に行くはずだった、悪友の真治が肩を上げながら言った。
「いいや、真治との約束が先だったし…」
「はぁ〜」
オレが言い掛けた時、クラスの女子がため息と共に、オレを取り囲んだ。
「な、何だよ(汗)」
「行くわよね、由香里と?」
クラスの女子のリーダーの一言に、取り囲んでいた女子が頷きながら迫ってくる。
[ゴクリ]
「は、はい…行かせてもらいます(汗)」
オレは迫力に負けて頷いた。
「由香里、良かったね〜楽しんでくるんだよ〜」
一瞬で緊張感が解け、クラスの女子達は、由香里を取り囲んで騒ぎ出した。

「ぼ、ボクは何も頼んでないからね」
教室を出てから、由香里はチラチラとオレを見ながら言った。
「別にいいけど…こうなった以上、こちらからも要請があるぞ」
「な、何だよう?」
由香里は不安そうに言った。
「絶対浴衣、しかも色っぽいやつ」
「ば、バカだろ、ボクに色気を求めるなよ…」
由香里は真っ赤な顔で言った。
「てか、元が良いんだから、普通に浴衣着たら似合うだろ?」
「うっさい、神社の前に7時に待ち合わせだからな。遅れんなよ」
由香里は耳まで赤くして走って行った。
「全く…」
小さくなって行く由香里を見つめてため息を吐いた。

「隆行、今年はどうするの?」
「と、友達と行くから…」
オレは言葉を濁しながら言った。
「あ〜いまどもった!パパ〜隆行が女の子と…」
[ドタドタドタ]
母親は居間を走り出して行った。
「はぁ〜」
オレはため息を吐きながら、部屋に戻った。

「浴衣で来るかなぁ?…水着で?…ってリオのカーニバルじゃねーよ」
ベットに寝そべったまま、自分で突っ込みを入れた。
どうやら、かなりテンションが上がっているらしい(汗)
女の子と2人で祭りに行くのは初めてだから仕方ない(汗)

『隆行、ちゃんと体磨いて行きなさい』
「うっさいよ、親父とさっさと行けよ」
1階からする母親の声にそう返した。
ゴロゴロしている内に、6時を少し過ぎていた。
「さてと、行ってみるか」
一応風呂に入ってから、家を出た(汗)

家から神社までは、歩いて15分ほどで着く。
一応女の子との待ち合わせだから、遅れるわけにはいかない。
神社に近づくにつれ、浴衣姿の女の子の姿が目立ってくる。
当然由香里の浴衣姿を期待する気持ちも大きくなる。
しかし、ここで急いで行ったら、負けたような気がするので、あえてゆっくりと歩いた。

まだ時間には早いので、神社の前には由香里はいなかった。
「なんだ、まだ来てないのか」
ちょっとがっかりしながら、辺りを見回すと、紺色に金魚柄浴衣の女の子がぽつんと立っていた。
うっすらと化粧をしているのか、妙に色っぽく見える。
あまりじろじろ見るのも悪いと思い神社の階段の方に視線を向けた。
[ゲシッ]
いきなりふくらはぎに痛みが走り、振り向いた。
「こら〜、無視するなよ」
「な…」
一瞬固まってしまった(汗)
さっき見とれた女の子が、オレの前でほっぺたを膨らませていた。
「…」
「なんだよ〜、似合わないのは、ボクが一番知ってるよ〜」
いつもは肩まで伸ばしてある髪が、今日は上げて結ってある。
浴衣から出ている首筋が色っぽく、オレは無言で顔を赤くした。
「隆行が浴衣で来いって言ったんだろ」
「お、おう…注文通りだ…どこかのお嬢様と見間違えた」
オレは由香里に見とれたままで言った。
「ば、バカだろ、お世辞言っても、何も奢らないからな」
由香里は耳まで赤くしながら言った。
「よ、よし、行こう」
「な、おい」
思わず由香里の手を握って歩き出した。
思った以上に柔らかな手に、ドキドキが伝わるんじゃないかと思った。

「金魚すくいやろうぜ」
「って言うか、いきなり手なんか繋ぐなよ…」
そう言いながらも、由香里は手を離そうとはしなかった。

[ドン、パラパラパラ]
あちこち夜店を見て回って、お腹の方もいっぱいになった頃、空に大輪の花が咲いた。
「あっ、花火始まったよ」
「って、いきなり走るなよ」
相変わらず手を繋いだままだったので、引っ張られるように走り出した。
「凄く綺麗に見える所があるんだよ」
由香里は走りながら振り向いて言った。

[ドーン、パラパラパラ]
「すげー」
神社の裏を抜け、木々の間を抜けた先に、その特等席はあった。
目の前に広がる花火は、今までに見たことがないほど大きくて綺麗だった。
「凄いだろ、内緒の場所なんだから、誰にも教えるなよ」
そう言いながら花火を見上げる由香里の横顔にオレは思わず見とれていた。
「あ、あぁ…」
「…バカ…どこ見てんだよ…スケベ」
由香里はチラッとだけオレを見ると、赤い顔で呟くように言った。

たぶんこの時初めて、由香里のことを意識し始めたんだと思う。


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あきゅろす。
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