恋話の棚ニャ! 3 奈美子は振り返るとオレをじっと見つめた。 「…」 しばらくの沈黙が訪れた。 「あたし…健悟が…」 「ちょっと待った」 沈黙を破って奈美子が何を言おうとしているか気づいて、オレは声を上げた。 「何でよ…」 「そ、それはだなぁ…だ〜、オレはお前が好きなんだよ」 昨日一晩考えた結論は、奈美子のことが気になって仕方ないってことだった。 「ぶ〜、乱暴な告白なんだから〜」 奈美子は一瞬ほっぺたを膨らませたが、笑顔でオレに抱きついた。 「仕方ないだろ。初めてなんだから…それに、こう言うことは、男から言わなきゃな」 「バカ…遅いよ〜」 奈美子はオレの肩に頭を乗せて言った。 「ごめん」 オレは奈美子の髪を撫でながら呟いた。 「トォワリーのチョコケーキで許してあげる」 奈美子はイタズラっぽく笑った。 「いいじゃな〜い」 「学校の中は恥ずかしいだろ?」 授業が終わり、昇降口まで行くと、待ちかまえていた奈美子が、オレの腕に腕を回して来た。 オレはとっさに逃げようとしたが、がっちりホールドされた腕は外れなかった。 「ほら〜トォワリーに行くよ」 「うわわ」 奈美子は腕を組んだままで歩き出した。 [カラン] 「いらっしゃ…はいはい、昨日はあんなに…」 「わーわーわー、お姉ちゃん内緒って言ったじゃな〜い」 奈美子は目の前で腕をブンブン振った。 「ふ〜ん、まっ、分かってたんだけどね。それで、それで、キスはしたの?」 「彩華姉〜そんなのまだだよ〜」 奈美子は真っ赤になって言った。 「健悟君、催促されてるわよ」 「し、してないもん」 奈美子はますます顔を赤くして言った。 「ウソついてもダメよ。奈美子は何かしてほしいことがあると、あたしのことを彩華姉って呼ぶんだからバレバレよ。後ろ向いてるから、さっさとやっちゃいなさい」 彩華はニヤニヤしながら言った。 「ち、違う…ん〜」 「うわ、本当にしてるし(汗)」 呆れ顔の彩華を横目に、オレは奈美子にキスした。 「ちょ、いきなり…」 「はぁ〜、嬉しいくせに」 彩華は盛大に溜息を吐いた。 「お会計3600円です」 「あはは(汗)」 苦笑しながらお金を払うと店を出た。 「も〜、いきなりなんだから〜」 奈美子はほっぺたを膨らませて言った。 「しちゃダメだったか?」 「ダメじゃないけど…もっとロマンチックにしないと嫌なの」 「ロマンチックって(汗)」 オレは眉間にシワを寄せた。 「はい、マーブルチョコ」 「なんだ…わっ、無理矢理口に入れるなよ」 オレ」 「だって、あたしチョコ好きなんだもん」 奈美子は、オレの首に腕を回すとキスしてきた。 「ったく、キスの度にチョコ食ってたら、オレが糖尿病になるだろ」 「その時は、看病してあげるわよ」 イタズラっぽく笑う奈美子にオレは小さく肩を上げた。 「あらあら、じゃあ、あたしの時はチーズケーキでお願いしようかしら」 店の扉が開いて、彩華が出て来てイタズラっぽく言った。 「お姉ちゃん!」 「あ〜恐い恐い。お仕事お仕事」 彩華はそう言うと、店の中に戻って行った。 「ぶ〜、浮気はダメなんだからね!」 「しねーってば」 ほっぺたを膨らます奈美子を抱き寄せながら言った。 「ちょ、こんな所で…」 「オレはチョコが好きだからな」 オレがそう言うと、奈美子の顔が一瞬で真っ赤になった。 「こら〜、店の前で抱き合ってたら、営業妨害で、強制労働させるわよ〜」 「わわ、行くわよ、健悟」 「うわっ」 オレは奈美子に手を引かれ、転びそうになりながら走り出した。 「やれやれ」 溜息まじり呟く彩華は、目を細めて二人を見つめた。 《おしまい》 [*前へ] [戻る] |