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恋話の棚ニャ!
2
「いや…いじめてないし(汗)」
オレが呆れ顔で言うと、みゆきはオレを横目で見ながらイスに座った。
紅茶の入ったガラスポットを手にカップに注ぐと、煙がいい香りを鼻先まで運んだ。
紅茶にはリラックス効果があるらしく、一口飲むと、ホッと息をついた。
「オレンジペコだよね。良葉は、グラムなん万円もするらしよ」
麻希子はコクリと紅茶を飲みながら言った。
「へー、牧野って物知りなんだ」
「えっ、そ、そんなことないよ(汗)テレビの受け売りだもん」
麻希子は慌てたように、顔の前で手を振った。
「まきまきって、物知りだよ〜。この前だって、オレンジの皮を絞って作ったワックスの話を教えてくれたもん。
あたしの机なんてつるつるのぴかぴかだもん」
みゆきは手でテーブル撫でながら言った。
「みゆ、あれもテレビで見たのだよ(汗)」
麻希子慌てたように赤い顔で言った。
「でも、覚えてるってのは凄いぞ。みゆきなんか、3歩歩いたら忘れるからなぁ」
「むむむ、あたしはニワトリじゃなーい」
みゆきはかみ付きそうな勢いで声を上げた。
「まぁ〜大きな声を上げて、はしたないですわ」
近くの席から高そうな服を着たご婦人の声が聞こえてきた。
「す、すみません」
みゆきは小さくなって頭を下げた。
「そ、そろそろ出ようか」
オレは二人を促すように席を立った。
「あっ、うん」
「うん」
二人も慌てて立ち上がると、オレに続いた。
「先出てろよ」
「あっ、あたしも払うよ」
麻希子はポーチから財布を出した。
「いいよ」
「そうだよ、まきまき〜。誘ったのは、まきまきがもがもが」
オレは暴走しかけたみゆきの口を塞いだ。
「な、何でもない(汗)。騒いでるとまた怒られるぞ」
「あっ、うん…」
「もがもが、ふ〜、まきまき〜行こ」
みゆきはオレの手から逃れると麻希子の腕を掴んで店を出た。
「ありがとうごさいます。お会計7580円でごさいます」
『高!?』
笑顔で言われても笑えないんですけど(汗)。
オレはがっくりと肩を落としながら店を出た。
「あっ、栗田君大丈夫?」
店から出たオレを心配そうな目で麻希子が見た。
『ぐは、そのほのかに染まった頬、潤んだ瞳…もう何もいりません…』
「あ、あぁ、どうってことないよ」
強がってみたものの、財布の中は空っ風が吹いていた(涙)。
「さてと、まきまき帰ろ」
みゆきは麻希子の腕に腕を絡めて歩き出した。
「うっ、みゆきのやつ、協力してんだか邪魔してんだか…」
オレは呟きながら、二人の後を追った。

「じゃあ、あたしこっちだから」
商店街の入口まで来ると麻希子はオレ達の帰る方向とは違う方向を指差した。
「あっ、うん、まきまき〜また明日〜」
「お、おぅ、また明日な」
みゆきが手をブンブン振っている隣りで、オレはぼそっと呟いた。
「感謝してよね。こうでもしないと、デートにも誘えなかったんだから」
「あぁ、サンキューな」
オレはみゆきから視線を逸しながら言った。
「ん〜、まきまきもまんざらでもない感じがするし」
みゆきはニヤ〜としながら言った。

「はぁ〜」
部屋に帰るとベットに腰掛けると携帯の待受画面を見つめた。
「こんな笑顔って、そうそう見られないよな」
オレは携帯を閉じると、机の上のフォルダーに戻した。

そして、もんもんとした夜が過ぎて行った(汗)。

「あのー…これ読んでください。じゃぁ」
校門の横の壁にもたれていた女の子が、Bボタンダッシュで手紙を渡して走り去った。
「ほへー、今の1年の娘だよね。物好きもいるもんだ」
いきなり後ろから声をかけられて、慌てて背中に手紙を隠して振り返った。
「うっ、見たな。見られたからには…」
「うわ、いきなり首しめようとしないでよ」
みゆきは慌てて逃げながら言った。
「牧野に喋ったら、今夜お前は死超星を見ることになるからな」
「で、誰なのあの娘?」
みゆきはニヤっと笑って言った。
「って言うか、オレの言うことをスルーするなよ」
「おっ、スルーとするをかけるなんて、うまい」
みゆきは手を叩いて人差し指を立てた。
「はぁ〜、もういい。とにかく、牧野には言うなよ」
オレはそう言うと、校門に向かって歩き出した。
昇降口まで来ると視線を感じた。
[ジー]
下駄箱の角からさっきの女の子がオレを見ていた。
「あのさー」
「わきゃ」
女の子はBボタンダッシュ+αのスピードで、1年の教室の方へ走って行った。
「何なんだよ〜」
オレは盛大に溜め息をついて教室に向かった。
「おはよう、栗田君。昨日はありがとう」
『ぐはっ、皆さん見ました?生麻希子の笑顔ですぜ』
「お、おはよう。大したことじゃないよ」
いや、懐は大したことはあるのだが…。
「まきまき〜、またくりけいが、一緒に行きたいって〜」
みゆきはニヤ〜と笑いながら言った。
「えっ、あ、うん、いいけど…」
麻希子はほんのりと頬を染めて言った。
「まっ、機会があったらな」
オレは照れ隠しに素っ気なく答えた。

昼休みになると、急いで屋上に向かった。
ベンチに腰掛けると、今朝受け取った手紙を開いた。
〈栗田先輩好きです。1年B組中谷優香〉
「…手紙もBボタンダッシュかよ」
オレは思わず突っ込みをいれた。
「あ〜見つけた〜」
声がして驚いて振り向くと、みゆきがニヤニヤしながら立っていた。
「な、なななな何だよ」
「おー、おー、動揺しまくり〜」
みゆきはニヤニヤしながら言った。
「…」
「で、どうすんの?」みゆきは真面目な顔になって言った。
「どうって…」
「まきまきのこと諦めて、朝の娘にするの?」
みゆきは眉間にシワを入れた。
「それは…」
「それは?」
みゆきはずいっとオレの顔に顔を近付けた。
「ちょっと考えさせてくれ」
「考える必要があるんだ…あっそう」
みゆきはそう言うと、背中を向けて屋上を出て行った。
「…」
『分かってるよ…楽な方に逃げるのはダメだってことくらい…』

購買で売れ残っていたあじパンを買うと、教室に戻った。
席に着くと、パンの袋を開けた。
「うっ…」
思わず鼻を摘んで唸った。
「くりけい…チャレンジャーだな」
可哀相な人を見るような目で、隣りの席の脇原が言った。
「いにゃ、こねしかにゃかったんにゃよ」
袋の中からは魚の匂いがして、とてもじゃないが食べる気はしなかった。
「ぎょみばきょ、ちゃっきょーにゃにゃ」
オレはゴミ箱にあじぱんを放り込んで、席に戻ると机に俯せた。
「栗田君、これ食べる?」
前の席から麻希子の優しい幻聴が聞こえてくる。
『オレはこのまま、宇宙の彼方イカスンデルまで意識が飛ぶのか…』
空腹感に飛びかかった意識を、誰かの手がオレの髪に触れることで引き戻した。
「ほら、これあげる」
女神の囁きに顔を上げると、麻希子が微笑みながらメロンパンを机に置いた。
『ま、ままま牧野が…髪、髪、髪を…」
オレは心臓が飛び出す勢いでドキドキした。
「お、おう、さ、サンキュ」
「まきまき〜こ〜んな優柔不断な奴に優しくすることないよ〜」
オレの後ろからみゆきは腰に手を当てて言った。
「そーだ、そーだ、調子に…グハッ」
オレは脇原にデコピンをした。
「みゆ〜だって、ほら、お腹空いてるの可哀相でしょ」
「まきまき〜、頭撫で撫ではいらないんじゃな〜い。もしかして…もがが…」
みゆきが何か言いかけた途端に、麻希子はみゆきの口を塞いだ。
「ふっ、ふふふ、それ以上言うと落とすわよ」
麻希子はみゆきの目を見て言った。
みゆきは慌てたように、首をブンブンと縦に振った。
「あは、あはははは、栗田君、ゆっくりと食べてね」
麻希子はにっこりわらいながら、みゆきを引きずって教室から出て行った。
「みゆき…死ぬなよ(汗)」
オレは有り難くメロンパンを食べながら呟いた。

「ちょっと待って」
授業も全て終わり、帰ろうと席を立った途端、みゆきが慌てて駆け寄って来た。
「待たない」
「こら〜待ちなさいって」
みゆきはオレの腕を掴んで叫んだ。
「なんなんだよ」
「あのね〜買い物付き合って」
みゆきは甘えた声で言った。
「やだ」
「まきまきも一緒だよ」
みゆきはオレの耳元で小さく囁いた。
オレは麻希子に視線を向けた。
「うっ…」
「ほらほら」
みゆきは肘で、オレの脇腹をつついた。
「し、仕方ねぇな」
「えへ、まきまき〜、くりけいがまきまきと買い物行きたいって〜」
みゆきはオレの腕を離すと、麻希子の腕を掴んだ。
「えっ、うん、いいけど」
麻希子はみゆきの頭を撫でながら言った。
『って、言うか、誘ってなかったのかよ(汗)』
「そ、そんじゃ、行くか」

昇降口まで来ると、靴を履き替え、校門へ向かった。
「まきまき〜商店街にいいお店が出来たんだよ〜」
みゆきは麻希子と腕を組んで歩きながら言った。
「あっ、聞いたよ。〈レミーユ〉ってお店でしょ?」
「そうだよ〜。可愛いのとかあるらしいよ〜」
「…」
オレは立ち止まって固まった。
「でね〜って、何でくりけいは立ち止まってんのよ?」
『そりゃ〜お前、レミーユって言えば、婦人服…特定婦人服屋(汗)だろ』
「やっぱり帰る」
オレは回れ右した。
[ダダダダダ」
足音が聞こえた瞬間、オレは捕まった宇宙人のように、両脇を固められた。
「うっ…」
『ぐは〜両腕に膨らみが当たってますから〜感激』
「ほらほら行くわよ」
みゆきはニヤニヤしながら言った。


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