恋話の棚ニャ! 2 「な、何よ?」 「いや、たぶん気の迷いだ」 オレは首を振って言った。 「も〜はっきりしないんだから〜、先行くよ」 真央は首を横に向けると、さっさと歩き出した。 「あっ、カップル来たよ」 入口にたむろっていた女子が、オレ達を見て慌てて教室に駆け込んだ。 「なんだ?」 「さぁ?」 真央とオレは首を傾げながら教室に入った。 「せーのー、それ〜」 教室に入った瞬間、後ろから背中を押された。 「うわっ」 「キャ」 オレは真央を巻き込んで床に倒れた。 「あ…」 「…」 ほんの一瞬だが、確実に唇が触れ合った。 真央はこれ以上赤くなれないほど顔を赤くして、オレを突き飛ばすと、教室を飛び出して行った。 「何やってんだよ!オレ達は付き合ってないって言ってるだろ〜が」 オレは吐き捨てる様に言って、真央を追った。 「真央…」 屋上まで追いかけた所で、真央は金網に掴まる様に立ち止まった。 「ファーストキスだったのに…」 真央は肩を震わせながら言った。 「…」 オレは返事に困って黙り込んでしまった。 「…」 「…」 重たい空気が、二人の間に漂う。 オレは真央の背中をじっと見つめた。 [キーンコーンカーンコーン] ホームルームが始まるチャイムが鳴って、オレは飛び上がりそうなほど驚いた。 「責任取って…」 チャイムが鳴り終わった直後に真央が口を開いた。 「責任って…」 「ファーストキスの…」 真央はオレの顔をじっと見ながら言った。 「どうやって取るんだよ…」 「考えれば分かるでしょ…」 真央はじっと見つめたままで言った。 「あ…その…!?」 オレが言い掛けた時、風が真央のスカートを捲った。 「何か言ってくれないと、見学料10倍にするよ」 「今朝の話…朝まで真央のことを考えてた。こんな風に言うのはずるいけど、真央のこと好きだって気付いたんだ…」 オレは緊張しながら言った。 「…ダ〜ッシュ、あたしも、最近伸吾のことよく考えてたの。これって、伸吾のことが好きってことだと思う」 真央は小走りで、オレの腕に抱き付いて来た。 「結局みんなの言う通りになったな」 「伸吾…」 真央はオレの腕を引っ張って、目を閉じた。 「あ…うん」 オレ達は2度目のファーストキスを時間を掛けて交わした。 「い〜度胸じゃな〜い。ホームルームをサボってキスしてるなんて」 突然声がした方に振り向くと、北ちゃんが腰に手を当てて立っていた。 「やば…真央…逃げるぞ!」 「うん!」 「こら〜待ちなさ〜い」 北ちゃんの声を背中に、真央とオレは、手を繋いで走り出した。 《おしまい》 [*前へ] [戻る] |