3 バチッと音が聞こえそうなくらいバッチリ目があった俺と少年はしばしば見つめあった。 狐耳つけた男子高校生と美少女じみた小学生くらいの少年がお互い目を見開いて見つめあう光景はなかなかにシュールだったと思う。 もちろんそんなこと俺らには分からなかったけどね! ひとまず俺は耳をごまかすことにした。 「こ、」 「…?」 「コノ耳ニセモノダヨ!!」 「……………」 「……………」 「…………フンッ…」 鼻で笑われたーー!!! 「鼻で笑うことないだろ!!」 「貴様のようなアヤカシなどその程度で十分であろう?」 あんなにビックリしていたのが嘘のように余裕綽々で俺を観察する少年は俺の頭にある耳を本物だと判断したらしい。 そりゃまぁめっちゃピクピクしてたら俺だってそう思うけどさ、仕方ないじゃん耳勝手に動くんだもん。 あ、でも危機感知はバッチリだぜ!! 「だからって失礼なことに変わりはありませんーだ!!」 「獣に何を言おうと問題あるまい」 「何だよそれ!超傲慢!お前何様だよ!」 「…貴様、我を知らぬのか…?」 信じられないと目を見開く少年に俺は、はぁ?と眉を寄せる。 「がきんちょ1人、有名人でもあるまいし」 「毛利も知らぬか」 「知らないね。てか森で生活してるのに外のことなんか知るかっつうの」 「…………」 黙り込んだ少年は音が出そうなほど勢いよく立ち上がって俺を睨み付けてきた。 「去ね」 「!お前がどっか行けよ!!」 「言われずとも帰る。この森は毛利の土地。アヤカシに与える場所は欠片ほどもないわ。早々に立ち去れ」 「はぁ?」 何言ってんのコイツ。 今まで誰とも(あ、人間ね!)会ってないのに立ち去れ? だったら誰か見張りを置くべきだ!人が入った形跡なんて少しもなかったぞ。 って言うのは言い訳だけどさ、粘んないと俺住むとこ無くなっちゃうし。 それはマジで勘弁して欲しい。 「俺出ていかねぇ。誰にも迷惑かけてないし」 「…………」 「自己中なこと言ってんのは分かるけど、俺わざわざ住み慣れたところ手放せるほど聞き分け良くないから」 睨んでくる少年を睨み返して言い切った。 「好きにしろ!!」 え?逆ギレ?? いや違うか。少年はキレる権利があるしな。 でもなんか違和感感じるキレ方だなぁ…。 「……あ」 そんな風に考えてる内に、少年は走っていってしまった。 「…帰ろ」 なんだかつっかえるような違和感を感じたけれど、俺はそれを無視した。 [*前へ] [戻る] |