魔王の憂鬱《一時停止中》 8 『どうか私たちの国をお救いください勇者様』 『ご安心ください、必ず魔王の首を落として見せます』 『くたばれ魔王!!!!』 『おのれ、勇者め!・・・・うあぁぁぁぁぁ!!』 「のわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 読んでいた漫画本を壁に向かって投げつける。 「魔王様どうなされたのですか!?」 ソロンが俺の大きな声に異変を感じ焦って部屋に入ってきた。 あの衝撃的な出来事から1ヶ月だった。 俺の勇者への怒りは収まりません。 なぜなんだ!?。なぜこの漫画の勇者のように俺を倒しに来ないのだ。 「なぜ首を落としにじゃなくて、口説き落としに来てるんだよバカヤロー!!!」 俺は漫画みたいに勇者と戦う威厳のある誇り高い魔王目指して生活してるんだよ。 勇者よ我の力思い知るがいいとか言ってみたいんだよ。 だから、勇者たちの前では威厳のある魔王を演じてきたと言うのに。 ソロンが投げつけられた漫画本の存在に気付き拾い上げ、中身を見るとため息をついた。 「またこんな・・・魔族が負けるお話を読んでいたのですか?人間が作ったものではなくて魔族が作ったものをお読みなさい」 「だって面白いもん」 魔族のやつより絵が繊細で綺麗だし、魔王の恐ろしさがすごく上手に描けてるし。 「こんなものを読んでいたら勝てる戦も負けてしまいますよ?人間をボコボコにして勝つものを見てください」 「もー昔からソロンはうるさいんだから」 ソロンは小さいときから俺のお世話係で昔から何かと口うるさく言ってくる。 昔はいーとして今は立派な魔王なんだからいい加減小言はやめてほしい。 「へぇ・・そんなこと言うんですか、私との約束を破って人間の住む国の近くまで遊びにいったせいで、勇者に一目惚れされたあげく現在進行形でめんどくさいことになっているというのに」 ヴッ・・・痛いとこついてくる。 わかってますよ、結局はソロンの言うこと聞いとけば安心だってこと。 「ホントあいつ早く諦めないかなー誰かあいつのことやっつけてくれないかなー」 「それはあなたの役目でしょう?」 「だって俺勇者と会いたくないんだもん」 近くにあったクッションに顔を埋めると、ソロンがため息をついた。 「全く・・そんな可愛いことを無意識でしてるから勇者なんかに一目惚れされるんです」 ソロンが困ったような顔をしながら俺の頭を撫でる。 可愛いとか言うなこの野郎。あいつを思い出してしまうではないか。 「その天然たらしなところをもうちょっと直すべきですね、言っときますけど、ラウル様に下心を持つ者は勇者だけではありませんよ?」 「・・・ルイのことだろ?」 あれからルイとはなんか気まずい関係になっている。というより俺が主に気まずく感じているだけなのだが。 だって自分をオカズに一人エッチしてるやつとなにもなかったかのように接するなんて無理だろ。 ルイの方はそうではないみたいだが。 噂をすればルイが部屋に入ってきた。 「魔王様おはようございます・・ふっ、今日も可愛いな 」 最早こいつは開き直って前以上に俺に構うようになった。 勇者だけでもめんどくさいのにさらにめんどくさい。 「ルイ、お止めなさい、魔王様が嫌がってます」 ソロンが止めるがお構いなしに俺を抱き締める。 こいつホント一回死ねばいいのに。 チャラ男とキャラ被るぞ。 「勇者なんかに魔王様取られたくないからあいつが居ないときにこうやって進展しとくんだよ」 「離せ!お前と進展する気なんてこっちは無いんだよ」 ジタバタ暴れるが離してくれない。むしろ抱き締める力が強くなる。 ルイが耳元に唇を寄せてきた。 「何?もしかして俺じゃなくてあいつを選ぶつもり?」 いつもより低い声で囁かれて思わず背中がゾクリとする。 しかも今わかったことがひとつ。 俺耳弱いかもしれない。くすぐったいというかすごく恥ずかしい。 「そんなわけないだろうが!あいつなんて論外!ミジンコ以下だ、それより早く離れろよ!燃やすぞ!」 手に小さな炎を宿す。 ルイは、特に気にする様子もなく、チュッと耳にキスして、そのまま耳朶をくわえ、舐め始めた。 「んぅ・・・」 ぎゃー!!!この変態何してくれてんじゃー!!!。 さっきよりも炎を大きくしてジューとルイの足に押し付けた。 「あっつ!!魔王様ひどいだろ!」 「自分のせいだろ、この変態!俺に寄るな」 勢いよく俺から離れるルイ。 こいつに西の領地を任せて大丈夫なのだろうか。 今度からは部下のことをちゃんと調べた上で、各ポジションに配置しよう。 ちょっと部下の性生活チェックしないと駄目だわ。主に俺がオカズされてるかされてないか。 [*前へ][次へ#] [戻る] |