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黒に包まれて《連載中》
人間と魔族のハーフ
謁見が終わるとこれから自分の部屋となる場所へと案内された。

思ったよりも過ごしやすそうな部屋で安心する。
しかし、ただ質素で華やかなものは何もないこの場所は、王族の寝室ではあり得ない部屋ではあった。王の妻である王妃に与えられるような部屋ではなかった。

ベッドに腰かけてため息をつく。
ここにきたら直ぐ様魔族にボコボコにされるか牢に入れられると思っていたがそれはないようだ。
友好条約を結んでいるため、ある程度は保証されているのだろうか。

それに・・今までこの魔族に連れ去られた王族はどこにいるのだろうか。牢に入れられてるのであろうか。
やはり同じ種族がいないということは寂しい。
トントンと控えめに扉がノックされる。

「どうぞ・・」

誰だろうか。
少し不安になりながら扉を見つめていると10歳くらいの男の子が入ってきた。

「初めましてシュライン様、僕はシュライン様のお世話係をさせていただくペスと申します、これからよろしくお願いします」

綺麗にお辞儀をするペス。
まさかお世話係がつくなんて思ってもみなかった。捕虜のようなものだと覚悟していたのに。

「初めまして、よろしくペス」

こちらが笑うと年相応の笑いを返してくれるペス。

「何かご用がありましたらいつでもお申し付けください」

魔族は人間をあまり快く思っていない種族だと思っていたが、ペスにはその様な雰囲気は見受けられない。

「ペス・・・私のことは嫌ではないのですか?」

率直に疑問に思っていることを投げ掛ける。
ずっと敵対していた人間の世話をするなんて屈辱ではないのだろうか。
魔族は勝ち人間は負けたのだから逆であってもよいはずだ。

「なぜです?王妃様を嫌いになるなんてそんなことしませんよ?」

ペスが不思議そうにこちらを見つめる。

「だって私は人間で君は魔族でしょ?憎い相手に使えるなんて嫌ではないの?それに・・・王妃とは名ばかりの生活が待っているのでしょう?」

ペスが丸い瞳をさらに丸くさせ驚く。

「確かに魔族と人間は長い間敵対してきました、でも僕は人間を嫌いになったことはありません・・僕、魔族と人間のハーフなんです」

今度はこちらが驚く番であった。
魔族と人間の間に産まれたハーフという存在がいることは、聞いたことがあったが、今まで一度も見たことはなかった。
単なる噂のひとつかと思っていたが本当にその様な者が実在するんだ。

「僕、魔族にも人間にも嫌われてきました、でも僕はどちらの血も混ざっているからどちらも嫌いにはなれません、だからシュライン様のこと嫌いにはなりませんよ?」

ペスがそっと手を私の手に重ねてきた。

「ですが、魔族は人間を嫌っている者ばかりです、シュライン様の予想通りこの城にいることは嫌な思いをたくさんすることとなるでしょう・・ですが僕がなるべくお守りいたします」

「そんなことしたらペスが嫌がらせされたりするんじゃ・・」

こちらの味方をしてくれるような魔族はほぼいないに等しいに違いない。
私に味方するような立場では周りにたたかれるのがオチに決まっている。
かつての叔父のように―――

「大丈夫です!半分は魔族の血が混じっているのですよ?そんなことでへこたれません!」

ペスが笑いながらこちらを見る。
そんなペスをそっと抱き締める。

「ありがとう・・私はとても心強いよ、ペスみたいな子が側にいてくれるなんて」

頭を撫でるとペスが目を丸くした。
そしてポロリと涙をひとすじながした。
予想外のリアクションに驚く。

「ご、ごめんなさい・・僕こんなに優しくされたことなくて」

優しくされたことないって・・両親から愛情を受け取ったことがなかったのだろうか。
ペスの生い立ちが気になってしまう。
どう返事をすればいいのか分からずただじっとペスの頭を撫でる。

「はっ、すみません僕・・そうだ!お召し物着替えていただかないと!」

やらなきゃいけないことを思い出したのか、ばっと離れると綺麗な薄紫色の洋服を持ってきた。

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あきゅろす。
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