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黒に包まれて《連載中》
故郷よ、さようなら
なぜ、私が母上と別れなければならなかったのか。



それは私が最後の王位継承権を持つ者であったからである―――


叔父は魔族との戦争に異を唱える者であった。そのため、王からは謀反だとして罪に問われ処刑されてしまった。その際、叔父の親戚にあたる者は皆島流しにあった。
王家の血を引くが継承権はないに等しい、そんな人間が私であった。
しかし、魔族側からの要求は王位継承権を持つ者。
私自身もこの国も選択肢は一つしかなかったのだ。


城の使いの馬車に乗る。
さきほどよりも大きな母の鳴き声が聞こえてきたが、振り返らず静かに目を閉じた。
ポロリと涙が一筋流れる。

喜びも悲しみも共に共有した母、島流しにあい死にそうになった際も母がいてくれから生きようと頑張れた。母が女手ひとつで私を育ててくれた。決して満足いく生活はしていなかったがそれでも幸せだった。
もう、その幸せを味わうことはできない。家から離れるにつれ、先程までの我慢の糸が切れたのか、ボロボロと流れ出る涙。

嗚咽を出し始め鳴き始めると、馬車に一緒に乗車していた護衛が声をかけ、ハンカチを差し出してくれた。
それを頭をふり拒否する。


同情なんて要らない。もう二度とこの国には戻ってこれないのだから。
優しさなんて受け取ってしまったら、つらくて耐えられそうにない。
この国に戻りたいという気持ちを少しでも無くさなくては。

目的地に着くまで、この国との別れに涙が止まることはなかった。

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