黒に包まれて《連載中》
ティータイム
「昨晩は満月の夜でしたからね」
ペスが紅茶を入れる。
いつものように仕事をして帰ろうとしたら、ペスが紅茶などを持ってやってきたのだ。
魔王の部屋に移動してから、お茶の時間が無くなってしまったので、出張サービスしに来ましたと笑いながらやって来たときは、驚いてしまった。
実はなかなかペスに会えないことを寂しく思っていたので嬉しい。
「満月の夜・・・」
丁度ペスにも会えたということで、昨晩の魔王の体調のことを相談してみたのだ。
「魔族が持つ魔力は、月からとても影響されていると言われていて、満月の夜には普段抑圧されている魔力が自分の意思とは関係なく出てきてしまうのですよ」
もしかしてその魔力とは、魔王の部屋に充満していた黒いモヤだろうか。
魔王の身体から出ていたし・・・
「その抑圧されていた力があまりにも強いものだと、自我を失って暴走することがあるんです・・・だから魔族は、満月の夜は閉じ籠って必死に魔力と闘うのです」
だからあんなに顔色がひどく汗もすごかったのだろう。
それに魔力があんな風に漏れ出していたから、いつもより睨まれたときに恐怖を感じたのかもしれない。
「大きな力を持つ者は普段の抑圧している力もとても大きいですから、昨晩は力の強い者は皆早々に部屋に戻っていたと思います」
「ペスは平気だったの?」
紅茶をすすりながらペスに聞く。
ペスも魔王みたいに、うねり声をあげて苦しんでいたのかもしれない。
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