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黒に包まれて《連載中》
熱(魔王side)
目を開けると、いつもより目覚めがよい気がした。

満月の夜は、魔力が大きく膨れ上がり、身体が熱をおび、普段の様に自分の力をコントロールできなくなる。
なので魔族は理性を失って魔力の力に支配されないよう閉じ籠ることが多い。

魔王である自分は他の魔族と異なり大きな魔力を操ることが可能だが、普段抑圧されている魔力も多く、満月の夜は部屋中に魔力が放出され、苦しい思いをする。

普段ならこんなにさっぱりとした目覚めではないのだが。
なぜなのだろう――――

上半身を起こすと、パサッと何かが落ちてきた。

「布・・・?」

なぜ布が落ちてきたんだ。
布を触ると少し温かいが水の冷たさを感じる。

「(誰かがのせたのだろうか・・・マキールか?)」

いや、昨日はあいつも苦しそうにしていた。
こちらを気遣う余裕はなかったはず。
不思議に思いながらも寝室を出ると、いつものようにソファーで人間が寝ていた。

「(仕方無いとはいえ、弱っている姿をこの人間に見られるとは不覚だ)」

すやすやと穏やかに眠る人間を睨む。
やはり、自分の側においておくのは危険だっただろうか。
それに、嫌いな者が自分のテリトリーにいることがこんなにもストレスを与えるとは思わなかった。

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あきゅろす。
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