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黒に包まれて《連載中》
頂点に立つ男
その日の夜はいつもと違う夜だった―――


いつものように窓の外の景色を見ながら魔王の帰りを待っていた。

ガチャ

ドアが開く音がしたので、そちらの方に顔を向ける。
そこには想像通り魔王が立っていたのだが、いつもとは少し様子が異なった。
顔色が悪く、冷や汗をかき、そしていつもとどこか雰囲気が違う。
何が違うと聞かれればわからないのだが、何か纏っているものがいつもと違うのだ。

「陛下、気分が優れないのですか・・・?」

そのいつもと違う魔王に心配になり、恐る恐る近づく。
するとこちらが近寄る気配に気づいたのか、いつもは向けることがない漆黒の目がこちらをギロリと睨んだ。

ビクッ

思わず肩が上がり震えてしまう。
魔王の冷たい視線は、何度も受け止めてきたが、こんなに恐ろしい視線を向けられたのは初めてだ。
今すぐにでも殺されてしまいそうなそんな緊張が身体を駆け巡る。
まるで野獣の目。美味しそうな獲物を見つけたときのハンターの目である。

こちらが恐怖で固まっていると、いつものようにそのまま部屋の奥に消えようとするが、足取りが重い。
魔王が目の前から消えた後も私は立ち尽くした―――

あんな魔王は初めてだ。
いや、もしかしたらあれが本当の魔王なのかもしれない。
それほどまでに、他を寄せ付けない何かが魔王を取り巻いていた。
あれが魔族を束ねる王―――

改めて魔王の恐ろしさを感じた。
この人に少しでも逆らったら私のこの命を意図も容易く捻り潰される。

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あきゅろす。
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