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黒に包まれて《連載中》
籠の中
あれから1週間経つが、魔王との距離は変わらないでいた。

いや、距離は変わらないが生活は変わってしまった―――

今までは一人で部屋を使用していたので、誰かの監視もなく、部屋では安らぐことができた。
しかし、この魔王の部屋に来てからはどうだろう。
魔王がいなくともなにか粗相を起こしてはいけないと、動作一つに神経を使う。
魔王が居るときは尚更である。

この部屋に移動してきたことにより、ペスと顔を会わせる時間も減ってしまった。
ペスは魔王の部屋に入ることは許されず、毎朝飲んでいた紅茶を飲むことも不可能である。
ペスがどれだけ心強い存在であったか改めて感じる――

魔王の側近でもあり宰相でもあるマキールが、毎朝魔王のために朝食を持っては来るがもちろんこちらの分はない。
寝るとき、一人で使っていたベッドも、もちろん魔王が使っているため使用することは認められず、ソファーで縮こまって寝る毎日。
体が痛む状態で毎朝目覚める。

「(ここは、監獄のようだ・・・)」

今までが、とても良い待遇であって、本来ならこの様な扱いがされるべきだったのかもしれない。
雑用や食事、風呂場の冷たさはマシな様に思える。

魔王のあの鋭い冷たい目で見られると、身体が金縛りにあったように固まり、無意識に息が止まってしまう。
これが魔族の王であると改めて恐ろしく感じてしまう。
魔族は嫌いではない、しかし――――
怖いのだ、魔王が。
少しでも近づければいいと思う反面怖くて近づいてはならないと本能が訴える。

窓の外を見つめ、魔王について考えているとガチャリと部屋のドアが開けられる。

漆黒を纏うこの城の主が帰ってきた。

「お、おかえりなさいませ陛下」

頭を下げお辞儀をすると、こちらのことは見えてないという様に奥の寝室へと消えていった。

魔王が戻ってきたと言うことは私もねむりにつくことができる。
命令されているわけではないが、魔王よりも早く寝ることはできなかった。
だからいつも、魔王が寝たかどうか気配で確認してから眠りにつくことにしている。

こうやって一日が終わる。
夢の中は誰にも気にせず穏やかな時間を過ごせる。こんなにも睡眠が幸せなものだと感じたことが今まであっただろうか――


なぜ、人間が嫌いであるのに、監視をするためとは言え、この部屋に私を置いているのですか?

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あきゅろす。
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