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黒に包まれて《連載中》
湖の主
それにしても、先程から誰かに見られているような・・・視線を感じるのは気のせいだろうか―――

キョロキョロと辺りを見てみると、少し離れた水面に目から上を出した状態でこちらを睨む何かがいた。

「だ、誰ですか!?」

驚いて思わず手に持っていた洋服を放してしまい慌てて掴む。

「人間の臭いがする・・・なぜ人間がここにいる、早く出ていけ」

相変わらず鋭い目は変わらない。
自分の住処に嫌いな人間が来たことで怒りを感じているのだろう。

「す、すみません!・・・誰もここには居ないと思っていたので」

さっと立ち謝罪すると、その何かがすーっとこちらの方へ移動してくる。
そしてそのまま陸に上がった。

湖のような綺麗な水色の目と髪を持ち、人形をしているが、下半身は魚のように鱗で覆われており、耳はとんがりよくみると手がカエルの様になっている。

「なぜ魔王城に俺達の敵である人間がいる」

友好条約で私がここに来ていることを知らないのだろうか。
城に住んでいる者なら皆知っていると思っていたが、やはり魔族は人間のことなど頭の隅にでも置いておきたくはないのか。

「友好条約のためにこちらに来ました」

そう言うと品定めでもするかのように下から上へと見られる。

「あの条約か・・へぇお前が・・今までの王族とは少し違うようだな」

今までということはやはり他の王族もここにいるのだろうか。

「だが俺は人間が嫌いだ、臭いを嗅ぐだけで吐きそうになる、今日は見逃してやるがここへはもう来るな・・・もし今度ここへ来たときは、条約だろうがなんだろうが関係なく殺す」

先程よりも鋭い目付きと低い声で言われ、瞬時に体が硬直する。

「何を突っ立っている、早く出ていけ」

なんとか体を動かし急いでその場を去る。
上半身は洋服を着ていなかったが、そんなことも気にせず林を抜けた。
ここへは来てはならない、そう心に誓ったのであった。

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あきゅろす。
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