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黒に包まれて《連載中》
夜の訪問者
その夜、部屋の扉が珍しくノックされた。
ペスだろうか。部屋を開けるとロイス公爵が立っていた。

「ロイス公爵・・」
「こんばんは王妃様」

優しく微笑むロイス公爵。
一体こんな夜中にどうしたのだろうか。

「部屋の前に誰も見張りがいないなんて・・私のような不届きものが容易く王妃様のところへ侵入してしまいますよ?入ってもよろしいですか?」

ロイス公爵はそう言いながらふふっと笑い部屋へと入ってきた。
今さらだが、こんな時間に仮とはいえ王妃の部屋に来てもよいのだろうか。
魔王陛下の妻に当たる身分の者の部屋に来るなんて。

「私はこの城で歓迎されていません、王妃も名ばかりなのです・・きっとこちらの方々は私に何が起きようと騒ぎませんよ」

少し自嘲じみた物言いになってしまったが本当のことを話すと、ロイス公爵が驚いた顔をする。

「そんなこと話してしまってよいのですか?」

少し悲しそうな顔をしながら、すっと私のほほを撫でるロイス公爵。
ペスがよくする表情に似ていて、こちらまで本当に悲しくなりそうになる。

「ロイス公爵は人間がお嫌いではないのですか?」

そう率直に尋ねるとロイス公爵はにこりと微笑んだ。

「ええ、嫌いではないですよ・・過去に愛した人は人間でした」

そんなことが返ってくるとは思わず、驚いてしまう。

「ふふっ・・驚いた顔も可愛いですね、なぜあなたのような綺麗な方を護衛するものが誰もいないのですか?魔王陛下が関わろうとしないことが不思議ですね」

「ロイス公爵はお世辞が上手ですね・・・その様な言葉は意中の女性などに言うべきですよ」

先程ロイス公爵から頂いたワインが丁度テーブルの上に置いてあったので、包装紙を開ける。

「せっかくなのでこれ、飲みましょう?」

ワインのコルクを抜こうとしたら、ロイス公爵が横からひょいとワインを取り上げ、シュッと瞬時に延びた爪で器用にコルクを開けた。

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あきゅろす。
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