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ネタ短文
貴族フレン×執事ユーリ


シャッとカーテンの開く音が聞こえ、眩しい陽光が瞼を突き抜けて僕の目を覚まさせる。

「〜ぅう、」

「フレン様、お目覚めの時間です」

太陽の眩しさに思わずうめき声をあげてベッドの上で身動ぎすると、聞き慣れた心地よい声が僕に起床を促す。

「ユー…リ」

「…おはようございます。朝食の用意は出来ておりますので、早くお召し変えを」

目を開けると、かっちりとした細身のスーツに身を包み、長い黒髪を頭の高い位置で結んだ、僕の執事がいた。

「…君は、いつも早いな…」

「フレン様はいつにも増して本日はゆっくりでいらっしゃる」

ユーリは柔らかい笑みを口元に浮かべたが、その表情はどこか皮肉気だった。
やっぱり昨晩のこと根にもっているんだろう。無言の怒りを感じる。
だけど、ユーリだって昨日はかなり乗り気だったはずで、僕は少し面白くない。

「…本当、ほんの三時間前までベッドの上でよがって喘いでいたとは思えないね」

だから僕もわざとらしいほどの満面の笑みを彼に向けてみせる。

「〜ッ!」

仕事中は決して上品な表情を崩さない彼が、僕の一言で一気に表情を変える。
目には明らかな怒り、そして頬は恥じらいのためか、普段は白いそれがピンク色に染まっていた。
彼のこういう表情が、僕は堪らなく好きだった。

僕はベッドの中から出ずに、勢いよくユーリの手を引いた。

ユーリはバランスを崩して僕の上に倒れこむ。


「なっ…」

「本当、君は朝が早すぎる。…僕としては、目覚めた時に君の寝顔を見てみたいんだけどな」

ふぅ、と息を耳に吹き掛けながら言うと彼は大袈裟なくらいビクリと身体を震わせた。

その反応に気を良くして、僕が彼の唇に顔を寄せようとした瞬間、僕の顔にべしゃり、と熱い何かが引っ付いた。

「蒸しタオルで御座います。…その様子ですと、まだ完全にお目覚めではないようですから」

タオル越しに、ユーリがニヤリと笑う気配を感じた。

ユーリにキスをしようとした時に目を閉じてしまっていたから、彼の手が配膳台の上にあったお絞りに伸ばされていたことに気付かなかったみたいだ。
残念なことに目覚めのキスもお預けのようだ。

「…君、勤務時間内なら自分は忠実なフレン様の執事です、とか言ってなかったっけ…」

「…私は単に未だ寝ぼけ眼なフレン様を起こし、朝食を冷めぬうちに召し上がって頂きたかっただけです」

顔に張り付いたタオルを剥がしながら聞いた僕の問いに、ユーリは体を起こしながら何も悪びれずにそう答えた。

つまり、僕の命令に背くようなことはしていない、ということか。
確かに僕はユーリにキスをさせろ、とは命令していなかったな。

ユーリは、勤務時間内は基本的に従順だ。
勤務時間を過ぎてしまうと途端に服装や言葉を崩し、かなり行儀が悪くなるけれど。

勤務中は僕が何か指示をすれば、そのとおりに的確に動く。それは僕が抱かせろ、と言っても同じだろう。
ただ、命令して身体を差し出してもらうのは何だか虚しいから、滅多にしないけれど。

それでも勿論、我慢出来なくて命令してしまうときもあって。
その場合はユーリは丁寧な言葉は崩さずに僕にされるがままになって、命令のまま奉仕をしてくれたりする。
基本的にユーリに他人行儀にされるのは好きじゃないんだけど、ベッドの上なら一種の趣向と考えてしまえば物凄く興奮する。



…良く考えると、ユーリの職業病は相当だな…快感で殆ど意識がとびかけてるのに、口調や僕を『フレン様』と呼ぶことは忘れない。
本当に小さい頃から僕に仕えてきたから、もう既に本能に組み込まれてしまっているのかもしれない。

「…フレン様、もうお目覚めになられたでしょう。お顔を洗ってらして下さい。その間私はお茶の用意を致しますので」


僕がユーリのいやらしい姿を思い出していたのがバレたのか、ユーリは少しだけ呆れたような顔をしてそう言った。

まあ確かにのんびりしすぎたから、顔を洗って早く朝食を摂ろう、と漸くベッドから起き上がって自室に備え付けの洗面所へ向かう。

だけど、その時に目にはいったユーリの頭に付いている見慣れない髪留めが気になって足を止めた。

「…ユーリ、そんな髪留め持ってたっけ?」

「?…ああ、こちらですか。これは先日エステリーゼ様に頂いたものです」

それを聞いて僕は少し面白くない気分になった。

エステリーゼ様、というのは僕の家よりずっと位の高い貴族の家の娘さんで、ほとんど皇族と言っても良いくらいの身分の方だけれど、非常に感じの良い人だ。

どうやら彼女はパーティーで僕の隣にいたユーリを気に入ったらしく、会うたびに声をかけてくる。
ユーリも妹でも出来た気分なのか、彼女にはとても優しく接していた。

…そこまでは良い。
ただ気に入らないのは、周りの目が無いときはユーリは彼女を『エステル』という愛称で呼び、普段の馴れ馴れしい口調で話したりしていることだ。例えそれが勤務時間であっても、だ。

ユーリはエステリーゼ様の直属の執事ではないし、おそらく彼女がそうするように言ったんだろうけど。

堂々と他人から貰った贈り物を身に付けているユーリが腹立たしくて、僕はまたユーリの腕をとってベッドに捩じ伏せた。

その拍子に紅茶の入ったカップがユーリの手から滑り落ち中身がこぼれたが僕は気にせずにユーリを見下ろす。

「…ユーリ」

名前を呼びながら、そっと彼の頭の髪留めに手をのばして、外してしまう。

サラ、と綺麗な黒髪が白いシーツに散らばる。

いつもと違う僕の様子に、ユーリは少し怯えるたような表情をしていた。

「…命令なんだけど」


僕の言葉に、ユーリはビクリと体を震わせた。

こう言えば、彼はどんな命令でも決して背かない。
これは、彼の主である僕にだけ許された特権だ。
エステリーゼ様さえ、決して持ち合わせない特権ー…








僕はいつもより低い声で、だけど優しく、彼に命じた。









…今から、少し乱暴に抱くけれど、我慢してね?












end.


******
ユーリが執事ておいしくね?なんて。。
メルルのアトリエをやりながら、ルーフェスに萌えてこんな妄想をしました。いや彼は攻でしょうが。

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