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コバナシ。
ぐらどる! (後)


オレは教室を逃げるようにして出た。エステルが驚いた顔をしてオレの名前を呼んだけど、止まれなかった。

だって、あのままじゃフレンの前で泣いちまう。
そんなの、耐えられない。だって、泣いたフレンはどうすると思う?昔みたいに、慰めてくれるかもしれない、でも、何も言葉をかけてくれなかったら?それどころか、冷たい言葉をかけられたら?
フレンだって、他の奴らみたいに、俺のこと『あんな格好してはしたない』とか、『遊んでるに決まってる』とか思ってるかもしれない。

フレンの反応が怖い。だって、オレ、誰よりもフレンが好きで、大切なんだ。

そんな思いが涙と一緒に溢れてきて、とうとうこぼれだした涙を拭おうと、手で目をおさえようとしたら、その手を誰かに掴まれた。

ふりかえると、そこにはフレンがいた。


「なんで…」

やっと出てきた言葉は、それだけだった。



*****



『なんで』と呟くユーリに、僕は一瞬身構えたが、そんなこと構ってられない。だって、好きな女の子が泣いてるんだ。
黙ってなんて、いられない。

「だって、ユーリ、泣いてる。ほっとけないよ」
そう言うと、ユーリは僕の手を振りほどこうとしたけど、僕は放さなかった。ここで放したら、一生後悔すると思ったから。

「お前、オレのことなんて嫌いになったんだろっ…!オレがっ…仕事始めてからずっとよそよそしくなってっ…オレのこと、はしたないとか、思ってんだろっ…」

「そんなわけないだろ!!」

涙声で、しゃっくりをあげながら話すユーリに、僕は思わず声をあらげた。

「ユーリのことを、はしたないなんて、思うわけない!!君を避けてたのは、僕が臆病で、有名になってどんどん遠くにいってしまう君に、どう接したらいいか、分からなかっただけだ!!」

「嘘だっ…オレのこと、グラビアとかやって、遊んでるとか思ってるんだろ!」

「そんなこと思ってない!ユーリのことは、僕が一番知ってる。この学校の誰よりも、君のファンなんかよりも、ずっとだ!」




「君が、好きだ!君のファンなんかより、他のどの男より…僕は、君のことを、ずっと…ずっと好きだ!」


すごい勢いでそう言い切り、僕は途端にユーリの顔を見るのが怖くなって、ユーリの顔を僕の胸に押し付けるようにして、抱き込んだ。
しばらく怖くてそうしてると、今度はユーリが口を開いた。
「それ、ほんとか…?」

ぽそぽそと、ユーリは僕の反応を伺うように、小さな声で言った。

「本当だよ」

「本当に?おれのこと、嫌いになってない?」

「嫌いなわけない、嫌いになれるわけないよ…何でグラビアの仕事をやる前に僕に言ってくれなかったんだ、って思って、正直君に怒りがあったけど、そんな事で嫌いになんてなれるはずない。君がどんなに僕に酷いことをしたとしても、嫌いになれる自信さえないのに…」

そう言うと、僕の腕のなかのユーリが、ぎゅっと僕のブレザーを握るのを感じた。

「おれ、だって…フレンにどんな酷いことされても、嫌いになんか、なれない…フレンのこと、一番、すき、だから…」

そのユーリの言葉を聞いて、ようやく僕はユーリの顔を見ることが出来た。
こうして目を合わせることが出来たのは何日ぶりだろう。

久しぶりに見たユーリの瞳は、涙で濡れて、少し充血してたけれど、とても澄んで、綺麗だった。

「ユーリ、君が好きだよ。大好きだ。」

もう一度そう伝えたら、ユーリは小さな声でオレも、と呟いた。

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