コバナシ。 ぐらどる! (中) ユーリがグラビアアイドルになった。 僕は職業とかに偏見はないけど、特殊な仕事だと思うし、軽々しく始めるような仕事ではないと思う。 だから、ユーリが僕に何の相談もなくグラビアの仕事を始めたことに対して、正直、怒っていた。 僕はユーリのことを親友だと思っていたし、何でも話せる仲だと思ってた。 だから、どうして僕に相談してくれなかったの、って。 それに、雑誌とかに載っているユーリはどうしようもないくらい綺麗で、色っぽくて。僕はユーリの顔を直視出来なくなって、ユーリを避けるようになっていた。 それに、ユーリの水着姿だとか、男を煽るようなポーズとかの写真が、大衆に晒されるのが、堪らなく嫌だった。 ユーリの綺麗な髪や肌、表情、それらを独り占めするのは僕だけでありたいのに。 日曜日にユーリの写真集が出るのを記念して握手会がある、とエステリーゼかんが話しているのを聞いて、こっそり会場の書店に様子を見に行ったことがあった。 かなりの人数が並んでいて、みんな、ユーリの写真集を手に抱えていた。 ユーリはというと、慣れないファンとの交流に少し困惑してたようだけど、なんだか照れた様子で、「ありがとう…」と言いながら笑ってファンと握手を交わしていた。 その光景を見て、僕は気が狂いそうになった。ユーリが、僕以外の男に笑顔を向けている。言葉を交わしている。手を握っている。 僕だけの、ユーリのはずだったのに。 ユーリのことを一番知っているのは、僕なのに。あんな奴らより、誰よりもユーリを好きなのは僕なのにっ…って、僕の心は醜い嫉妬心でいっぱいだった。 ユーリの仕事は、僕とユーリの間に溝を作ったけど、僕にユーリへの恋愛感情を自覚させた。なんだか皮肉だ。 でも、どうしたらいい? ユーリは、もう学校中の話題の的だし、それどころか全国規模で知られるような存在になってしまっている。 もう僕の知ってる幼馴染みじゃなくて、別の世界の人みたいだ… 今日だって、ユーリがエステリーゼさんと話してるのを聞いていて、僕は全然話に入っていけなくて。 だって、僕なんかが話しかけたりしても、散々避けてきたのに今更だ、とか、最近有名になってきたから話しかけてる、とか、幼馴染みだからって馴れ馴れしい、とかユーリは思うかもしれない。 とにかく臆病になっていた。 エステリーゼさんからのプールの誘いをやんわり断って、恐る恐るユーリの様子を横目で伺うと、ユーリは目に涙をためて、凄い勢いで教室を出ていった。 僕はユーリの表情を見ていてもたってもいられなくて、何も考えずにユーリの後を追った。 ユーリにどう思われるか、なんて、全く考えられなかった。ユーリに、あんな悲しい顔させたくない。ただ本能的にそう感じて、走り去ろうとするユーリの細い手首を掴んだ。 [*前へ][次へ#] |