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コバナシ。
幼なじみの彼女を奪ってしまいました。(↑続き)
フレンが女の敵な感じの人です。タイトルの通りです。嫌な予感がする人は読まないで下さい。読んでからの苦情は受け付けられません…すみません。






ユーリにまた新しく彼女が出来た。

なんだってこんな短期間に…、と思うが、実際ユーリは女の子に人気があったのだ。
前の彼女と別れるのを待っていた人がいたっておかしくはない。

ユーリに初めての彼女が出来るまでは、彼はあまり女性に興味のある素振りを見せなかったので、積極的に言い寄ってくる女性は少なく、遠巻きに見ている人が多かった。
でもユーリに彼女が出来たという噂はすぐに広まって、敷居が低くなったというか…私でも彼女にしてくれるんじゃ、みたいな人が増えたんだろうな。




「…今度はどんな娘なの、ユーリ。」

ユーリが新しい彼女との何度目かのデートを終えたある日の夕方、僕はずっと気になっていたことを尋ねた。


「ん〜?お前も知ってると思うぞ。角のパン屋で働いている娘。」

ああ、あの娘か、と言われてすぐ思い浮かんだ。
パン屋さんの一人娘で、気立ても良くて、可愛らしい娘さんだ。
誰から見ても好ましい娘だと思う。


…思う、けど。

どうしてだろう、彼女はお菓子作りが趣味かは分からないけど(パン屋の娘さんだから菓子パンくらいは焼けるだろう)、純粋そうだし、白い花も似合うだろう…これだけユーリの彼女としての(僕が決めた)条件を満たしているのに、祝福する気になれなかった。

それどころか、そんな女性が現れた途端にユーリが本当に僕から離れていっちゃうような気がして…ユーリに初めての彼女が出来たときより、もっと不安な気持ちになった。


「…ユーリ、彼女とは、その…真剣なお付き合いをしているのか?」

「ん?そうだな…オレなりに真剣にしてるつもりだよ。っつーか、火遊びは前の妊娠騒動で懲りた」

「…そっか…。」

「あ、フレンもパン屋良ければ贔屓にしてくれよ。彼女のオヤジさんの売上貢献!」

「うん、そう…だね」

僕は力ない笑顔でそう返すのが精一杯で、それっきり何も言えず彼女の話題は途切れた。



………

それから、何度かユーリと彼女が一緒に歩いているのを見かけた。

二人はいつも楽しそうに笑っていた。
時折ユーリは彼女の頭を撫でたりして、それに対して彼女は照れた顔を見せたりしていた。

…なんだか、モヤモヤする。ユーリのこと、祝福してあげたいのに。


「…はぁ…。」

下町の食堂でのアルバイトの休憩時間に、客席でまかないを食べながら、何度目か分からないため息をつく。

「おっフレンじゃん、どうしたー?ため息なんかついて」

そう言って僕に声をかけてきたのは、昔から知っている下町の青年だった。

「お前がため息なんて珍しいじゃん」

彼は僕の横に座り、ため息の理由を聞いてきた。
普段なら、あまり人に相談とかはしないが、この時はユーリの彼女のことで結構参っていたらしい。ついポロリと話してしまう。

「いや…なんだか、ユーリの彼女の事が気になってしまって…」

「フレン、お前…親友の彼女好きになっちまったのか!?」

いや、違うけど…僕の言い方が悪かったのか彼は勘違いをしたまま、ペラペラと話しだす。

「ま、そういう事良くあるよな〜。でもさ、仕方ねーんじゃねぇ?親友だからって遠慮ばっかしてても駄目だろ?好きになったんならどんな相手でもバーンとぶつかってかねーと後悔するぜ?」

「はぁ…」

自分にそういう経験があるのか、妙に熱弁し出した彼に唖然として、思わず相槌をうつ。

「そんな好きな女が一緒ってだけで壊れるような友情じゃないだろ?お前らのは。頑張ってみろよ!」

「はは…そう…だね…。」

今さら訂正するのも面倒になってしまい、彼に話を続けさせる。
そして彼は最後にこう言った。

「ま、お前から言い寄られて断る女なんて滅多にいないだろうから、ユーリもフラれるのは時間の問題かもな〜」




………



そんな会話をして、また仕事に戻り、すっかり日も落ちた帰り道。

フレンはユーリの彼女が働いているパン屋の横を通りかかった。

ふと衝動的にその店に入ると、いらっしゃいませ、と若い女の子の声で出迎えられる。

「あっ…」

その声の主は見た瞬間に僕だと分かったのか、一瞬動きを止めた。

「…こんにちは」

彼女にそう挨拶するが、その時の僕の声は、何故かいつもより低くなっていた。

「こ、こんにちは…えっと、フレンさん、ですよね。ユーリ君の友達の…」

「…ええ。ユーリから僕のことを?」

何故だろう。いつもなら友好的に明るく話しかけられる筈なんだけれど、どうしても低い調子で返してしまう。
どうにもコントロールが出来なかった。

「彼、よくあなたのことを話すんです…」

彼女は少しだけ怯えたようにそう言った。
そうか、ユーリは僕のこと良く話すのか、なんて嬉しく感じたが、このまま彼女と話していたらもっと彼女を怯えさせてしまう。

「…そっか、なんだか恥ずかしいな…。じゃあ、僕はこれで。何か買っていきたいけど、もう店じまいであまり商品も無いようだし」

今日は君に少し挨拶しておこうかな、と思っただけだから、と言って店を出ようとすると、彼女が僕の腕をつかんで引き留めた。

「あ、あの!少しお時間…頂けませんか?私、ユーリ君のことで相談が…」

いや、これ以上彼女とは一緒にいれない、なんて思い、適当な用事をつけて断ろうとするが、僕を引き留める彼女の表情があまりに必死で、僕は断ることが出来なかった。

………


「ユーリ君、私のこと、好きじゃないんじゃって…不安なんです…私、彼のこと、ずっと気になっていて…前の彼女と別れたって聞いて…ほとんど衝動的に告白したんです」

…それは、ユーリから聞いた話でなんとなく把握していた。

「その時は、ユーリ君すぐにOKしてくれて…彼は私のこと前から知っていてくれてたけれど、そんなに沢山話したこと無かったし…遊びじゃないかって周りに言われたけど、私、それでも良いって思ってたんです」

遊び、ということは無いだろう。ユーリは、けっこう真面目な付き合いをしている、と言っていた。

「それで…前の彼女さんとは、その、けっこう進んだお付き合いをしていたみたいだって聞いたことがあるのに…私とは、手を繋ぐくらいで…キ、キスもしてくれなくて…わ、私そんなに魅力ないのかなって…」

そうじゃない。ユーリなりに彼女のことを大切にしている。
おそらく、この感じだと彼女は男性とお付き合いをするのはユーリが初めてだ。
それが分かったからこそ、ユーリは彼女との関係を急いで進める気にはならなかったのだろう。


…そう彼女に言ってあげれば良いのに、何故か言葉は出てこなかった。

ユーリが彼女のことを大切に思っている、という事が彼女の話から伝わってくるほど、僕の心に言い表せない、どす黒い感情が渦巻いていた。

そして、お昼に聞いた彼の言葉が、ふっと浮かんだ。

(僕に言い寄られて断らない女の子はいない、か…)

こんな、ユーリのことが好きで僕に相談してくるような女の子が僕に言い寄られてそう簡単に頷く筈がない。


…でも。もしそうなら、彼女はユーリの隣にいる資格はない。


僕は言い訳がましくそんな事を思って、にっこりと微笑みながら彼女の瞳を覗きこんだ。


「…ユーリは、女性の気持ちを理解出来ない男だから…」

君のような素敵な女性は、ユーリには勿体ないかもね。

そう含みを持たせてわざとらしいくらいの笑顔を作って、彼女の髪を撫でてやる。

瞬間、彼女が確かに僕に対して赤面したのが分かった。




………


「ただいまー」

「おかえり、ユーリ。なんか…元気ないね」

「んー…そうかもな。彼女に、フラれた。オレ以外に気になるヤツ出来たって。そんな気持ちのまま付き合えない、ってさ」

気になるヤツ、というのは僕には心当たりがあった。
僕は、あの後も何度か彼女の相談にのる、という名目で会う機会があった。
なんてことはない。僕は本当に相談にのっていただけだ。大したアドバイスはせず、話を聞くだけだけれど。

「フラれた、っつーことにはそこまでショック受けてないんだけど。彼女がさ、なんか自分から告白したのに自分から振るなんて自分勝手だ、って泣いちゃってさ…」

それがなんかツラかった、と話すユーリに少し申し訳ない気持ちになるが、心の中でやはり彼女はユーリに相応しくなかった、僕に少し優しくされたくらいで心が傾くんだから、なんて思っていた。

因みに、僕は彼女がユーリを振って以来、彼女に会っていない。
当然だ。だって彼女はユーリと別れてしまったし、僕が彼女の相談にのる理由もないだろう。


「ま、騎士団の入団試験ももうすぐだしな。これから忙しくなりそうだし…ちょうどよかったのかもな。」

「そう…だね。」


そうだ。僕達はもうすぐ入団試験を受けて、騎士になる。
騎士団に入ってしまえば後は安心だ。
騎士団は男ばかりだし、厳しい訓練で彼女どころじゃないだろう。



僕はそう思って安堵する。

でも、そんなに人生は甘くなかったみたいだ。



僕は騎士団に入ってからも、自由奔放で、男女問わずもてるユーリに翻弄されることになる。



end




*****
フレンを最低な人にしてしまってすみません。でもユーリが好きすぎて彼女を奪っちゃうフレン、ずっと書きたかったので長文になりましたが、楽しかったです…
暗くなりましたが、この後からはこのシリーズはまたコメディになります!

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