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コバナシ。
デートしましょう!(ぐらどる番外、フレユリ♀)



 人混みの多い、休日の駅前。待ち合わせしたら相手を見つけるのに手間取るだろうけど、僕はすぐに彼女を見つけた。

「待った?」

「ん、さっき着いたとこ。この格好だとナンパとかされないで良いな」

「確かに声はかけ難いかもね。でも人混みの中でも目立つし、待ち合わせにはうってつけだ」

 まあ、君はそういう格好をしてなくても目立つけど、そう言いながら慣れた仕草でフリルがふんだんに使われた服の袖口から覗く手をとり、指を絡める。

「ユーリ、どこに行きたい?」

「カフェ!雑誌に載ってたとこ行きたい。真っ黒なロリータ服だと少し浮くかもしれないけど」

「問題ないよ。お姫様がお茶してるみたいで可愛いんじゃない?」

「お姫様とはちょっと違うんじゃないか…?」

「僕にとってユーリは世界で一番のお姫様だよ。さ、行こう」

「…ばかじゃねーの」

 きゅ、と手を少し強く握って僕らは歩き出す。
 この人混みの中で堂々と歩いていても、誰も芸能人のユーリに気づいていない。
 ユーリは最近CMや朝の番組の流行り物特集のモデルなどに抜擢されるようになり、変装せずに街中を歩くと気付かれてしまう。
 彼女が着ているゴシックロリータのドレスは、満足にデートも出来ない僕らを見かねて、彼女のメイク兼スタイリストのジュディスが変装用にプレゼントしてくれたものである。
 最初はこんなの着ていたら余計に目立つんじゃないかって心配だったけど…グラビアアイドルがロリータ服を着ているなんて誰も思わないらしい。

(ああ、一目を気にせずデート出来るって幸せだなぁ…。)


「着いたぞ、フレン」

 感慨にふけっていたら、いつの間にかカフェの前に着いたらしい。少し早い時間だからか、人気の店なのにあまり混んでいないようだ。


 店員に案内されるままに席につき、ケーキセットを2つ注文する。(大抵僕は自分のケーキの半分をユーリにあげてしまうが)

「ふふ、楽しみだな〜。ここのケーキ、カスタードが絶品なんだってさ」

 頬杖をついて、鼻歌を歌いながら楽しそうにケーキを待つユーリは子供みたいで可愛い。
 あと多分無意識なんだろうけど、ロリータ服を着ているユーリは普段より少し仕草が小さい女の子みたいになる。いつものユーリも好きだけど、彼女の見慣れない仕草が見れるのは嬉しい。これもこの服の良いところだ。

「あ、来た!」

 色とりどりのフルーツが盛られたタルトに紅茶、そして僕の分のモンブランとコーヒーがテーブルの上に乗る。
 ユーリは目をキラキラさせながらケーキを口に運ぶ。

「ん〜っ!うまい〜!」

(本当に美味しそうに食べるなぁ…)

 夢中なのか、クリームが口周りについてるのにも気づいていない。

「ユーリ、クリームが口の周りについてるよ」

「え、どこ?」

「ここ」

 指ですくってあげて、手を離そうとしたときだった。

「はむ」

 ちゅ、ぺろ。

「!?」

 …ユーリは僕の指を食んで、ついたクリームを舌でペロリと舐めた。
 ユーリの小さな舌の感触が指から全身に伝わって、背中がゾクゾクと震えた。

「ちょ、ユーリ!」

「?」

 思わず声を出すが、ユーリは僕の指から唇を離し、上目遣いで僕を見上げてキョトンとするだけだった。
 というか、指を舐めた後に上目遣いって…。

 お誘い、されているようにしか思えないですが。
 多分ユーリは無意識にやっているんだろうけど…。

 ただでさえユーリは撮影、僕は生徒会で忙しくて…つまり、ご無沙汰だ…とでも言うところだろうか。とにかく僕だって健康な男子なのだから、仕方がない。

(これは、ちょっと堪らない…というか変な気分になるというか…)

 …取り敢えず、コーヒーを飲んで落ち着こう、フレン・シーフォ。

「この後、どうしよっか」

 よし、なんとか普通の声が出せてる。

「フレンは何か見たいものないのか?」

「う〜ん…僕は特には…あ、少し参考書見たいんだけど」

「あ、オレも本屋行きたい。すぐ近くに大きいとこあったよな」

「決まり。じゃあ行こうか」

 一つのモンブランを二人で食べ終え、会計をして店を出る。
 そして本屋に入り、ユーリの載っている写真集や週刊誌の売り場を避けて参考書のコーナーへ向かう。

「あ、ユーリの見たいものって何?先に僕の見たいとこに来ちゃったけど」

「……オレも、参考書。…受験用の」

「…ユーリ、受験するの?」

「なんだよ、オレじゃ受からないって?」

「いや、そうじゃなくて、経済的な問題もあるし…仕事だって学費のためにしてたみたいだから…」

「…うん、最初は大学行かないで就職するつもりだった、けど…」

「けど?」

「オレ、欲張りなんだ。大学も、フレンと一緒のとこに行きたい、そう思うようになって…」

「ユーリ…」

「本当は、高校の学費分くらいは貯金で余裕なんだ」

 ユーリは僕に黙っていたことが後ろめたいのか、少し俯きながらぽそぽそと話し始めた。

「…でもフレンが大学行って、オレの知らない学生生活をしてるとか、お前、モテるし…大学で他の女に目移りとかしたらどうしよう、とか…色々考えちまって…」

「ユーリ…」

 そんなの、全然心配しなくていいのに。
 大体僕はユーリ以外には目に入らないんだから。それに心配なのは僕の方で、ユーリがいつかテレビで人気の俳優や男性アイドルに奪われたら、とか、就職先で大人な男性に目をつけられたら、とか、考えたらきりがないのに。

「…だから、離れたくない。学費はかかるけど…フレンと一緒にいたい。グラビアの仕事も好きじゃないけど、フレンと一緒にいられるなら我慢する」

 ああもう、何でこんなに綺麗で可愛い子が僕なんかのためにこんなに必死になってくれるんだろう。
 ユーリと付き合いだして結構経つけど、今でも夢なんじゃないかって思うくらいだ。

「あ!でも、束縛とかしないから!…ってこんなこと言った後じゃ説得力ねぇけど…」

 ユーリは僕の表情を見ずに、半ば独り言のように話し続ける。何か言わなきゃ、そう思ったけどなんだか胸がいっぱいで言葉が出てこなかった。

「ただフレンの近くにいたいだけだから…束縛するつもりで大学行くんじゃないし!ちゃんと勉強だって……」

 恥ずかしいのか、自分でも何を言ってるのか分からなくなってるのか、ユーリの口調はどんどん早口になって、顔も真っ赤になっている。
 

(ユーリ…君って、本当…)

「ごめん、オレ馬鹿みたいだよな、忘れてくれ…」

 照れ隠しなのか、目をぎゅっと瞑って俯くユーリは、本当に本当に可愛くて。

(…馬鹿だよ、ユーリ。こんな可愛いこと言われて、忘れられるわけないのに…)

「忘れない」

「…っ」

「束縛してよ、ユーリ」

「お、お前なにいって…」

「ユーリに束縛されるなんて、嬉しい」

「…は?」

「その代わり、僕もするけど」

「?」

「束縛。まず、仕事に行く前と、終わったら僕に連絡すること。あと、出来るだけ避けて欲しいけど…僕以外の男に連絡先を教えなくちゃいけなくなったら、それも報告して」

 あと、それに…まだ色々あるな…。細かく考えたら両手でも足りないかもしれない。

「週に一度は必ずデート…は難しいかもだけど、泊まりとか、とにかく二人きりの時間を作ること」

「フレン…」

「…あと…考えだすと他にも色々あるな…ふふ、僕の方がよっぽど独占欲が強い。ユーリ、嫌になった?」

 そう言うとユーリはぷるぷると首を振り、「嫌じゃない…」と言って僕の服の袖をつかんだ。

「どっちかってーと、嬉しい…かも」

「僕も同じだよ。…受験勉強、一緒に頑張ろうね」

「うん…」

 ユーリは顔を赤くして、でも嬉しそうに頷いた。

「帰ろっか」

「うん…」

 外でデートも良いけど、やっぱりユーリと二人きりで抱き合ったり、キスしたり、……したりするのが一番好きだな。
 そう思ってユーリの手を引いて、帰路につく。
 この後、きっと僕らはいつも通りユーリの部屋で彼女の作った手料理を食べて、えっと…定番の、そしてお待ちかねのアレコレを…。

 …正直、さっきからカフェでの光景が頭にちらついて仕方がなかった。帰ろう。出来るだけ早く。

「なぁフレン」

 書店内の狭いエレベーターの中で二人きり、一階に着くのを待っていると、ユーリが不意に話しかけてきた。
 何?と言って彼女の方を向いた瞬間。

 ちゅっ。

 …柔らかいものが、唇に。

「ゆ、ゆゆ、ユーリ…!」

 物凄く可愛いバードキスを不意討ちに貰い、僕は滅茶苦茶パニックになった。
 監視カメラが着いてるかもしれないとか、もしタイミング悪くドアが開いたらどうするんだとか、後から思ったことは有ったが、この時はもうそれどころじゃなかった。
 極めつけは、ユーリのこの言葉だ。

「だって、家まで我慢出来ねーもん」

 いいじゃん。誰も見てないし。
 ユーリは唇に人差し指を当てながら、いたずらっ子のようにウインクした(しかもコレ、ユーリの写真集で見たことがある表情なんだけど!)。


 …本当に彼女は僕の心を掻き乱すのが上手い。


(…僕の理性が家までもたなかったら、どうするんだ…)




end.




*****
久しぶりにもやしもんの蛍くんを見てゴスロリ萌えしたので笑
お互いに束縛して嬉しがってたりしたら可愛いかな〜と!
この後ユーリのマンションに着くなり「僕も待てないよ…!」みたいにフレンがユーリにがっついて、玄関で服も満足に脱がさずそのまま…
ってとこまで書きたかったけれど長すぎてやめました。
ユーリは無事にフレンと同じ大学に合格し、お金が貯まったので仕事を辞めようか迷いますが、結婚資金のためにフレンが社会人二年目くらいになるまでグラドルを続ける…かな?
そんでフレンにプロポーズされて専業主婦になります、きっと。

かなり遅くなりましたがお誕生日だったモナコさんに捧げます…☆ぐだぐだなお話ですが貰って下さい…。

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あきゅろす。
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