夜明けまで、あと一時間(いー友)
ゆらゆらとした眠りからふっ、と目が覚めて。傍らで眠る少女を確認する。 自分の腕の中で眠る友は死んだように静かに寝ていて。思わず息をしているか確認してしまった。 大丈夫、生きてる。 時計を見れば午前5時過ぎ。夜明けまで、あと少し。 もう少し寝られるけれど、夜明けと共に起きるだろう友のことを考えると、このまま起きていた方がいいかも知れない。 優しく、起こさないように薄いブルーの髪を撫でる。さらさらとしていて、とても心地よい。 「…ん」 小さく息を吐いた友に首を傾げれば、ぱっちり、目を開いた。 起こしてしまったらしい。 友の目が時計を見て、それから僕の方を見る。 おはよう、唇が動いた。 「ごめん、起こした?」 「んーん、いいよ。おはよう、いーちゃん」 「おはよう、友」 小声で話す。特に小声で話す必要はないけれど、なぜかそうした。 僕も友も。秘密を共有するように小声で話す。 「少し早く起きちゃった」 「僕もだよ。もう少し寝る?」 「ううん。もう起きる」 友は起き上がって、僕を見下ろして言う。 「いーちゃん、外行こう?」 広いベランダに出て空を見上げれば、水平線の辺りがうっすら白い。そこから水色、青、藍色、と色が変わっている。 綺麗だ。 友は綺麗だね、と呟いて空にを伸ばす。 コートの袖から白くて細い腕が出てくる。そう言えば脚は裸足だった。 「友、寒くないか?」 「大丈夫」 コートの裾は長くて、脚の大半を隠しているから大丈夫か…、と思って再度空を見れば。 「あー」 「夜明け、だね!」 太陽が少しだけ顔を出していた。ほんの少し、眩しい。僕と友の顔を明るく照らしている。 「いーちゃん」 僕を呼ぶ友に視線をやって。 「なんだ、友」 「今日もよろしくね!」 「…ああ、よろしく」 そうして今日が始まった。 [次へ#] [戻る] |