10.この恋のテーマソング(いー友、哀川)
「らーたらーたらーん♪」
哀川さんが歌…いや、何かのメロディーを口ずさんでいる。白い友の部屋の中、赤いこの人は楽しそうにしていた。
「らーららーら、らーららーらー♪」
「哀川さん、それなんですか?」
「潤」
「…潤さん」
「何って、即興?お前らの両片思い卒業記念に」
嬉しそうに笑う哀川さんは、無邪気だ。悪意で言っている訳ではない。
だからこそ、少し反応に困る。
「…あの」
「礼は?」
「…ありがとうございます」
「ん。これ、その内ちゃんと曲にして渡してやるから」
「ああ、はい…。貴女に出来ないことはなかった…ですね」
曲すら自作出来るのだ、この人は。さすがに呆れる。
僕も友も、遠く及ばない。
「この恋のテーマソング…なんちって」
「楽しそうですね」
「いやーやっぱり恋愛は聞いてていいなって思ったから。玖渚ちゃんと仲良く暮らせよ」
「同棲はまだまだ…先ですって。玖渚の手術…僕の就職…」
「ん?なんだ仕事やるんだ?
ならあたしが雇ってやるよ。請負人助手」
「は?」
今すごいこと言わなかったかこの人!?
請負人助手!?
「いやいやいやいやいやいや。いいですって!」
「お前にまともな仕事が出来ると思えないんだが」
「うっ」
「だからあたしが雇ってやるよ。うん、決定!」
決まってしまった。哀川さんが言うのだ、逆らえる訳ない。
これは友に知らせないとヤバイ…。
「来週から仕事で海外行くから準備しとけよ」
「…来週!?あと3日!?」
「おう。
また面白くなりそうだぜ、相棒!!」
1人ケタケタと笑う哀川さんは楽しそうだった。
ああ、本当に時間がない…。
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