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好きがあふれた(いー友)

「いーちゃん」

僕の下で友が青い瞳を瞬かせながら僕を呼んだ。腕をベッドに抑え付けられて、自分の上に馬乗りになった男を不思議そうに見上げている。
危機感がないのか、僕を脅威と思っていないのか。普通なら暴れるものだが。

「友」

「なに?」

「…自分がどう言う状況かわかってる?」

僕の言葉にまた瞳が瞬いた。
青が一瞬隠れ、また僕を映す。

「うん?」

「危機感なさ過ぎじゃないか?」

「…別に?」

にんまり。
時たま見せる、悪い笑みで友は楽しそうに笑う。

「いーちゃんだったらいいよ」

「…」

「いーちゃんだったら何されてもいいよ。それだけ僕様ちゃんはいーちゃんを大好きなんだ」

きっとそう。
吐息と共に言葉が吐き出される。

「きっと、これは"愛してる"って、感情なんだと思うよ。
僕様ちゃんはいつだって大好きで大切なものはそれなりにあったけど、愛してるのはいーちゃんだけだよ」

いーちゃんは、僕様ちゃんにたくさん教えてくれるよね。
そう言って、友は笑う。
何を教えたのか、なんて。
裏切りか、それとも死か。
僕がお前に教える以上にお前からたくさん教わってる。
恋も、きっとお前に教わったんだろう。

「は、あ…」

「苦しい?」

「苦しい…」

「恋は苦しいみたいだよ?僕様ちゃんも苦しい時あるし」

「それは病気じゃなくてか」

「病気かも知れない。でも、愛もきっと何かしらあるよ」

「…お前は?」

「んー…今は…そうだなぁ…」

今も友は僕に組み敷かれている。暴れもせず、それが当たり前かのように振る舞っていて。
僕が自分を汚してしまうかも知れないのに、どうして平然としているんだろう。

「…ああ、1つだけ」

僕の思いなどどこ吹く風で、友は頷いた。
青い、蒼い瞳が僕へと向く。

「愛は、死にたくなるくらい欲しくなるよ」

「欲しくなる」

「いーちゃんの全部が全部、欲しい」

それは、友を組み敷く僕の衝動的な行動の理由と一緒で、ああ、これは愛なのだとわかった。

「そっか」

恋をする。
そして好きが過ぎると愛になるのか。

「はは」

「いーちゃんは、私が欲しい?」

「うん、欲しい」

僕にしては珍しく、即答する。
断言する。
僕は友が欲しい。

「じゃああげる」

いつもの笑み。友は何も変わらない。
それは僕も。
変わらない、だろうか。
いつの間にか僕の手から抜けた、白くて細い腕。それが僕へと伸ばされる。
首へと巻き付いた。

「特別、だよ」

「はは、うん」

あふれた愛はどこに落ちるのだろうか。

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