頬を擦り寄せて(仏米)
ふわり。
柔らかな風が吹く。開きかけの蕾の付いた枝が揺れて、花びらが舞った。
「う〜!!ようやく俺ん家もあったかくなったんだぞ〜!!」
「本当にね〜。サクラも咲いたし」
アメリカはふわふわと宙を舞う花びらへと手を伸ばし、届かずに手は空を切る。ムキになって何度も挑戦するが、一向に掴む気配はなかった。
ようやく温かくなったアメリカの家は、今絶賛桜祭り開催中だった。日本からもらった桜はなぜだか家で育つと少しばかり色が強く、アメリカさんの様ですね、と笑われた。
そんな毎年開催される祭りにフランスを誘って、デートの最中だ。この会場のどこかに上司が招いた日本もいるだろうが、そんなことはお構い無しだ。
「ほら、フランス、水面に花びらが浮いてる!」
「お〜!こりゃきれいだね!」
淡い桃色より赤い花びらは、水面にたくさん浮かぶと絨毯のようだ。ゆらゆらと揺れるそれは、風が吹く度に少しずつ増えていく。
「…すぐ散っちゃうかな?」
「まだ咲きかけだから大丈夫じゃない?しばらく楽しめそうだ」
「…フランス、楽しい?」
「ん?…うん、楽しいよ?…ほら、アメリカ、そんな顔しないでこっちおいで」
自分から誘ったデートだが、フランスがいつもするようなデートとは違うような、なんとなく味気ない気がしてアメリカは唇を尖らせる。少し拗ねたようなその顔に、フランスは苦笑してアメリカを引き寄せた。
背伸びをしてコツンと額をぶつける。
「のんびりお散歩デートもたまにはいいでしょ?」
「…ご飯は屋台だけどいいかい?」
「もちろんさ!でも帰ったらお兄さんの料理食べてくれる?」
「…うん。全部食べるよ」
スリスリ、頬擦りしてアメリカは触れるだけのキスをする。フランスも同じように返して、アメリカの指に自分の指を絡ませた。
「よーし、まずは何から食べる?」
「…あっち!昨日の内から調査しておいたんだ!」
「美味しいやつ?」
「日本とこの料理?みたいだよ」
「よしよし、じゃあ行こう!」
少し疑問系だったのが気掛かりだが、キスと恋人繋ぎでご機嫌になったアメリカに笑って、フランスは桜が舞う中を引っ張って歩く。
「おやつはサクラモチ!」
「賛成!」
クスクスと笑い合ってもう一度キスをした。
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