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体温の分け合いっこ(立波)

春の兆しが見え隠れするこの頃。それでもまだ夜は寒く、風呂から上がったその足で部屋へと急ぐ。温まった体からじわじわと熱を奪う冷えも部屋に入ってしまえば追って来ない。
赤々と暖炉を照らす炎によって暖められた部屋の中、ベッドの上には本のページを捲るポーランドがいた。彼は俺に気付くと自分の隣を叩いた。
俺は頷いて暖炉に薪を追加して、ポーランドの隣に滑り込む。彼の体温で暖められた毛布の中は少しばかり冷えた体を暖めてくれる。

「…何読んでるの?」

「ラトから借りたやつ。甘ったるい恋愛小説」

ペラペラ、ページを捲りながらポーランドは酷評を始めた。あまり現実味のない話ながらでもファンタジーな訳でもなく、なんとも中途半端らしい。ラトビアが聞いたら涙目だろう。それにすらポーランドは呆れるかも知れないが。

「寝ないの」

「寝る。リトのこと待ってたんよ」

パタン。
ポーランドは栞を挟まずに本を閉じた。彼の記憶力を考えれば問題ないだろうが、少々羨ましい。
本をベッド脇の棚に置いて、俺に擦り寄ってきた。眠そうな瞳をこちらに向けて、顔を寄せてくる。
桃色の唇が触れた。

「…ポー、待って」

すぐに離れた唇を追って今度は俺から口付ける。ベッドに縫い留めるように覆い被さって、抱き締める。

「…寝るんよ?」

「そうだよ?」

「じゃあそのヤラシイ手をどけるし」

腰周りを触っていた手をはたかれる。細い輪郭をなぞる指も払われて少し不満だが、代わりに首に絡まった腕に引かれる。
もう一度キスをして、にっこりと微笑まれた。

「おやすみだし!」

「…おやすみ」

ぎゅ、俺の腕の中に収まった彼を潰さないように抱いて、サラサラと髪を梳く。心地よいのかすぐに寝息を立てたポーランドの額に口付けた。
彼は温かくて、とても心地よい。ふわふわとし始めた視界と思考。それから小さく呟かれた俺の名前に安心してゆっくりと意識を手放す。
明日は暖かいといいなぁ。




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