シチューに愛を込めて(仏米)
ふわりと香る良い匂い。テレビに夢中になっていたアメリカは、その匂いに誘われキッチンへと顔を覗かせる。ちょうど振り返ったフランスと目が合った。
「どうした?」
「ん〜良い匂いしたから〜」
「もうできあがるよ。もうちょっと待ってて」
待てない、なんて甘えてアメリカはスプーン片手に味見を要求する。仕方ないなぁ、フランスは苦笑してお玉に少しだけシチューを掬う。熱いからね、注意して一口、アメリカに味見させた。
「うまーい!」
「でしょう?お兄さん料理上手だからね」
「どうしたらこんなに美味しくなるんだい?」
スプーンを咥えたままアメリカはフランスに尋ねる。フランスはアメリカの口からスプーンを抜いて片付けながら首を傾げる。そうだなぁ、フランスはウィンクした。
「愛情込めてるからかな」
「愛情」
「食べてもらう人に美味しいって言ってもらうために、美味しくなぁれ、って愛情込めてるかな」
「Boooo!それで料理が美味しくなるなら俺はとっくの昔に料理上手だぞ!」
少し膨れてアメリカは腕を組む。
アメリカは元からダメでしょ、フランスは最後に香草を入れてかき混ぜる。ふわ、先ほどより少し変わった香りにアメリカは鼻を鳴らして、早く、文句を言う。
「あらぁ?その膨れっ面で俺の料理を食べる気?」
「文句あるかい?」
「おおありだね。俺はお前に笑顔で食べてもらいたいんだけど」
火を消してフランスは大袈裟に両腕を広げる。ムッスリ、アメリカは膨れたままその腕の中に収まった。
すり、鼻先を首にうずめて、アメリカは小さく謝罪の言葉を口にする。囁かれたごめんの言葉に、フランスはぽんぽん、頭を撫でる。
とりあえず仲直りだ。
「アメリカ、シチュー食べよう」
「…うん、食べたいんだぞ」
大きな深皿にアメリカの分を、普通サイズの深皿にフランスの分を、それぞれ盛って食卓に運ぶ。アメリカは後ろからバスケットに入ったパンを、シャキシャキのサラダを、運ぶ。
食卓に並んだ2人分のグラスにワインを注げば準備完了。
わくわくとしたアメリカの顔にフランスは芝居がかった仕草でどうぞ、と合図を出した。
「いただきまーす!」
スプーンで掬ったシチューを口に入れて、笑顔。フランスはパンに付けて食べる。
まろやかなとろっとろのシチュー。じゃがいもが溶けて少しもったりとしているがそれも美味しい。
「…フランス」
「ん〜?」
「愛情どれくらい入れた?」
「…そりゃあ、アメリカ愛してるくらい?」
「えへへっ、そっか!」
1人納得したように頷いてアメリカはまた一口、シチューを啜る。対してフランスは微妙な顔をしている。
「…お前、何考えてる?」
「だから、料理を上手に作るには、フランスを愛してるくらい愛情入れるんだろう?」
「それだけで料理は上手くならないぞ?」
「大丈夫だって!今度作るから味見してくれよ!」
「…やだぁ、お兄さん味覚死んじゃう」
楽しい食事がいきなりフランスによるアメリカへの説得の場となってしまった。
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