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寄り道(いー友)

どこまでも続く秋晴れ。それは夕暮れの時刻を表している。
珍しく外に出たい、なんて言った引きこもり娘の護衛に僕も付いて行って、行った先はあてどもなく。
あっちへふらふら、こっちへふらふら。
こうしてついでに買い物までしてその帰り道、友は一匹の猫を見つけた。

「あー、猫だ猫、にゃにゃーっ」

白と黒の斑模様。それに友は手を差し出す。噛まれたり引っ掻かれたらヤバイからやめろと言う前に、猫は友の手をすり抜けてスタスタと歩き出す。
友は僕の静止を聞かずに追った。
手間が増えた許さない。

「友、待てって」

猫はスタスタ、しかし友は良くて速度は表すならばトコトコだ、僕が少し早足になればすぐに追い付く。
が、頑固な友に追い付いたが止めずに仕方がないから猫を追う。今さら止めたところで聞かないのだ、友は。
小さな、しかし人間が通れない訳ではない微妙な隙間や裏路地を通りながら、猫は歩く。友はその猫だけを見て歩くから周りが見えていない。それを僕が腕を引いて避けさせ、どうにか轢かれずに済んだ。
僕がいなかったらどうする気なんだ。
しかし友にはたくさんの(特殊な)友人がいるから、外に出る時は誰がしかが傍にいるだろう。もしかしたら哀川さんかも知れない。
そうやって考えたり友を守ったりしながら着いた先。
それは高台になっている小さな公園。
かなり遠くまで来たな、なんて考えたその時、猫が駆け足になって茂みにジャンプ、あー!友が叫んでも猫は見つからない。
仕方なしに帰ろう、と言うために振り返れば、友は太陽を見ていた。

「…いーちゃん」

「なんだ?」

「見てよ」

友に言われて同じように太陽を見る。
否、友が見ていたのは太陽ではなく高いこの場所から見える景色だった。
なんて陳腐な、ありきたりの場面。
それでも、高い空に沈みゆく太陽が照らす街は、綺麗だった。

「綺麗だね」

「ああ、そうだね」

「ここどこかな」

「さあ。ケータイ使って帰ろう」

友はまた来れるか、とは聞かなかった。偶然が生んだこの場所は、また偶然、見つけなければ意味はない。
僕はそう思った。
多分友も同じだろう。
絶対記憶する友の頭には猫の記憶しかない。だからまた、来れるとは限らない。
それでも。

「また見れたらいいね」

「また、猫追いかけような」

「うん」

また、ここで見たいと思った。



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