手を繋いで出かけよう(立波)
「リトー、早くするしー!」
玄関でポーランドが呼んでいる。これでも急いでいるのだ。コートを着てマフラーを巻いて。ようやく準備の整った俺は、玄関の扉の前でぴょんぴょん跳ねるポーランドの元に向かった。
「遅いし!」
「…またスカート?」
「タイツ履いてる、だいじょーぶだし!」
ぴょんと跳ねたらスカートが捲れる。しょうがないので、跳ねないように言って手を差し出した。きゅ、ポーランドが握ってくる。
「じゃ、デート行こう」
俺の言葉と共に元気よく飛び出すポーランドを追いかけた。
朝はカフェで朝食を食べる。サンドイッチを食べる俺に対してポーランドは朝からパンケーキだった。甘いメイプルの匂いが鼻を掠めて、どうにも落ち着かない。
体が食べてるものと嗅いでるものの匂いの差に驚いているらしい。
「…甘い?」
「甘いし。食べたい?」
「いや」
俺の否定の言葉に怒る訳もなく、ポーランドは最後の一欠片を口に入れた。ぺろり、舌が唇を舐める。少し、後ろめたい気持ちになる。
目を離して、こちらも甘くした紅茶を飲むポーランドにどこに行きたいか聞いた。
「デート久しぶりだからな〜行きたい場所たくさんあるし〜」
「仕事で忙しくてごめんね」
「ええよー」
甘いもので機嫌が良いのか、今日はやけに寛大だ。いつもこうあって欲しい。
「とりあえず服買いたいからあそこ行ってー、昼飯はあっちかなぁ」
ポーランドの中である程度今日のスケジュールが決まっていたらしい。ご機嫌で話すポーランドを眺めながらこちらも予定を立て直す。
見せたいものはこちらだってあるのだ。
「じゃあ、行こうか。遅くなると嫌だし」
「ん」
差し出された手。やんわりと握って引く。
クスクス。可愛い、なんて言葉も聞こえたけど気にしない。ポーランドが女の子に見えているだろうことも考慮に入れても、今の俺達におかしいところは1つもないのだから。
会計を済ませて外に出ると木枯らし。ぴったりと引っ付くポーランドの手を引いて、目的の店に着いた。
「わあ…」
冬物の洋服がところ狭しと並んでいた。さっそく服を手に取ったポーランドは自分に充てて、可愛い?なんて聞いてくる。
可愛くない訳ない。とても可愛かった。
「可愛いよ」
「他には?」
「似合うよ」
「うしししし。マジで?」
服を持ったまま回ればスタートの裾が翻る。じゃあ買うー!レジへと持っていった。
その時に見つけたのはリボン。ポーランドが好きなピンクで、とても可愛らしかった。会計の時に一緒に買う。
「ほら、ちょっとおいで」
引き寄せて髪に結んでやる。ほんのりと頬を赤く染めてありがとだし、小さく言われた。余計に女の子らしくなってしまったがいいか。
今日はデートなのだから。
「ポー、お昼まで時間あるからちょっと行きたいとこあるんだけど」
「んー?いいし」
恋人繋ぎ、絡まった指が細い。
急ぎ足にならないように気を付けてポーランドの腕を引く。のんびり歩いて街を抜けた先、そこにはたくさんの紅葉。赤、黄色、まだ色付いていない緑。橙に薄茶。色とりどりの木の葉がひしめいた並木道。
軽いお散歩コースだ。
「…綺麗だし」
「ね。本当は夕方の方がすごく綺麗なんだけど」
俺の言葉にポーランドは首を振る。秋の光に照らされて、ポーランドの頬は赤い。
それだけじゃないこともわかっていたけど。
「リトと一緒なら、どこでも綺麗で楽しいし」
「…俺もポーランドと一緒がいいな」
甘いセリフではないけど。ポーランドは嬉しそうに笑った。
ふわふわと木の葉の舞う道を歩きながらポーランドはぴったりと俺に寄り添っていた。
「このあとどうするん?」
「ポーランドが前言ってたケーキ屋さん行く?」
「行く!リトにしてはいい案だし!」
「そりゃどうも。そのあとは夕食の買い出しして、夕食は俺ん家で食べようか」
「やった!リトのご飯大好きー!」
直接好き、と言われた訳でもないのに頬が赤くなる。ふふふ、ご機嫌のポーランドは俺の反応に口元をにやけさせる。
周りに人がいないことを確認して、ポーランドの唇を掠め取る。ちょっと驚いているポーランドに気を良くして、今度は深く。
リト好き、ポーランドの言葉に俺も、と返した。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!