小説
夏の色(立波)
「リトー!見てこれぇ!!」
こちらに走ってくるポーランドは僅かばかりピンクのペンキに汚れていて。オレに惨事を知らせる。
手に持つのは小さな写真立て。それは毒々しいピンクに染まっていて…ん?
何か入ってる。
「クローバーとか、麦とか、入れてみたし!なぁ、可愛くねぇ?」
「かわい…うーん」
ピンクに緑は合わないんじゃないかなぁ。そう思ったが、言葉を飲み込む。代わりに出たのが肯定の言葉だった。
「そうだね」
「だっしょ!?」
嬉しそうにくるくる回るポーランドが微笑ましく見えるが、残ったペンキを回収しなければならない。壁や屋根が被害に合う前に。
「ポーランド、のこりのペンキどうした?」
「んー?ないし」
「えっ、ない?」
「もう使いきったんよ。これ塗ったらちょうどなくなったし」
これ。ポーランドが示しているのが写真立てならば、それを塗る前に何を塗っていた?
オレは恐る恐るポーランドに聞く。
「…何を塗ったの?」
「リトん家の壁!あと屋根やし!マジ塗るの大変だったんよ!!」
「ああぁやっぱりぃぃ!!!」
家の外に出てみれば、青空に燦々と輝く真っピンク!!くすんだ赤い屋根に白い壁がピンクに…!!
今月に入って何度目だよ!! 塗り直すの大変なんだからね!!
「な?綺麗に塗れてるっしょ?」
「…ポーランド!!」
「ひゃー!リトが怒ったしー!」
オレの怒鳴り声にポーランドは嬉しそうに逃げていく。その様子から、オレの興味を自分に向けさせたかったと気付いた。
回りくどい上に手の込んだ…こいつは。一気に怒る気も失せる。
…いや、怒らなきゃダメなんだけど。
「リトー、塗り直すなら手伝うし?」
「ああ、うん、よろしく頼むよ」
オレの返事にまたポーランドは笑う。太陽の光にキラキラと輝く髪や少し頬を赤くした顔が、愛おしい。
ああ、お願いだからこんなイタズラ、やめてよ。疲労と怒りと愛情が混ざる。
「リト、次何色にする?」
「えー?」
倉庫からペンキを出したポーランドに、先ほど見た夏の色を思い出す。
「…緑、若葉色!!」
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