小説 それぞれの違い(仏米) 例えばの話。 例えば、リトアニアとポーランドの場合。 ポーランドがリトアニアより少し小さいから、キスする時はポーランドが少し背伸びをするか、リトアニアが少し屈めばいい。 例えば、日本とイギリスの場合。 日本がイギリスより僅かに小さいから、片方が顔を傾けるだけでキスが出来てしまう。 では、オレとフランスの場合。 フランスよりオレがうんと背が高いから、オレが屈まないとフランスが届かなくてキス出来ない。 これは許されないことだと思う。フランスはオレのことお…お姫様扱いだけど、実際は身長もたいじゅ…も体の大きさも、オレに負けているのだ。 それじゃあ不公平じゃないか。 悔しいじゃないか。 もっともっとフランスに甘やかして欲しいし、オレも甘えたい。なのに、フランスはオレの協力がなければキス1つ出来ない。 バカみたいだ、神様は不公平。なんでオレをあと少し小さく作るか、フランスをもっと大きく作らなかったんだろう。 もしかしてオレとフランスが付き合うことは想定外だったのか? 「…ゆるさないぃ」 「何が?」 「…フランス〜、キスして」 「いいよ」 ベッドに転がってしまえば身長なんて関係ない。すぐにフランスの長い指がオレの頬を捕らえて、柔らかい唇が触れる。少しくすぐったくて、笑ったら口を塞がれた。 小さなリップ音がして、フランスが離れていく。 「…で、何が許さないの」 「イギリス」 「またケンカしたのか?」 「君に言われたくないんだぞ」 フランスはオレの言葉に変な顔をする。適当に言ったけど、当たったのかも知れない。 彼らはよくケンカするから。 「イギリスと日本の身長、変わらないじゃないか」 「うん」 「…キスしやすそうだなぁって」 「…うん」 オレの言葉にフランスが笑う。なんだい、人が真面目に考えていれば! 「いや、怒んないで!アメリカ可愛いなぁって思って」 「かっこいいがいい!」 「ああ、かっこいいよ。オレのお姫様。 でも他人と比べるのは減点ポイントかなぁ?」 「なんで?」 「オレ達はオレ達のままでいいんじゃない?いいじゃん、屈んでキス待ちのアメリカ、犬みたいで可愛いよ」 「犬!?」 オレのどこに犬要素があるんだい!?フランス、許さないんだぞ!! おこのオレにフランスは喉奥で笑って、再び手を伸ばす。拒否するのはもったいなくて、オレは素直に受け入れた。 唇が近付いて、またしてくれるのかと期待してゆっくり目を閉じたオレに、フランスが少し低い声で言う。 「…オレと他人を比べないで。特にイギリス。 …妬けるから」 「えっ」 パッと開いたオレの目に、真剣な目をしたフランスが映って、それがすぐにふやけて柔らかい笑顔になって、オレに優しくキスした。 …ああ、まだ気にしてるんだなって思って。兄弟だとか1番近くにいたとか関係なく君を選んだのに。君しかいないのに。 フランス、もっとキスして。 「…フランス、すき」 「もっと言って」 「すき、大好き」 「オレもだよ。愛してる」 フランス語の愛の言葉はオレには難しくて。でもその響きが大好きで。 フランスを好きになって良かった。 身長差はまだ納得いかないけど、今はこれでいいや。 [*前へ][次へ#] [戻る] |