小説
あなたからキスして(リトポ)
「ねぇリト」
冬の終わりが近くなった暖かな日。さっきまで日の当たる窓際でタオルケットにくるまっていたポーランドが、隣にいるオレの名前を呼ぶ。オレは洗濯物を畳む手を止めずにその声に答えた。
「なに、ポーランド」
「キスして?」
「…は?」
「だからキスして」
ポーランドはいつもの"イタズラを思い付いた"と言うような、楽しそうな声でキスをねだる。なぜ、と手を止めポーランドの方を振り向けば、既に起き上がって顔をこちらに近付けていた。
すぐそこにポーランドの整ったきれいな顔があった。
「え…なんで?」
「なんで?理由言わなきゃならんの?」
「だって…唐突だから?」
「唐突じゃいかんの?オレ、リト見てたらキスしたくなったから言っただけだけど?」
「…じゃあポーランドからしてよ」
オレの言葉にポーランドは数度瞬くと、少し意地悪そうに笑った。その笑顔のままそろりそろりとオレに近付く。
ポーランドの白い手がオレの肩にかかり、ゆっくりと膝の上に乗ってくる。
「最初嫌がってたのにオレからしろとか、リトえっちだしー」
「…突然キスしたくなるお前よりマシじゃない?」
「別にいつものことじゃね?」
「…そうかもね」
ポーランドはオレの膝の上に乗って、両腕をオレの首に絡ます。ニヤニヤ笑いのまま、まずは額。柔らかな唇が触れて、そこだけ少し熱くなる。
次に鼻、頬へ。それから。
「リト、好きぃ…」
唇に吐息のかかる距離での告白。そのまま優しく触れるだけのキス。2回目はもっと深く。3回目は唇を舌先で舐められて、オレからのキスを催促された。
ポーランドの髪を梳きながら、唇を触れるギリギリまで近づける。
「…欲しい?」
「欲しい」
ポーランドはそうはっきりと言って、再び軽く口付ける。ぺろりと唇を舐められた。
ああもう。
「オレも好きだよ、ポー」
ポーランドに則って優しく、少し深く、それからもっと熱くキスをする。
唇を舐めればすぐに迎え入れてくれた。
「うぅん…」
鼻にかかった甘い声でポーランドは甘えてくる。逃げる舌を追いかけて、すぐに捕まえて甘噛みした。
絡めるポーランドの舌が甘い。
「ふ…はぁ、リト」
唇を離すとポーランドは不満そうにオレの髪をくしゃくしゃと混ぜる。もっと、と訴える潤んだ緑の瞳にそっとキスをして、オレの首に絡んだ腕を外す。
「服畳むから待っててね」
「はっ?」
固まるポーランドを膝の上から降ろして、放ったらかしてあった洗濯物を片付ける。しばし固まっていたポーランドは、不愉快そうに眉を寄せオレに指を突き付ける。
「まっ…じお前、オレに待てとか偉そうに言うなし!」
「途中でねだったのはお前でしょ」
「その途中に乗ったのはお前だし!しかもこんなに人のこと貪っといて途中でやめるとかっ」
「終わったらお前の気が済むまで相手してあげるから、良い子で待ってて」
「…リトのバカ!はよしろし!」
さっきまでの大人しさと打って変わって不機嫌になったポーランドは、再びタオルケットに包まってオレに背を向けた。
服を畳みながらその背に声をかける。
「ねぇ、怒らないでよ」
「怒っとらんし」
「怒ってんじゃん」
機嫌直すの面倒だな、と思ったが、招いたのは自分なので自業自得だと思う。
最後の1枚を畳んで運ぶ時、じと目で睨むポーランドにキスをしてみた。
また固まってた。
「…終わったらまたポーランドからしてよ」
「…考えとく」
少し直ったかな?
「…けど、オレもう許さんから」
…だめだった。
おねがいキスして10題
「確かに恋だった」様より
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