小説
天使と悪魔
本編を作ってみた
「っはぁっ、はぁっ」
暗い闇の中で青年が地を駆ける。体は傷付き顔には疲労が浮かんでいるが、それでも必死に脚を動かしていた。
そしてその後ろに付きまとう影が2つ。
「どこまで逃げるの?」
クスクス、と後ろで笑う声がした。それから鉄の擦れる音。
「っ!」
びくっと肩が震え、青年は脚を止めて後ろを振り返る。
「あれ、なんだ逃げないの?」
「……」
「恐くて声も出ない?…まぁいいや、そっちが逃げないなら鬼ごっこは終わりかな」
黒い影が剣を構える。それに合わせるように、小さな影が体に不釣り合いな大きなロッドを両手に持って青年に向けた。
「いっ…今なら痛みを感じる前に殺してあげますっ!だから…あんまり抵抗は…」
「ライヴィス」
「ひっ…」
「オレ達を虐げた奴等に慈悲なんていらないよ。むしろ、もっと痛め付けてもいいくらいだ」
「でっ…でも…」
「…ライヴィス、援護を!」
「えっ、トーリスさん!」
小さな影が止める前に、影は青年へと迫る。青年は両手を前にかざし、恐怖に顔を歪めながら叫ぶ。
「障壁っ!」
ガンッ
金属を木材で叩いたような音。剣は青年の
顔の前で止まり、影はニヤリと笑う。
「…まだ身を護れるだけの力が残ってたんだ?」
「…まだ僕は倒れる訳にはいかないんです」
「…ライヴィス!援護を!」
「はっ、はい!」
小さな影は手に持つロッドを天へかざす。
「トーリスさんに我等が大地より力を!」
ーふっ、と視界が陰る。視線を上げた小さな影は目を見開いて動きを止めた。
「…君は何をしているのかな?」
「あ…あ……」
「ライヴィス!」
青年に向いていた影が振り返る。小さな影に覆い被さるように大きな体を折り曲げ、"彼"は笑みを浮かべながら怯える相手に聞く。
「君は何をしているのかな?ねぇ?」
「ト…トーリスさん、助け…」
「ライヴィスから離れろっ!」
影は青年から離れ、"彼"へ剣を降り下ろした。"彼"はにこやかに影を見る。
「あはは、君じゃあだめだよ」
ギィィンッ
影の剣をどこから取り出したのか巨大なロッドで受け止めた。"彼"は影に笑顔を向け、
「君じゃあ全然相手にならないなぁ」
ロッドを振り返す。
「くっ」
影は一度離れ再び剣を構え直すと、あはっ、と"彼"はロッドを構える。
「君は面白いなぁ、君じゃボクに敵わないって言ってるのに…1回で分からない子はいらないんだよ?」
「手負いの天使が付いていてまだそう言えるのか?お前より先にこいつを始末できる」
「…本当にお仕置きが必要かな?君のせいでフェリクスくんは病院送り、エドァルドは傷だらけ、もうホントに…」
「イヴァンさん、すみませ…」
「エドァルド、別に君のせいじゃないでしょ?気にしないで。…これ以上ボクの友達を傷付けるようなら…」
「ようなら?」
「…この子達が君を八つ裂きにするかもね」
ヴォウンヴォウンッ
"彼"のロッドが光ると"彼"の周りに半透明の人形のようなものが現れた。それを見て影は舌打ちする。
「召喚術か!?」
「ト、トーリスさん、1回退きましょう!?数が増えればそれだけ僕達に不利です!!」
「……分かった、帰ろう」
「今ゲートを開きます!」
「そうはさせないよ!」
小さな影がロッドを地面に叩き付け、呪文を唱え始める。そこへ人形達を差し向けた"彼"はロッドを振り回しながら次々に人形を召喚する。
「ライヴィス!まだ!?」
「もうすぐ…開いた!」
人形達を切り捨てながら、影は黒く口を開けた穴に飛び込む。それに続いて小さな影も飛び込んだ。
「みんな、追って!」
"彼"が指し示す場所へ人形達が群がるが、タッチの差で穴が閉まる。ガツガツとぶつかり合う人形達は目標を見失いうろうろと動き回る。
「あれ、惜しい」
"彼"はそう言って人形達を消す。それから急いで青年に駆け寄った。
「エドァルド、大丈夫?」
「ええ…イヴァンさんのお陰でなんとか生き残れました」
「帰ろう、すぐに手当てをしなくちゃ!」
"彼"はロッドで自分達二人を囲むように円を描き、短く呪文を唱える。
そして、光に包まれ消えて行った。
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