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小説
5
ふわり、ふわりと舞う木の葉を追いかける小さな子供が2人。それを微笑ましく菊は見守っていた。

「菊、茶ぁ淹れたあるよ」

「ありがとうございます。すみません、本当なら私が淹れるはずが」

「お前は座ってるよろし。あいつら見てなきゃ何するかわかんねーあるよ」

あいつら、と王耀が称した子供達は、赤く色付いた紅葉を追いかけ回していた。風が吹く度に舞う木の葉をあっちにこっちにと追いかけ、どうにか掴もうとしていた。

「元気あるな」

「ええ。この前、シルヴィオ達に会えたのが影響しているのかも、知れません」

「会ってきたあるか?」

「はい、3人で仕事している間、ロヴィーノくんに見ていてもらいました」

面倒臭そうにしていたロヴィーノが、きちんと相手をしていたことを思い出す。ロヴィーノのパートナー、ププリンも加わって楽しく遊んだようだ。
と、思い返していると、綺麗な紅葉を掴んだらしいフォヤンがこちらに見せようと向かって来る途中、転んだ。
すてんと綺麗に転んだ。

「ああーっ、大丈夫あるかー?」

慌てて庭に降りた王耀がフォヤンを抱き上げる。土を払って立たせれば、ぐっと唇を引き結んだフォヤンが大きく頷いた。
それから手に掴んだ紅葉を手渡す。

「きゅっ」

「綺麗あるねー。謝謝。
転んでも泣かなかったフォヤンはいい子あるよー、強いあるねー」

たくさん褒められフォヤンは嬉しそうに王耀に抱き付く。抱き抱えて縁側に座る王耀の横をすり抜けて、ライも菊に紅葉を渡した。よしよし、菊は小さな頭を撫でて同じように褒める。

「ライ、すごいですね。自分でできたのですか?」

「ぴっか!」

「ではご褒美をあげましょう」

ざりっ、机の上に置かれた木の皿。その中にある金平糖を小さな手のひらに置いた。顔を出したフォヤンにも手渡す。
きらきらとした砂糖菓子に子供達の瞳が輝く。

「きゅ?」

「食べていいですよ。私達に紅葉をくれたお礼です」

菊の許可が下りてぽいっと口に放り込む。ぽりぽり、咀嚼するパートナーの頭を撫でて、王耀も口に運んだ。

「ん〜、美味しいある〜」

「もとは南蛮…もとい西洋のお菓子ですが、私も最初食べた時にすごく美味しいと感じました。今ではむしろ西洋の方に喜んでいただけますが」

「ぴか〜」

もっと、と手を出すライに菊は一粒ずつ手渡していく。これは食べ過ぎ防止のためだ。
フォヤンも手を出したので、こちらにしましょう、と煎餅を出してくる。大きなそれを2人に渡した。

「王耀さんもよかったら」

「食べるある」

パリッ、かじる3人を微笑ましく見て、菊は庭を見る。さらさらと枝が擦れる音と共に木の葉がひらり、舞っていた。




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