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小説
3
国として仕事している自分には、ポケモンと暮らすことなんて考えもしなかった。人間みたいにポケモンと暮らして、トレーナーになって。
羨ましかった。
それに気が付いたのか否か。国達に時期は前後するがポケモンが与えられた。
パートナー達の出生は様々。俺はたまごから生まれたばかりの可愛い女の子。1年間バタバタしたけど、この子と俺は上手くいってると思ってる。

「シルヴィオ、お菓子は2つまでね」

「ぴぃ!」

かし、シルヴィオは固めに焼いたビスケットに歯を立てる。甘さは控えめだから昼御飯もちゃんと食べられるだろう。
今日は朝からアルフレッドから電話があった。昼頃こっちでリューシュの髪を切って欲しいらしい。伸び伸びになって邪魔みたいだ。
薄い水色の髪を持つ彼女は長髪の方が絶対可愛い。いらない部分は切って梳いてサラサラにして…それで髪のアレンジをアルフレッドに教えればいいだろう。
危ないから触らないようにシルヴィオに言い含めて鋏や櫛を用意する。スプレーや流さないタイプのトリートメントも用意して…。
そうして準備するとピンポン、インターホンが鳴る。玄関の扉を開けると、ピコンとアホ毛が揺れてアルフレッドの笑顔が飛び込んで来た。その腕にはリューシュが抱えられている。
中に入れるとリューシュはシルヴィオに手を上げて挨拶をする。そう言うところがアルフレッドそっくりだ。
ピンクの髪を跳ねさせてシルヴィオは頭を下げる。ふふん、得意気にしてみればアルフレッドは目を丸くした。

「うううー、女の子らしくて可愛いんだぞー!リューシュ、君はクール過ぎるよ!」

リューシュはボサボサの髪を僅かに揺らしてんー、なんて生返事をする。のんびりした女の子であるリューシュは、アルフレッドの小言に特に気にしていないようだ。
そのリューシュに飴玉をあげて、散髪用の椅子に座らせる。髪が入り込まないように上着をかけて、アルフレッドに普段はどんな髪型にしてるか聞く。

「いつもはポニーテールやカチューシャだぞ。そのままの時もある」

「そのままはないわー」

思わずの本音にアルフレッドは眉を下げる。やっぱりダメだったかい?アルフレッドはしょげてリューシュの頭を撫でる。

「言い訳じゃないけど、朝時間ない時とか…」

「おしゃれは基本です、時間は無理にでも作るものだよ」

「うううー!」

唸ってもダメ、俺の言葉にアルフレッドのアホ毛が項垂れた。くしゃくしゃしている。
話しながら髪を濡らしてまず櫛で梳く。埃やゴミや切れた髪を取り除いて、次に鋏を…。

「みゅ…」

「ん?ああ、鋏怖いの?」

半分寝ているように閉じられていたリューシュの瞳がぱっちりと開いた。俺の持つ鋏を凝視している。試しにしゃき、と開くとわなわなと唇が震えていた。
まあポケモン的には普通に怖いよね。

「ボサボサの髪の毛切るだけだよ〜」

「みゅ、みゅう!」

ばたばたと動かせない腕の代わりに足が動く。大丈夫だよ、アルフレッドが声をかけても半泣きで首を振った。
こりゃどうするかなと思ったらぽてぽてとシルヴィオが歩いてくる。ぴぃぴぃと何やらリューシュに話している。
説得してくれているのか。
シルヴィオの説得が上手くいったのか、リューシュはとりあえず静かになる。まだチラチラと鋏を見ているが。今の内にと水色の髪に鋏を入れれば、みゅ、と悲鳴が上がった。
シャキシャキシャキ。膝裏まであった髪を腰で切り揃え、そこから髪を梳く。パラパラと落ちる髪を見てリューシュはみゅうと声を漏らした。
勿体なく見えているのか。なんとなくわかる。
前髪は長めにして左右に流す。一房、顔の真ん中に長く残す。本人から見て左に向けて少し癖が付いていた。
最後に櫛梳って切れた髪を取り除く。トリートメントで艶を出して、濡らした髪をドライヤーで乾かす。

「…はい出来た」

「…可愛い」

ほう、アルフレッドはゆっくりと息を吐く。ふわりとした髪を揺らしてリューシュが振り向いた。
首を傾げる彼女の前に鏡を置いた。

「可愛いよ」

「みゅ!」

パアッと顔を輝かせてリューシュは鏡を指差す。白い頬が赤くなってとても可愛い。

「ぴぃ」

シルヴィオも可愛いと言っているのか、なでなでとリューシュの髪を撫でている。シルヴィオは肩口で切り揃えて内巻きにしているからか、ストレートのリューシュが羨ましいらしい。
ぱしぱしと切った髪を叩いて落として、上着を取る。リューシュを椅子から降ろしてソファに座らした。
シルヴィオが隣に座る。
やわやわと自分の髪を触ってリューシュは不思議そうにしている。

「これならそのままでも大丈夫だよ。あとは癖になるからあまり結ばないようにね。リボンで緩く結ぶならいいかな」

「ほうほう。あっ、そうだ、買い物にも付き合ってくれよ。服買いたいんだ」

「いいよ〜、今回はまともな服なんだね?」

この前のは酷かった。Tシャツにズボンだけはいくらなんでも酷い。
今日はオーバーオールに白いTシャツ着てアメリカ国旗の帽子。
ボーイッシュにまとめてあって可愛い。

「少しストリートボーイっぽいだろ?」

「ね〜。うちはお姫様です」

今日のシルヴィオは白いシャツにチョコレートのリボン、リボンと同じ色の腰で括ったスカート。くるぶし丈でレースの付いた白いソックス。チョコレート色の靴。
可愛いお姫様ですとも。

「すごく女の子なんだぞ〜」

「リューシュもリボンやレース似合うよ。絶対」

「俺女の子の服可愛いなぁ〜とは思うけどよくわからないからフェリシアーノ、助かるよー」

「気にしないで!可愛い女の子のことなら任せて!」

ベッラのことなら任せろ!とってもキュートにして見せるよ!
かしかし、ビスケットをかじるリューシュはん?と俺達の会話に首を傾げる。当事者が1番わかってないんだなぁ。
じゃあ買い物して外で昼食を食べようと俺が提案するとアルフレッドが手を叩いて喜ぶ。ご飯、その言葉に反応してリューシュが目を輝かせる。
アルフレッドとそっくりだ。

「昼食は何にするんだい?」

「バイキング行こうか。2人ともたくさん食べるでしょ」

兄ちゃん、出掛けて来る!
俺の声に兄ちゃんの生返事が返ってきた。


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