小説
ハッピーバースデー!(2016.11.11.立波)
「リト!今年はポッキーゲームするし!」
元気良い声で告げられた言葉に、思わず手に持つ花束を落とすところだった。
ほらこれ、差し出された細い菓子。それは極東の国にあるお菓子で、多分その人からもらったもの。ポーランドは嬉しげにそれをぽりぽりとかじる。
いや別にやってもいいですけど?今日お前の誕生日だったよね?俺の花束は無視なの?
様々な疑問が浮かぶが全部を一旦端に置いて、とりあえず。
「ポーランド、誕生日おめでとう」
ようやく空いた片腕に、花束を渡した。
パンジーとヘンルーダの花束。
ポーランドの国花と俺の国花を混ぜた、大切な花束。
それを受け取って、ポーランドはにっこりと笑った。
なんだ、忘れてた訳じゃないんだ。
「リトありがとー!」
「どういたしまして。それで?ポッキーゲームやりたいの?」
「うん!日本に、今日は日本の家ではポッキーの日だからってこれもらった!」
かさり、袋に入ったポッキーを見せられる。まだまだたくさんあるようだ。
とりあえず花を生けて、ソファに座る。ちょこんと隣に座ったポーランドに、1本咥えさせて。
「はい、いくよー」
「ちょ」
かり、チョコレートの付いていない方からかじる。かりかりかり、続けてかじれば、膨れたポーランドもかりかりとかじり始める。途中もぐもぐと咀嚼しているから、ポーランドのスピードは遅い。その間にこちらはチョコレート部分まで到達、一気に間を詰める。
「…」
「…」
はて、親友兼恋人の誕生日を祝いに来てなぜこんなことをしてるのか。
と一瞬思ったが、最後の一口まできて思考を放棄する。唇が触れて、最後の一口を相手の口の中に押しやって口付ける。
ポーランドの唇は甘かった。
ゆっくりと唇が離れて、ポーランドが唇を舐めてくる。ねだるような動きにもう一度、口付けた。
「…もう1本やる?」
「お前がやりたいならね」
「これならリトにずっとちゅーしてられるし!」
「あっそう」
ちゅっ、再び触れた唇は、やっぱり甘かった。
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