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◆デコ&ボコ(連載中)
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公園の入り口にある自動販売機で、ツカサ御所望のりんごジュースと、俺の愛飲料の緑茶を購入し、先程のベンチへと戻った。
りんごジュースの果汁表示を訝しく眺めつつ、腰を下ろす。

そう、果汁五パーセント。
それは、残り九十五パーセントは、りんごではない物質が入っているという事実が表記されているのだが……コレは本当に、りんごジュースなのだろうか。

全体を一リットルとして考えてみよう。
九十五デシリットルは水、五デシリットルはりんご果汁。
絶対に、薄い。間違いなく薄い。
恐らく、りんごの甘味は殆ど、しないだろう。
よくて、りんごの渋みが微かに残る程度。
ソレは確実に、りんご風味の水だ。
いいのだろうか……それは本当にりんごジュースなのか?

俺は、りんごジュース缶に改めて視線を戻した。
缶には、半分に切られたりんごから、雫が落ちるイラストが描かれており、赤い文字で“すっきりんごぉー!”と書かれている。

「……あれ?」

俺は気付いた。
ジュース缶には“りんごジュース”とは明記されていない事に。
りんごのイラストが描いてあったので、りんごジュースだと思っていたが……確かに、缶の何処にも“りんごジュース”とは書かれていないのだ。

「こ、これは、詐欺じゃないのか!?」

りんごジュースだと思って買ったら、りんごジュースじゃない事が判り、メーカーに抗議するとしよう。
だが、メーカー側、こう言って弁明するのだろう。
“お客さーん、よく缶を見てくださいよー。りんごジュースって書いてますか? 書いてないでしょー? それって、お客さんが、ちゃんと品物見ないで買ってしまった過失ですよね。当社としましてもねー、お客さんが、間違って買った物に対してまで、こちらで責任負う事は出来ませんよ。次は気を付けて購入して下さいねー。じゃ、そういうことで”

……どこのメーカーだ! 腹立たしい!

「斉藤さん、ジュース相手に百面相って楽しいのか?」

いつの間に着替え終わったのか、俺の目の前でしゃがみ込み、顔を覗きこんでくる、ツカサの存在に気が付いた。

「あ、それ、私の? もらっていい?」

「すまないツカサ。コレはりんごジュースのようで、りんごジュースでは無いのだが……それでもいいか?」

ツカサは、俺から缶ジュースを受け取り、クルリと手の中で回すと、形の良い眉を顰めた。

「りんごジュースに見えるけど?」

「俺は気付いてしまったんだよ。メーカーの陰謀に、いや、もしかすると国の陰謀かもしれない」

この国で、食品を売買するには、アレに従わなくてはならない。
だとすれば、これはメーカーだけの話ではないはずだ。
そうすると、国が陰でメーカーと手を組み、消費者にワザと優しくない政策を打ち出しているかもしれないと、いう疑惑が浮上してくる。

「陰謀?」と、益々、怪訝な顔をするツカサに俺は、大きく首を縦に振る。

「さっそく調べなくては」

「何を?」

「食品衛生法についてだ」

拳を握り、断言する俺を前に、ツカサの大きな目が瞬きを繰り返した。
そんな表情も、実に愛らしい。

「斉藤さんって、変だよな」

「人を漢字一文字で表すとは失礼な。せめて四文字で表してくれ」

突然、ぶはっと噴出し笑い始めたツカサに俺は些か驚いたが、笑った顔が、とてつもなく可愛らしかったので、そのまま思わず見入ってしまった。
笑い過ぎの所為か、痛むらしいお腹を抱え、目尻に薄っすらと涙まで溜めだしている。
そんなツカサもやっぱり可愛くて、可愛いらしいツカサを目の前で見られる事に、優越感に似た嬉しさが込み上げてくる。

「ツカサは、可愛いな」

思った事を、そのまま口にすれば、ツカサの動きがピタリと止まり、瞳が限界まで見開かれた。
そして、俺から顔を逸らしたかと思うと、膝に顔を埋め、その上から両腕で顔をガードする。
お陰で、ツカサの表情は見えないが、耳元や首元の肌が、赤く染まっているのは判った。

「斉藤さんって、無害だと思っていたのに」

俯いたままなので、ツカサの声が、くぐもって聞こえる。

「無害? 俺は生まれてこの方、有害になった記憶はないぞ? 人にも地球にも優しい人間を目指しているからな」

「……天然かよ」

最後の言葉は、小さすぎて上手く聞き取れなかった。
聞き返そうとした時、ツカサが勢いよく顔を上げ、ある一点に視線を向けた。
自分もツカサの視線を辿り、その方向へと目を向ける。
其処には、低木が生い茂っているだけで、特に何も無い。

「なんだ? あ、もしかしてミケランジェロか!」

先程まで、探しに探していた兎、ミケランジェロ、ついに見つけたか!?
期待に胸を躍らせ、ツカサを振り返る。
だが、ツカサは、厳しい眼差しで首を横に振った。

「――いや、ミケランジェロじゃないよ。多分……ネズミ、かな?」


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あきゅろす。
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