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◆雑多集
恋は休憩中

「皐月!!」

名前を呼ばれて、振り返ると、羽柴先輩が手を振ってこちらに走ってきた。

「よかった、追いついて、さっき、皐月の教室覗いたら、もう帰ったって言われて、慌てて探しちゃった」

「私を探してたんですか?」

「うん。今日、皐月バイト休みでしょ?だから……ほら、映画一緒にどうかな、と思って」

羽柴先輩は、二枚の映画チッケットをひらひらとなびかせながら「どう?」と、笑顔で問いかけてくる。

特に、断る理由も思いつかず、私は快くOKを出した。



人とすれ違う度に、皆が振り返り視線を集める。
もちろん、私じゃなくて、羽柴先輩がだ。

こうして間近で見ると、つくづく綺麗な人なんだと再確認してしまう。
正直、容姿のいい人を隣に連れて歩くのって、優越感があって気持ちよかったりする。

「……私てっば、嫌なやつ?」

「私は、皐月は嫌な奴だとは思わないけど?」

「え?あれ?私……またやりました?」

「みたいね。皐月って、しょっちゅう、心の声、話してるよね」

羽柴先輩は、肩を揺らしながら、くくくっと笑う。

「……そんなに笑わなくてもいいじゃないですか」

私は、少しふて腐れて、プイと先輩から視線を逸らす。
そして、一瞬で、視線を逸らした事を後悔した。
私の目に、元彼氏が、女の子と腕を組んで歩いている姿を目の端に捉えてしまったからだ。

できれば、見たくなかった。
あの女の子が‘他に好きな奴ができたんだ’の好きな奴なんだろうな。

胸の奥を、ギュッと捕まれたような痛みに耐えるように、自分の手を握る。
すると、その手をそっと、少し冷たい手が、包み込んできた。

「皐月、映画始まっちゃうよ?そろそろ、行こう」

そう言うと、羽柴先輩は私の手をぐいぐいと引っ張って、走り出す。

「せ、先輩?何も走らなくても、映画館は逃げませんよー」

数メートル走っただけで、既に息が切れ掛かっている。

「あはは、若者は身体動かさないとね」

「……若者って」

先輩って、意外とおじさんくさい?

「それに、身体動かしてると、嫌な事考えなくて済むでしょ?」

「……先輩……」

あ、なんか、涙出そう。
なんで、先輩はこんなに優しいんだろう。
どうして、こんなに、私を気遣ってくれるんだろう。
こんな風に優しくされると、先輩に甘えたくなっちゃうよ……




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